中国・サハリン帰国者教育の相互支援ネットワーク

2011年12月28日号

編集・制作:中国帰国者定着促進センター
          教務部講師会
発行者:中国帰国者定着促進センター

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<目次>
 遠隔学習インフォメーション
 ・2011年度スクーリング講師研修会報告「『スクーリングでの学習相談』―受講者の自学自習をどう支えるか―」

 とん・とんインフォメーション
 ・サイト紹介『JYL(Japanese for Young Learners)Project こどもの日本語ライブラリ』
 ・『外国人のための改定入管法Q&A』中長期在留者向け/非正規滞在者向け/特別永住者向け ご紹介

遠隔学習インフォメーション

2011年度スクーリング講師研修会報告
研修会テーマ:「『スクーリングでの学習相談』―受講者の自学自習をどう支えるか―」

 全国の遠隔学習課程の受講者を地元でサポートしているスクーリング講師を対象に2011年10月28日、29日の2日間、東京で研修会を開催しました。45名の参加を得て、受講者の学習に問題を感じる場合やスクーリングでの対応に迷う場合に、講師の側で事前にどのような学習相談の準備ができるのか、考えました。
 まず「『スクーリング』と学習相談」として、一般的な通信教育におけるスクーリングと帰国者対象の遠隔学習課程における「スクーリング」との違い、スクーリング講師に求められる指導者イメージ、学習相談の基盤となる講師側の知識、技能、姿勢等を確認しました。その後、学習相談の手順例として「『学習相談』準備のステップ」※を紹介し、4人程度の小グループに分かれ、3つのスクーリング受講者の事例を通してステップ3・4を中心に、学習相談の準備としてどのようなことを考えておけばよいか、詳細に検討しました。検討・意見交換を行った項目は、以下の通りです。(A〜Dの数字はステップ1に対応しています)

・ステップ3
A自学自習時間の作り方:受講者の現状/自学自習時間の作り方
B自学自習の技術:受講者の自学自習技術/基本的な自学自習方法
C学習内容の難易度:受講コースの困難点/目標の設定
Dニーズと受講コース:受講者の学習目的・ニーズ/コース変更の可能性と変更できそうなコース

・ステップ4
・次回のスクーリング、或いは、当面の主な学習内容・学習活動
・スクーリングでの課題の扱い

 学習慣れしていない受講者の場合、学習そのものについてあまり意識したことがなく、講師が漠然とした問いかけをするだけでは、改善策を見つけていくことが難しいことも多々あります。学習相談においては、講師の側でより具体的な質問やわかりやすい例、説明に利用できる具体物を用意することで、受講者の状況や希望、改善策に繋がるヒントをより詳しく引き出していくことが可能になります。学習相談の結果を左右するのは事前の相談準備であるとも言えます。しかし、どんなによい相談ができたとしても、1回の学習相談により学習状況が劇的によくなるということは少なく、試行錯誤を重ねながら継続的に相談を行っていくことになります。長い目で見た時、何についていつ介入することが改善に繋がるのか、優先順位も考えながら、受講者一人一人の学習に合う提案をしていく、そのための様々な観点や考え方、案を確認できました。

※「学習相談」準備のステップ

ステップ1: 受講者の学習状況を観察して、問題点を出す
@ 遠隔学習課程の学習システム、方法、スクーリングの意味がわかっているか
A 自宅学習の時間が可能な範囲で取れているか
B 自学自習の技術はあるか
C 学習内容が難しすぎないか
D 受講者のニーズと受講コースが合っているか
E 学習計画に問題はないか
F その他の要因はないか(学習動機/意欲/生活上の問題等)

ステップ2: 受講者のタイプを考える

ステップ3: 学習改善のための相談事項と相談方法を具体的に考える
(相談でどのようなやりとりをするか、利用する物等を含め想定する)

ステップ4: スクーリングでの主な学習活動について考える


とん・とんインフォメーション

ホームページサイトの紹介
 『JYL(Japanese for Young Learners)Project こどもの日本語ライブラリ』

 このサイトは文部科学省から国際移住機関(IMO)に支出した拠出金により設置されたもので、年少者の日本語指導・支援等に必要な情報・学習資料等の提供を目的に開設されました。事前に調査を行ったところ、(1)日本語学習を始める導入期(適応期)の子どものための指導計画例(2)個々の学習者のレベルにあった指導案、活動案(3)現場の指導で使える教材などが必要とされていることが確認され、これらの情報をオンラインで現場の関係者と共有できる場として、この『JYL Project こどもの日本語ライブラリ』が誕生しました。

 このサイトは「指導計画例」「ビデオライブラリ」「基本検索」「日本語指導Q&A」からなっています。

「指導計画例」では学齢に応じた指導計画モデルが示され、会話編ならびに文字語彙編で構成されています。
 

指導計画例 小学生低学年 会話編 文字語彙編(150時間相当の指導案例)
小学生中学年 会話編 文字語彙編(150時間相当の指導案例)
小学生高学年 会話編 文字語彙編(150時間相当の指導案例)
中学生 会話編 文字語彙編(150時間相当の指導案例)

