HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第39号(2007年5月22日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
 遠隔学習課程スクーリングの現場から<学習者の手記より>
 ナルク・信州まつもとだいら「心通じる交流・アウトドアーの活動」<長野>
 たぶんかフリースクール<東京>
行政・施策
 厚生労働省から
  中国残留邦人等の援護対策/地域生活支援プログラムの開始
  訪中補充調査/H18年度適応促進対策研修会
 文部科学省から
  「学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)について」
研修会情報
 研修会報告
  「高齢帰国者向け日本語教室」研修会
  第12回《母語・継承語・バイリンガル教育研究会》
 研修会情報
  「東京の日本語教育、日本語学級を考えるつどい2007」
  異文化間教育学会 第28回大会
  母語・継承語・バイリンガル教育研究会 第14回 研究会
教材・教育資料
 『日本語おしゃべりのたね』
 『日本企業への就職―ビジネスマナーと基本のことば―』
とん・とんインフォメーション
 『中国残留邦人聞き書き集』ホームページで公開
 中国帰国者のための季刊誌『蒲公英』創刊される
 『ロシアのことがマンガで3時間でわかる本』
 『四十三年‐母が子に語る中国残留の半生‐』
 2007年度「進学進路ガイダンス」情報
ニュース記事から 2006.12.25〜2007.5.10
事例紹介 ある帰国者1世とその支援者の手記

地域情報ア・ラ・カルト

☆遠隔学習課程 スクーリングの現場から

 これまでこのコーナーは、「スクーリングの現場から」と題して、学習支援者であるスクーリング講師の視点から、帰国者の学習状況や支援の状況を紹介してきましたが、今回からしばらくは、受講者である帰国者自身の手記を紹介していこうと思います。
 遠隔学習(通信教育)は、学習者の自学自習が中心となります。従って、一人で学習を継続し無事にコースを修了するには、様々な工夫や努力が必要となります。支援・交流センターでは、昨年末より、コース修了者から「遠隔課程完走体験談」を募集しています。本稿は、この体験談から抜粋して、遠隔学習課程に取り組む帰国者の工夫や困難の克服法を紹介します。

※2007年5月現在、中国帰国者支援・交流センター《遠隔学習課程》を受講している帰国者数は延べ1262名

※「小さいノートに分類した単語帳はいつも持ち歩いて復習する。」等、ノートを携帯する工夫を紹介してくれた受講者はとても多かったです。

《長野県》NPO「ナルク・信州まつもとだいら」−心・通じる交流・アウトドアーの活動−
代表:守安威象氏

 中国帰国者支援・交流センターが主催する平成18年度「高齢帰国者向け日本語教室運営事業」の研修会で活動報告をされた長野の守安さんのお話をご紹介します。この研修会については、本紙7頁《研修会報告》をご覧下さい。

 中国帰国者の方々との交流の始まりは、2005年1月、連続4回の中国料理教室の講師の助手として帰国者3名が参加されたことからでした。その慰労会を兼ねて花見とバーベキューの会に招待したのがきっかけで、交流が広がっていきました。
 同年8月には帰国者から日本料理の講習要請があり、「おにぎり」「味噌汁」「漬物」の講習を行いました。おにぎりは三角に握るのが難しかったようです。また石のように固く握ってしまった人もいました。味噌汁はだしのとり方を教え、漬物は信州という地の利を活かして野沢菜の種まき、収穫、漬け込みまでを一緒に取り組んだところ、大変喜ばれました。
 また、2006年には、じゃがいもの作付けを行い、収穫、またそのじゃがいもを使っての料理教室を開催するとともに、無農薬の米作りにも取り組み、田植え、草取り、稲刈りまで行ないました。ただし、米作りは費用もかかるため、一口1500円の投資(最高二口まで)を願い、投資者には収穫時一口5キロのお米で返済するという形をとりましたが、大変おいしいと好評でした。
 スポーツとしては、「マレットゴルフ」を一緒にやり、交流を深めています。マレットゴルフはゲートボールに似た道具を使い、コースをいかに少ない打数で回れるかを競うスポーツです。帰国者の方々にも大好評で、要望にこたえてルールの説明会なども行い、今では月1回コンペを開くようになりました。
 2007年8月には「松本ぼんぼん」という市の祭りに参加予定で、今、踊りの練習をしています。この祭りでは最低25名以上の“連”を組んでの参加が条件なので、「中国帰国者」としての“連”を組んでの参加を目指しています。
 私たちは会話は極力日本語で話し、帰国者の方々とは対等の立場で交わることを心がけています。交流活動に参加している日本人メンバーは約40名です。
 アウトドアー活動では必然的に一対一の会話となることが多いので、帰国者の方々の会話に対する意欲が一段と深まり、会話力も上達しています。
 このようなアウトドアー活動ができるのは、自然豊かな信州の土地と、支援者の方々のお心遣いと協力があってこそだと思います。帰国者と支援者が共に戸外でのびのびと健康的に、楽しく交流されている姿が目に浮かびます。地域によっては、このようなアウトドアー活動は条件的に難しいところもあるでしょうが、交流活動例のひとつとして、大いに参考にできると思います。
 また、小さなきっかけから、つながりが生まれ、それがまた新たな交流活動につながっているのが、とても自然な交流の形に感じられました。「対等の立場で」とおっしゃっていたように、双方が「共に」友好を深め、喜びや楽しみ、目標を共有している様子が伝わってくる、とても心温まるお話だと思います。
 「ナルク・信州まつもとだいら」の帰国者との交流活動については、2007年4月13日(金)付朝日新聞13版にも掲載されていますので、併せてご参照ください。

