中国・サハリン帰国者教育の相互支援ネットワーク

2015年3月20日号

編集・制作:中国帰国者定着促進センター
          教務部講師会
発行者:中国帰国者定着促進センター

今号を印刷してお読みになりたい方は、こちらのPDFをご利用ください。2015年3月20日号PDF

◎目次――――――――――――――――――――――――――――――――
行政・施策
☆援護基金から
・〈平成27年度〉介護関連資格取得援助事業のご案内

研修会報告
 ・年少者の日本語教育の今とこれから 「特別の教育課程」の現状と課題

とん・とんインフォメーション
・近刊紹介『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』
・「介護に係る研修会」用資料についてのお知らせ(追加情報)
・中国語の対応が可能な介護事業所一覧
・新田 樹 写真展「サハリン」
・ニュース記事から 2014.12.12-2015.3.1

遠隔学習インフォメーション
・H27年度上期「遠隔学習課程(通信教育)」募集要項完成!
・入門日本語文法文型Bコース(ロシア語版)
・N2コース受講者から合格報告!

行政・施策

★援護基金から

〈平成27年度〉介護関連資格取得援助事業のご案内

 中国帰国者、二世・三世並びにその配偶者が介護関連資格の取得を目指すために受講する介護職員初任者研修課程養成講座等の受講料の一部を援助しています。
 平成27年度は援助額が8割(上限8万円)に増額し、対象資格に福祉住環境コーディネータも加わりました。なお、ブロック別定数制となりました。詳しくはホームページの「援助のしおり」をご覧ください。
HP: http://www.engokikin.or.jp/business/tabid/59/Default.aspx 
お問い合わせ:03-3501-1050

 

研修会報告

「年少者日本語教育の今とこれから  「特別の教育課程」の現状と課題」

日本語教育学会テーマ別研究会多文化共生社会における日本語教育研究会2014年度研究会


 児童生徒のための日本語指導は、従来様々な形で実施されてきましたが、2014年度より、文部科学省の施策として、小・中学校での取り出し形式の日本語指導が「特別の教育課程」として認められることになりました(*)。
 このような大きな変化を受けて、上記の研究会が2月14日(土)、大東文化大学で開催されました。齋藤ひろみ氏(東京学芸大学)による文科省の施策の具体的な内容についての講演の後、二つの地域からの事例発表がありました。
 講演では、今回の施策は、児童生徒の実態に応じて柔軟な対応を可能にする「踏み込んだ政策である」ということが指摘されました(以下、一部を紹介します)。
・「特別の教育課程」として認定=公式な学習記録として「学習要録」に記載できる。
・指導者は、教員免許を有する教員が、児童生徒の実態把握、指導計画、実施、評価を行う。また、必要に応じて指導を補助する者を配置する。
・実施対象の児童生徒を「日本語に通じない児童または生徒」とし、国籍や滞日年数等で限定しない。
・指導内容には、「日本語を用いて学校生活を営むとともに、学習に取り組むことができるようにする」⇒日本語指導の内容を、ことば(日本語)だけに限定しない。教科指導も指導内容に含める。
・児童生徒の在籍学年について、「年齢にとらわれることなく、必要に応じて相当の下学年に在籍させることについても配慮する」。

 この制度が始まってから間もなく1年。学校現場での運用はまだこれからというのが実情のようですが、事例発表では、取り出しの日本語教室での読書支援の報告を聞くこともできました。子どもたちの学びを支援するために、教師や支援者が新制度をいかに有効かつ柔軟に運用することができるか。今後も実践の発信と共有が期待されます。

*参考資料:
「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等について【日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施】」(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1341903.htm

とん・とんインフォメーション

近刊紹介『日本国最後の帰還兵 深谷義冶とその家族』

(深谷敏雄著、集英社刊、1800円(税抜))