 それぞれに細かく指導案が示されていて、内容も充実していますが、ただ、かなり詳細なものなので同じサイト内の「日本語指導Q&A」の説明を参考にしながら活用するといいでしょう。

 「ビデオライブラリ」ではさまざまなテーマ毎に指導方法や指導上の留意事項等が動画で見られます。実物を使って実際にどうやっているのかが見られるので、まだあまり経験のない支援者にもわかりやすいと思います。

ビデオライブラリの例 低学年の語彙調査方法
            初期基本指導法  絵カードの使い方など
            発音・リズム   音声指導の基礎知識など
            文字・ひらがな  お手本の字をなぞるなど
                かたかな  文字探しマッチング
                漢字    漢字かるた、漢字の書き方
            文を作る     カードを組み合わせながら発話

 「基本検索」では語彙、文例、教材、指導事例が検索できます。また、ダウンロードして利用できる絵カードやワークシートなどの教材も提供しています。さらに、年少者に適している市販の教材も紹介されています。

 年少者の日本語教育に初めて関わる方、指導法を模索している方、教材を探している方などの情報源として活用できるサイトです。

『JYL(Japanese for Young Learners)Project こどもの日本語ライブラリ』
http://www.kodomo-kotoba.info/


『外国人のための 改定入管法Q&A』中長期在留者向け/非正規滞在者向け/特別永住者向け ご紹介

○B5判カラー、中長期滞在者向けは16頁、他は12頁、2011.6.15発行
○編集・発行…「移住労働者と連帯する全国ネットワーク・入管法対策会議」、「在留カードに異議あり!NGO実行委員会」
○多言語版発行…「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会 」
○メール:aacp(a)repacp.org、URL:http://www.repacp.org/aacp/

 2009年7月、「新たな在留管理制度」と「外国人住民票制度」に移行する入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定案が、国会で成立しました。新制度は来年2012年7月から実施されます。
 新制度は、1947年に始まった外国人登録制度を廃止し、在日外国人を「特別永住者」「中長期在留者」「非正規滞在者」という3カテゴリーに分けて管理するものです。例えば、特別永住者には市区町村から「特別永住者証明書」が、日本人の配偶者などの正規滞在者には地方入国管理局から「中長期在留者」としての「在留カード」が交付されます(帰国者の場合、一世配偶者や二世配偶者がこのカテゴリーに含まれます)。
 これらの新証明書はどのようなものなのか、権利や制限については何が今までと異なるのか、当事者への周知が遅れている中、編著者が、「改定」入管法及び住民基本台帳法の条文に即して、法務省と総務省のウェブサイトや、法案作成者たちによる解説書などを参照しながら、改定法が適用される外国人の視点から構成したのが本パンフレットです。「外国人登録証明書がなくなるの?/外国人住民票って?/罰則制度は緩和されたの?/再入国許可がいらなくなったの?」などの質問に答える形でわかりやすく書かれています。
 日本語版Q&Aは、3種セット販売が基本となり、1セット3冊で300円(送料込)、種類別のばら売り(1冊あたり100円・送料込み)は、30冊から受け付けるとのこと。
購入希望の向きはhttp://www.repacp.org/aacp/ (入管法対策会議 + 在留カードに異議あり! NGO実行委員会 + aacp)内の用紙にセット数/冊数・送り先等を記入して、Faxで申し込み用紙記載の番号まで。代金は、送られてきたパンフ同封の郵便振替用紙で。10セットまたは30冊以上は、10〜50%の割引あり。詳しくは同サイトで。
 英語版・ポルトガル語版・スペイン語版、中国語版・ハングル版・タガログ語版・タイ語版の『「中長期在留者」向け・「非正規滞在者・難民申請者」向けQ&A』も順次発行の予定とのこと。これらはウェブ上では既に公開されており、PDFでダウンロードできます。2011年12月21日現在、上記言語に加えてビルマ語版もアップされています。
 ちなみに、入国管理局もhttp://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/index.htmlにて、簡単な説明を日・英・中・韓・スペイン・ポルトガル語で公開していますが、詳しい「Q&A在留管理制度 よくある質問」は日本語版しかありません(http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/q-and-a.html)。
 なお補足情報ですが、在留カードは来年1月から入管窓口で受け付けを開始し、7月の施行以降に発行されます。しかし、1月に大勢が殺到すると入管の業務もパンクしてしまうことと、7月前に申し込むと、申し込み時と取りに行く時とで二度手間になってしまうことから、外国人登録証や在留資格の期限が7月前に切れる人以外は、この間3年間は現行の外国人登録証を「みなし在留カード」とする経過規定が設けられているので、7月以降にゆっくり手続きをしても間に合います。


お知らせ

★web版『同声・同気』は、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお送りください。
宛先:tongtong(a)kikokusha-center.or.jp
(お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689 )

★「『支援・相談員』の現場から」(その2)は、次号でお届けします。