(所沢:島崎)

たぶんかフリースクール

 常磐線の三河島駅のホームから見える旧真土小学校、その3階にある「多文化共生センター東京」を訪ねた。見学したのはセンターが行っている「たぶんかフリースクール」の英語の授業。一つの教室では中国から来た生徒3人が“This is a 〜”と英語の基礎から学び直していた。先生は、英語を日本語に訳す間に「中国語では何て言うの?」と問いかけ、生徒たちは日本語・英語・中国語の間を行き来しながら学習する。もう一つの教室は複式で、中国から来た生徒2人が中学3年の英語教科書を使って授業を受け、フィリピンから来た生徒1人が傍らに座った支援者とともに英検の問題を解いていた。生徒の年齢は15歳から18歳。いずれも学齢超過あるいは母国で中学を卒業しているため、日本の昼の中学に入れなかった子どもたちである。高校受験を目指してこのスクールに通っているが、日本語はもちろん英語の力もかなり個人差がある。
 フリースクールを設立したNPO法人「多文化共生センター東京」は(NL35号・38号でも活動を紹介)、2001年より海外にルーツをもつ子どもたちへの学習支援や進路ガイダンスを行なってきたが、その中で行き場の無い子どもの存在を知りこのフリースクールを立ち上げたという。今年はスクールを立ち上げて3年目であるが、少しずつ知られるようになり、それまでこういった子どもの受け皿となっていた一般の日本語学校や地域の国際交流協会などから問い合わせが増えているとのことである。授業は火曜日から金曜日の午後1時から4時までで、前半2時間は日本語、後半1時間は英語や数学を学んでいる。また、夜には昼間の中学校に在籍している生徒を対象とした日本語クラスも開設しており、学校では十分な支援が受けられない生徒たちが通っている。授業料は月3万円(夜は月2万円)で決して安くはないが、高校受験まで視野に入れた勉強を毎日続けられる場所は他にはなく、また受験に関する詳しい情報を得られる場所もないため、遠く埼玉や千葉から通ってくる生徒もいるとのことで、ニーズの高さがうかがえる。
 代表の王慧槿さんの話では、外国籍生徒の高校進学は依然として厳しい状況にあるとのこと。東京都では唯一の都立国際高校在京外国人枠(2007年度最終倍率3.72倍)の特別入試選抜は、日本語が十分でない子どもたちの受け皿にはなっていないと言う。ほとんどが日本の子どもたちとまったく同じ条件で入試に臨まなくてはならず、日本語のハンディを抱えた彼らにとっては非常に過酷な条件となる。フリースクール設立1年目には都立高校を受験した7人全員が合格し、2年目は私立・都立・埼玉県立合計で18人が合格したそうだが、さまざまなケアがなければ「本人が希望する学校に行かせたい」という思いはなかなか叶えられないという。最初に紹介したように日本語の面でも学力の面でもかなり個人差のある子どもたちを相手に、彼らが意欲をもって受験勉強に臨めるような高校を探し、精神的に不安定になりがちなときは励まし、地道な支援を続ける王さんたちだが、高校受験の壁はまだまだ高い。さらに高校に入れても、どのような支援が受けられるかわからず、高校生活を無事に過ごせる保証はない。高校に入るとき、そして入ってからの状況を改善するためにも支援者同士の連携がますます重要になってくると王さんは言う。「たぶんかフリースクール」のような“居場所”は、これからますます必要になってくると思われるが、このような形のフリースクールはまだ全国的にも珍しい。子どもたちが本当に必要な支援を受けられるこのような場所が少しでも増えることが望まれる。