  各処で評判になっているのでご存じの方も多いとは思いますが、帰国邦人の二世の手になる日中関係史の隠れた一面を表した一書です。
  本書の主人公である深谷義治氏は元憲兵で、戦中、中国でスパイ工作に従事していました。戦後も「任務続行」の特命を受け、中国人として上海に潜伏し続けましたが、1958年中国当局に逮捕されます。この間、戦中に工作上の必要で結婚した上海出身の妻との間に3男1女をもうけて家庭を築いていました。その後20年以上にわたる投獄の日々を経、恩赦を得て1978年に一家で日本に帰国します。
  本書は、死んでしまっても不思議はないほどの過酷な獄中生活と、その間「反革命分子」の家族が堪え忍ばざるを得なかった極貧の日々、そして夢にまで見た祖国日本でも続いた苦労を著者の手記に義治氏の獄中記を交えて描き出しています。一家の味わった辛苦は想像を絶するものでしたが、それを支えた義治氏の使命感そして妻・子が夫・父に捧げた家族愛もまたあり得ない深さでした。本書冒頭に帰国直後の一家談笑の写真が挿入されていますが、その印象が読後には全く違った重みをもって現れます。
  一口に中国帰国者といっても生育歴も戦中戦後の立場も、背景事情は様々です。本書が今まで日の当たってこなかったそれらの人たちの生きてきた歴史の「語り直し」のきっかけにもなることを願います。何語でもいいから、当事者の記憶をたどれるうちに記録を残してほしいと、戦後70周年となる今年に本書が世に出た意義を改めて思いました。 (an) 

 


自治体の皆様/帰国者支援の皆様へ

「介護に係る研修会」用資料についてのお知らせ(追加情報)

NL第58号でご紹介した「介護に係る研修会」用資料に、新たに作成した資料が加わりました。

  タイトル 内容 日本語 中国語 日中対訳 ロシア語 日露対訳
(1)G 『認知症ってどういう病気?―認知症の基礎知識―』22頁 身近な病気認知症についての、原因と症状、接し方、早期発見の重要性等基礎知識をまとめたパンフレット。
(1)H 『認知症ってどういう病気?―認知症の基礎知識―』(簡略版)13頁 Gを帰国者とその家族向けに簡潔にしたもの。帰国者にこれを示しながら説明するときに使用。
(1)I Gの別冊付録『認知症を理解する』50頁  『こんなときどうする?チャートでわかる認知症介護』(鎌田ケイ子著)を中/露に翻訳したもの。認知症の人を介護する家族のために書かれた本だが、支援者が、認知症についてより深く理解するのに格好の読み物となっている。
(2)D 『帰国者事情・サハリン文化事情あれこれ』8頁 サハリン帰国者事情、帰国者の思い、サハリンの生活習慣文化、「介護」観などについてまとめたパンフレット。
(2)CC 介護施設での行事等ポスター16枚  誕生日や季節の行事等介護施設のイベント案内用ちらし。イラスト付きの中国語による案内。

※(1)Iの日本語版は市販本です。当センターで貸し出しもできます。
※58号で紹介した資料にも、中国語/ロシア語訳の加わったものがあります。最新情報はホームページでご確認ください。
http://www.kikokusha-center.or.jp/bunka/siryou/kaigosiryou.html
資料についてのお問い合わせは、tongtong@kikokusha-center.or.jp(田中)まで



中国語の対応が可能な介護事業所一覧

 厚労省では、中国語による介護サービスの提供等を希望される中国残留邦人等の方々への情報提供のため、中国語の対応が可能な介護事業所をまとめました。全国20都道府県118件の情報を載せています。(平成26年12月16日時点)

※北海道(2) 宮城(3) 山形(15) 茨城(1) 群馬(1) 埼玉(10) 千葉(6) 東京(16) 神奈川(8) 富山(2) 山梨(5) 長野(11) 京都 (6) 大阪(20) 兵庫(5) 島根(1) 岡山(1) 広島(1) 熊本(1) 大分(3) 

【厚労省 中国語の対応が可能な介護事業所 検索
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12100000-Shakaiengokyoku-Engo/0000070470.pdf
○問い合わせ先:中国残留邦人等支援室地域支援係(03-5253-1111(内線3463・3468))


新田 樹 写真展 「サハリン」

銀座ニコンサロン(03-5537-1469)
4/22(水)〜5/5(火)10:30〜18:30(最終日は15:00まで)、会期中無休

サハリンで生きる日本人の生活を長年、撮影している新田樹(にった たつる)さんの写真展が東京・銀座で行われます。
http://www.nikon-image.com/activity/salon/exhibition/2015/05_ginza.html


ニュース記事から 2014.12.12〜2015.3.1

2015/03/01 中国残留帰国者ら、認知症の高齢者に対応 飯田にデイサービス開所/長野

遠隔学習インフォメーション

2015年(H27年度)上期「遠隔学習課程(通信教育)」募集要項完成!