(所沢:小川)

特定非営利活動法人多文化共生センター東京
東京都荒川区西日暮里1-5-8
TEL/FAX:03-3801-7127
Mail:tokyo@tabunka.jp
URL:http://www.tabunka.jp/tokyo/

行政・施策

★厚生労働省から

●中国残留邦人等の援護対策

平成18年度予算額1,531百万円 → 平成19年度予算額1,780百万円

1 永住帰国者援護
 952百万円 → 1,104百万円
 50世帯234人 → 45世帯125人
 (うち 樺太等10世帯50人 → 7世帯15人)
2 一時帰国者援護
 153百万円 → 138百万円
 202世帯292人 → 151世帯247人
 (うち 樺太等122世帯169人 → 90世帯134人)
3 肉親調査
 55百万円 → 51百万円
4 樺太等現地調査
 5百万円 → 5百万円
5 中国帰国者支援・交流センター
 366百万円 → 482百万円

(再掲:上記予算に含まれるもの)
〈新規分〉「中国帰国者あんしん生活支援計画」経費 424百万円
@「地域生活支援プログラム」の実施 219百万円
A個々の地域において支援を担う自立指導員の永続的派遣(派遣年限撤廃) 105百万円
B中国帰国者・支援交流センターの増設 89百万円
C2・3世に対する適切な就労支援の実施 11百万円

●地域生活支援プログラムの開始

 平成19年度4月から生活保護を受けておられる方への「地域生活支援プログラム」が実施されます。
 このプログラムには、いくつかの支援メニューがあり、生活保護を受けておられない方も利用できるメニューもあります。
 詳細については、当センターHP コンテンツガイド《厚生労働省資料》コーナーをご覧下さい。

●訪中補充調査の実施について

 平成18年度共同調査(6月〜7月)において招致出来なかった、高齢・病弱等のため早期に調査を要する証言者等に対する面接調査のため、去る3月12日から約2週間にわたり補充調査を実施しました。
 補充調査は、証言者等の高齢化にかんがみ、例年7月頃実施している共同調査に加えて、平成15年度から、職員が証言者等の住所地を訪問して行っているもので、今回で5回目となります。
 今回の調査は、黒竜江省牡丹江市・遼寧省瀋陽市・吉林省四平市、内蒙古自治区呼和浩特市において、22人の孤児申立者・証言者等に対する面接調査を行うとともに、中国政府と協議を行いました。
 今年度の共同調査についても7月の実施を予定しておりますが、上記補充調査の結果を含め、日中共同による面接調査及び協議により、新たに中国残留日本人孤児と確認された者については、昨年度と同様に、情報公開調査により肉親情報を求め、集団一時帰国及び対面調査を行うこととしております。

●平成18年度適応促進対策研修会

 平成19年3月1、2日、東京で開催し、中国帰国者定着促進センター職員4名、自立研修センター職員22名、支援・交流センター職員16名、都道府県職員4名、厚生労働省職員10名が参加しました。
 研修会では、さくら共同法律事務所の河合弘之弁護士による「中国残留孤児が抱える法律問題について」と題する講演を行いました。
 また、出席者を5グループに分け、日本語指導、生活指導、就労等の諸問題について意見交換を行いました。