 H27年度上期の「募集要項」(中国帰国者向け)を帰国者、支援者の皆さんにお送りしました。今回お送りしました募集要項は、高齢帰国者にも見やすいように中国語のコース説明部分を大きい文字にし、巻末には世代別お薦めコースコーナーを設けました。より見やすく、自分にあったコースを探しやすいように工夫しました。コースの詳細や教材見本(音声もあり)を見てみたい方は、当センターのHP(http://www.kikokusha-center.or.jp)をご覧ください。
 なお、遠隔学習課程で使用している当センター開発教材は、どなたでも購入することができます。ご興味のある方は、HPで教材内容をご確認の上、以下にご注文ください。
 教材注文先:(公財)中国残留孤児援護基金 電話03(3501)1050/FAX 03(3501)1026


★入門日本語文法文型Bコース(ロシア語版)★

 遠隔学習課程ロシア語対応コースに初めて文法・文型のコースができました!中国語母語話者のために作成した文法テキストと項目は同じですが、サハリンやロシアの題材も取り入れました。文法テキストは全4冊で構成されますが、今回はニーズの多い2冊目から作成しました。文例を使った解説、身近な事柄についての会話例、運用練習(聞き取り練習を含む)などを通じて、初級前半の語彙と文法・文型を学習します。

 この教材では「漢字」は学習のターゲットにしていません。テキストに出てくる全ての漢字には大きめのルビを付けましたので、漢字が苦手な方でも楽に学習に取り組めます。練習問題も課題も答は仮名で書けば大丈夫! また、難しい文法の規則を覚えるより、音声を聞いて覚える方が好きな方は、文法項目を自然な形で盛り込んだ「会話」や「応用会話」に出てくる使えそうなフレーズをそのまま覚えてしまいましょう。

使用教材:『始めてみよう・話してみようU』(CD付)A4判 125頁
― ロシア語を母語とする日本語学習者のための文法・文型教材 ―

◆各課のタイトル
【11】 「サハリンに行ったことがありますか」 [経験・例示]
【12】 「ちょっと教えてください」 [指示・依頼・順序]
【13】 「娘はサハリンに住んでいます」 [進行・継続・状況]
【14】 「この本、借りてもいいですか」 [許可・禁止]
【15】 「東京はユジノサハリンスクより暖かいです」 [比較]
【16】 「冷たいビールが飲みたいです」 [願望]
【17】 「早く帰った方がいいですよ」 [忠告・意見]
【18】 「お土産をもらいました」 [授受]
【19】 「兄は英語が話せます」 [能力・可能]
【20】 「泥棒にお金を盗まれました」 [受身形]

※当センターHPからサンプルが見られます。Internet Explorerで音声が聞けます。
http://www.kikokusha-center.or.jp/tokorozawa/enkaku/ru/course_rujp.htm#13


N2コース受講者から合格報告!

 「先生方のお陰で日本語能力試験N2合格しました。合格できるとは夢にも思いませんでした。とても嬉しくてとても感謝しています。読解問題集は、本屋にあるものまで教えてくださって本当に助かりました。試験後いろいろ反省しております。(試験では)時間が足りなくて読解文は半分しか解答しないままで時間切れでした。悔しいと言うより自分自身の読書のスピードが遅いのが原因でした。もしコツがあれば、是非教えてください。次はN1に挑戦したいと思っております。(二世40代)」

※当センターホームページに教材のサンプルがあります。
http://www.kikokusha-center.or.jp/tokorozawa/enkaku/jp/1410course_jp.htm#25

 

お知らせ

★web版『同声・同気』は、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお送りください。
宛先:tongtong@kikokusha-center.or.jp
(お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689)