平成19年5月17日:第1回「中国残留邦人への支援に関する有職者会議」開催

★文部科学省から

「学校教育におけるJSL※カリキュラム(中学校編)について」

文部科学省初等中等教育局国際教育課

 全国の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は、平成17年9月現在で2万人を超えており、ここ数年増加傾向にあります。また、これらの外国人児童生徒の中には、日常会話程度の日本語を習得しながらも教科学習に必要な日本語の習得が難しく、学習活動に参加することが難しい状況が少なからずみられます。
 このため、文部科学省では、外国人児童生徒が学校での学習や生活に円滑に適応できるよう、日本語指導の初期学習から教科学習につながる段階までをカバーする「JSLカリキュラム」の開発を平成13年度から進めており、平成15年度に小学校編を刊行しました。
 そしてこの度、中学校編として、国語科、社会科、数学科、理科、英語科の5教科についてとりまとめ、都道府県・市町村教育委員会等に配付しました。
 本中学校編のとりまとめにあたっては、多様な背景を持つ外国人生徒が「日本語で学ぶ力」を確実に身に付けることができるよう、学校における授業づくりを支援するための様々な配慮を盛り込み、作成しました。具体的には、
@各教科において生徒が確実に学習すべき基本的な事項を抽出した学習項目、学習単元の一覧を明記。
Aすぐ、授業実践ができるよう、多様な指導案やワークシートを提示。
B授業でよく使う日本語表現とポルトガル語、中国語などの主だった言語との対訳表を添付。
などの工夫を行いました。
 また、本カリキュラムの普及を図るため、本年度より新たに「JSLカリキュラム実践支援事業」を実施し、実践事例の集積・紹介やワークショップの開催を行うこととしております。

※JSL:「第二言語(第二の母語)としての日本語教育(Japanese as Second Language)」

研修会情報

☆研修会報告

「高齢帰国者向け日本語教室」研修会

 平成19年3月7日、9日の2日に分けて中国帰国者支援・交流センター主催の「高齢帰国者向け日本語教室運営事業研修会」が開催されました。「高齢帰国者向け日本語教室」は、中国帰国者支援・交流センターが各地のボランティア団体に委託して行っている事業で、平成16年度に4ヶ所からスタートしました。その後徐々に実施団体が増え現在は全国15都道府県(北海道、青森、秋田、岩手、山形、福島、埼玉、東京、山梨、長野、愛知、京都、香川、熊本、長崎)の18ヶ所で実施されています。
 この事業の対象は高齢の1世世代で、事業の最も重要な目標は高齢帰国者の孤立化を防ぐことです。帰国者1世(残留孤児等)とその配偶者はいまや年齢が60歳を越えています。一般的に高齢者は社会とのつながり感が薄れ孤立する傾向があると言われていますが、とりわけ高齢帰国者の場合は多くの人が今も言葉や文化・生活習慣の違いから、行動が制限されたり、地域社会の中で人付き合いが思うようにできなかったりしています。帰国者同士のつながりも薄いままで、孤立化は一般日本人の高齢者の比ではないと言えます。また、帰国者の中には、識字が困難であったり、学習という行為に不慣れだったりして「日本語教室」と聞いただけで敬遠してしまう人もたくさんいます。「高齢帰国者向け日本語教室」は日本語教室という名前はついていますが、何をどのレベルまで学ぶかということよりも、むしろどれだけ共に楽しく学べるか、共に楽しく時を過ごせるかということに重きを置いていますから、純然とした「教室」というより「集いの場」のイメージに近いかもしれません。日本語学習は二の次で、高齢帰国者が集い交流しながらいきいきと活動できるサロンを目指しています。
 実施内容は、運営するボランティア団体が参加者のニーズや地域の実情にあわせ決めています。どの団体も簡単な日本語学習の他に文化活動、地域の人々との交流活動、健康づくり活動、施設見学など幅広い活動を行っています。
 今年度はこの二日間の研修会に、この事業を受託している17のボランティア団体などから延べ34名が参加し、事例報告や意見交換が活発に行われました。(このうち長野からの報告は本紙2頁《地域情報アラカルト》のコーナーで詳しく紹介しています。)
 中国帰国者支援・交流センターでは、今後も「高齢帰国者向け日本語教室」を増やしていくとのことです。

(所沢:田中)

第12回《母語・継承語・バイリンガル(MHB)教育研究会※》
― 一時的セミリンガル現象を考える・続の続 ― ※(http://www.mhb.jp/

 3月3日、東京で開かれた同研究会に参加してきました。この研究会は、バイリンガル教育が必要な児童生徒を対象とする言語教育の研究や実践の質を向上させることを目指して創設されました。過去12回の研究会のうち、「一時的セミリンガル現象を考える」というテーマの会がすでに2回開かれ、3回目の今回は、事例を持ち寄ってどのような教育的介入が可能かが検討されました。
 「一時的セミリンガル現象」ないし「ダブルリミテッド」とは、「一つ以上の言語に触れて育つ言語形成期の年少者がどの言語も年齢相応のレベルに達していない状況」を指します。「一時的」とあるのは、「障害」とは異なるということを強調するため、また、「現象」としているのは、その状態が多様で要因の解明がまだ十分ではなく実体がつかみにくいためと、同研究会は説明しています。具体的には、日本生まれなのに日本語も、子どもにとっては「継承語」である母語も十分育つ環境が与えられず、小学校1年生の段階からすでに授業に十分参加ができない、という子どもなどが例として挙げられます。中国帰国者の支援者間でも、三・四世の子どもたちのこうした「ダブルリミテッド」問題の深刻さが取り上げられるようになって久しく、非常に関心の高い分野です。
 会では、まず問題提起者の中島和子(名古屋外国語大学)さんから、@子どものつまずきのタイプと言語・行動・学習・情緒の各面についてのチェックリスト案、及びA躓きの領域と推測される要因のリスト案、そして、B異文化間移動を余儀なくされる子どもたちの低学力の要因についての4モデル(社会的環境、機能上の障害、教育環境、生育環境・家庭環境)の紹介がありました。次いで、それぞれ ポルトガル/スペイン/中/日/インドシナ諸語を母語とする子どもの事例8つの検討が行われた後、不就学の子どもたちの類型化とその対応について浜松のカナリーニョ教室の山野上麻衣さんからの発表がありました。
 事例は、7歳児から現在大学生の年齢の人まであり、どの事例も深刻で、この問題が一括りにはできないことを物語っていました。また、問題の紹介だけでなく、支援者(発表者)と所属クラスの担任の先生との連携が成って状況が改善された事例や同様の経験を持つフロアからの助言も飛び交い、実際に子どもたちと関わっている支援者にとっては大変有用な、得難い機会だったと思います。
 事例の中に、中国帰国者四世についての発表があり、かなり深刻な例と感じられましたが、「読み書き」という活動へのなじみという点で、非漢字圏である日系の子どもたちの方がずっと大きな困難を抱えているとの指摘がなされていたのが印象的でした。

(所沢:安)

☆研修会情報

●「東京の日本語教育、日本語学級を考えるつどい2007」

 2007年5月27日(日)/明治大学駿河台校舎
 詳しくは当センターHP:コンテンツガイド〈研修会情報〉のコーナー 参照

●異文化間教育学会 第28回大会

 2007年6月1日(金)〜3日(日) 目白大学新宿キャンパス 詳しくは http://wwwsoc.nii.ac.jp/iesj/ 参照

●母語・継承語・バイリンガル(MHB)教育研究会※
 第14回研究会(2007年度 年次大会)

 テーマ:「バイリンガル・バイリテラルの育成を目指して−実践と課題」
 2007年8月5日(日) 桜美林大学(予定) 詳しくは http://www.mhb.jp/cat1/ 参照
 ※本紙7頁にて紹介

教材・教育資料

『日本語おしゃべりのたね』

監修:西口光一 著者:沢田幸子他 スリーエーネットワーク 定価1,680円(税込)B5判 130頁、別冊29頁 発行:2006年7月

 日本に在住する外国人の数は増加しており、ボランティア等で外国人に日本語を教える人たちも増えてきました。この本は、そうした支援者が学習者の日本語に寄り添いながら気楽な“おしゃべり”を共に楽しむ、そして実際のコミュニケーションを通して互いに知り合い学んでいく、そのためのアイデアと材料を提供する教材です。学習対象者は、日本語で簡単なことを質問したり、日常生活上の身近な話題について話したりできる程度の人(およそ初級後半のレベルから)。
 本文は20のユニットからなっており、食べ物や旅行の話からゴミ問題まで、身近で興味の持てる話題を集めてあります。1ユニットは、いくつかの「おしゃべりのたね」で構成されており、おしゃべりを進めていくための質問、表やグラフ、クイズなどが楽しいイラスト付きで載っています。また、各ユニットの最後にはその日の活動内容を短い文にまとめて書くことができる「活動ノート」、ユニットのテーマに関連した短い会話練習ができる「使える会話」がついています。

ユニットの例
「6.ペットと暮らす」《おしゃべりのたね》1…好きな動物(どんな動物が好きか等) 2…ペットの思い出(ペットを飼ったことがあるか等) 3…ペットがいる暮らし(ペットがいるとどんないいことがあるか/他の人が飼っているペットについて迷惑だと思うことがあるか等)
「15.結婚いろいろ」《おしゃべりのたね》1…出会いから結婚へ(結婚相手をどうやって探すか等) 2…結婚か独身か(それぞれどんないい点があるか等) 3…結婚−いろいろな考え方(未婚の母についてどう思うか等)

 各ユニットに出てくる初級レベルの文型40は、後ろの方にわかりやすくまとめてあります。付属の別冊には、ユニットごとに活動のねらい、用意するもの、活動のヒントやポイント、文型表現が載っています。

『日本企業への就職―ビジネスマナーと基本のことば―』

海老原恭子他著(アスク B5判 228頁、1,470円、2006年)

 「日本企業に就職したけど、会社でのマナーがよくわからない。」、「日本企業へ就職したいけれど、何から始めたらいいのか…。」
 本書は、そうした中国語母語話者のために、日本企業で働く際に要求されるビジネスマナー及び会話表現を、会社内におけるさまざまな場面毎に詳しく説明しています。全て中国語の対訳がついており、自学自習できるテキストになっています。日常生活のマナー以上に複雑な「ビジネスマナー」なので、企業側にとっても、働く側にとっても便利な一冊ではないでしょうか。
 第T部「日本社会でのビジネスマナー」は、「ビジネスマンの心構え」「社内のマナー」「会話のマナー」「電話のマナー」「接客のマナー」「訪問のマナー」「ビジネス基本ルール」「覚えておきたいビジネス・ルール」の8章立てで、身だしなみから始まり、対人マナー、文書の書き方、敬語を使った会話表現等を細かく説明しています。U部「就職活動ガイド」は、履歴書の書き方、就職面接の受け方といった、就職活動の基本的な内容が説明されています。また、外国人向け就職関連情報も紹介されており、就職活動の第一歩から役立つテキストです。巻末付録には、いざという時に役立つ「婚・葬の作法」「手紙の書き方」がつけられています。
 また、第2弾として、『日本企業への就職―ビジネス会話トレーニング―』(B5判144頁+別冊32頁+CD1枚付、1,890円、2006年)が出版されています。こちらは、「アポイント」「依頼」など8課で構成された中国母語話者向け会話練習用テキストです。

とん・とんインフォメーション

『中国残留邦人聞き書き集』ホームページで公開のお知らせ

 平成17年3月に中国帰国者支援・交流センターにおいて発刊した『二つの国の狭間で−中国残留邦人聞き書き集 第1集−』(本紙34号でご紹介)は、冊子として2,000部印刷し、都道府県庁、都道府県立図書館、国・公立大学図書館、関係機関、支援団体等に配布してきました。また、在庫の範囲内で希望する方々に無償で提供しましたが、ホームページ上でも同書の内容全文が公開されています。画面上からの印刷等に一定の制約を加えていますが、閲覧、用語検索などについては自由に行うことができます。ご覧になりたい方は 中国帰国者支援・交流センター(http://www.sien-center.or.jp)→〈普及啓発事業〉からどうぞ!!

中国帰国者のための季刊誌『蒲公英(たんぽぽ)(中国帰国者之家)』創刊される!

 このほど、「中国帰国者のための翻訳の会」により、中国帰国者のための季刊誌『蒲公英(たんぽぽ)(中国帰国者之家)』が創刊されました。
 創刊に当たっての編集部のメッセージによれば ――本誌は「中国では日本人だと言われ、日本では中国人だと言われて」きた自分たち中国帰国者にとっての暖かい「家」に、との思いを込めて創刊された。本誌が中国帰国者の情報交換・交流の場、また精神の拠り所になることで、帰国者が日本社会に根ざしていく一助となり、それが日中友好に貢献することを目指している――とのこと。
 執筆者の主要メンバーは多感な10代の頃に来日して様々な思いを抱えて日本で生きてきた帰国者二世で、内容は随筆や孤児の中国残留の歴史に関する論文、残留孤児に関する書籍の中国語訳の連載などの他、孤児一世による手記も掲載されており、盛りだくさんで読み応えがあります。

注文・問い合わせ先は:
 〒121-0812 東京都足立区西保木間2-9-11-301 「蒲公英」編集部
 電話:090-8489-6972
 e-mail:pugongying2_3@yahoo.co.jp
 300円(税込み)/1冊 送料:1冊の場合は200円(2冊は250円)
 年間定期購読受付中(1年4回発行予定、送料込みで2000 円)

※B5判で30頁と薄手ですが、しっかりとした製本で1部300円はお買い得。送料込み500円で1冊の値段と考えてください、とは綱島編集長の弁です。

『ロシアのことがマンガで3時間でわかる本』

(2005年8月発行) (社)ロシア東欧貿易会監修 明日香出版社 1575円(税込)A5判 203頁

 ロシアは非常に個性豊かな国ですが、はっきりとしたイメージを持っている人は多くないかもしれません。この本は「マンガ」という親しみやすい方法でロシアのことをいろいろな面から伝えています。執筆陣がロシア東欧貿易界の古強者であるため、本書の真骨頂は第3章以降にありますが、第2章「素顔のロシア人」は平易な記述で一般の人にも親しみやすい話題を取り上げています。見開きのページ半分が解説、半分がマンガになっています。ソ連時代と比較しながら今のロシアを大まかに把握するのに役立つ1冊と言えましょう。

 1章:ロシアってどんな国 2章:素顔のロシア人(働き者?それとも怠け者?/ロシア人の食生活/当世若者事情等) 3章:新生ロシアの経済と政治 4章:ロシアと日本 5章:ロシアビジネスの現在 6章:ロシアビジネスに進出するには

『四十三年‐母が子に語る中国残留の半生‐』

語り 中川佳子 聞き書き 正 安 日本語訳 斎藤裕子 皓星社(2006年12月) 1600円+税 B6判 263頁

 この本は、戦後の中国で40余年間残留生活を送った中川佳子(仮名)さんによる自分の人生の語りを、次男の正 安さんが中国語で聞き書きし、中国帰国者に日本語を教えるボランティアを続けてこられた斎藤裕子さんが訳されたものです。つまり、本書は中国残留婦人、その2世、支援者の三者による共同作業の成果といえましょう。息子さんが聞き書きを始めるに至ったのは、お母さんの数奇な人生への関心とともに、「我々は一体どこの人間なのか」という問いへの答えを求めてのことだと思われます。なお、本書が単行本として世に出るきっかけとなったのは、本紙34号で紹介している聞き書き集『二つの国の狭間で』を斎藤さんが手にしたことだそうです。

 構成は以下の通りです。
 第1章 望んで満洲へ 第2章 開拓団の生活 第3章 収容されて 第4章 老苑(夫)との暮らし 第5章 内モンゴルの生活 第6章 三十七年ぶりの里帰り 第7章 日本定住

2007年度の進路ガイダンス情報

【北海道】札幌市で開催予定(時期は未定)
 連絡先:札幌子ども日本語クラブ 鷲田洋子
 TEL&FAX:011-373-0584
 E-mail:atoz-birds79@brown.plala.or.jp

【三重】9月30日(日)高茶屋市民センター
 主催:津市教育委員会事務局人権教育課 ☆
 連絡先:059-229-3253

【埼玉】
 @北部:7月8日(日)深谷生涯学習センター(深谷公民館)
 A南部:7月15日(日)大宮ソニックシティ市民ホール
 B西部:7月22日(日)クラッセ川越
 C東部:日時場所未定(秋に越谷市内で実施予定)
 連絡先:彩の国さいたま国際交流・協力ネットワーク事務局(埼玉県国際交流協会)
 TEL:048-833-2992/FAX:048-833-3291
 E-mail:sia@sia1.jp

【東京】7月1日(日)、秋にも実施予定
 JICA地球広場(渋谷区)
 連絡先:《多文化共生センター東京》
 TEL&FAX:03-3801-7127
 E-mail:tokyo@tabunka.jp

【大阪】夏以降に7つのブロックで開催予定
 連絡先:(特活)関西国際交流団体協議会
 TEL:06-6773-0256/FAX:06-6773-8422
 E-mail:kna@interpeople.or.jp

【神奈川】9月〜11月
 @9月30日(日)厚木ヤングコミュニティセンター
 A10月13日(土)かながわ県民センター
 B10月14日(日)さがみはら国際交流ラウンジ
 ※平塚市民活動センター、いちょう小学校コミュニティハウスでも実施予定(日時は未定)
 連絡先:多文化共生教育ネットワークかながわ事務局 高橋清樹
 TEL:045-942-5202
 HP:http://www15.plala.or.jp/tabunka/index.htm

【静岡】6月と12月に浜松市で実施予定
 連絡先:浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket)
 TEL&FAX:053-445-3717
 E-mail:info@n-pocket.jp
 HP:http://www.n-pocket.jp/

【岐阜】8月26日(日)
 会場:可児市土田公民館
 主催:可児市国際交流協会
 TEL:0574-60-1230/FAX:0574-60-1200
 E-mail:kiea@ma.ctk.ne.jp

【長野】夏休み以降に県内4ヶ所で開催予定
 主催:(財)長野県国際交流推進協会
 連絡先:春原直美
 TEL:026-235-7186

【奈良】9月21日(金)会場未定
 主催:奈良県外国人教育研究会
 連絡先:0742-62-5555

【滋賀】7〜8月に実施予定
 連絡先:財団法人滋賀県国際協会
 TEL:077-526-0931

【熊本】7月8日(日)熊本県立大学
 連絡先:中国帰国・外国人生徒の進学を支援する会
 TEL:090-9593-9627

☆津市教育委員会は今年度新たに「小学校入学予定者向け就学ガイダンスを実施予定(12月頃)」

※今年度も、新たな情報が入り次第、当センターHP にて紹介していく予定です。
当センターHP コンテンツガイド〈進学進路支援情報〉→「高校進学ガイダンス情報」→ ◆2007 各地の情報(追加情報)

ニュース記事から

ニュース記事から 2006.12.25〜2007.5.10

2006/12/27 〈残留孤児〉安倍首相あて手紙 神戸地裁判決で国の姿勢問う
2007/01/09 残留孤児ら360人連絡途絶、厚労省が中国に調査依頼
2007/01/11 政治決着を急げ 帰国者ら窮状訴え要請 公明党プロジェクトチーム
2007/01/30 安倍首相 29日に残留孤児に対する新たな支援策導入方針を固める
2007/01/30 残留孤児訴訟:国の責任認めず=賠償請求を棄却〈東京地裁〉
2007/01/30 東京地裁判決後、安倍首相、柳沢厚労相と中川政調会長に新たな孤児支援策の検討を指示
2007/01/30 自民・公明両党「中国残留邦人支援に関するプロジェクトチーム」の会合を開く
2007/01/30 岐阜県が多文化共生推進基本方針案:高校の外国人指導教員増やす
2007/01/31 厚労省:集団訴訟原告との定期的協議の場を設ける方針を決定
2007/02/01 31日、安倍首相と柳沢厚労相 残留孤児と面会−新支援策 夏までに
2007/02/01 残留孤児訴訟原告団代表9人が安倍首相と面会
2007/02/01 〈残留孤児〉新たな支援法案 今国会提出へ/民主党
2007/02/02 〈残留孤児〉給付金制度創設を要請/共産党
2007/02/04 展示会:旧満州引揚者の衣類、紙幣など400点−神戸で
2007/02/05 残留孤児訴訟:東京地裁敗訴後 兵庫原告ら集会
2007/02/07 残留孤児訴訟:東京地裁の原告孤児側 東京高裁に控訴
2007/02/09 柳沢厚労相 残留孤児11人と面会 新たな支援策への具体的要望を聞く
2007/03/04 残留孤児の安心の老後を支援「兵庫の会」発足記念集会
2007/03/08 残留婦人NPO「中国帰国者の会」が残留婦人への援護を国に要望
2007/03/08 残留孤児訴訟:東京地裁1/30の判決文を巡り差別的表現があると抗議
2007/03/10 「生活保護でない給付金制度を」−残留孤児ら厚生労働省に要望/大阪
2007/03/23 残留孤児認知症患者に安住の場
         NPO法人「中部日中友好手をつなぐ会」による「グループホーム大地」完成/長野
2007/03/24 残留孤児訴訟:徳島地裁敗訴 改めて支援早期策定求める−兵庫原告団長
2007/03/30 残留孤児訴訟:東海訴訟 名古屋地裁敗訴 国の義務は認める
2007/03/31 県に判断求め生活保護費審査請求:中国人夫が一時帰国、保護費返還巡り/山梨
2007/04/01 「かごしま孤児を支える会」山下千尋さん中国残留孤児26 人の聞き書き証言集出版
2007/04/04 残留孤児訴訟:徳島原告団、高松高裁へ控訴「本当の被害伝えたい」
2007/04/16 69歳の残留孤児女性が通信制高校入学/広島市
2007/04/20 「中国『残留日本人孤児』を支援する兵庫の会」が日本語教室を開設−神戸市東灘区
2007/04/25 国の義務違反認めず=残留孤児訴訟−広島地裁
2007/04/29 〈残留孤児〉年金支給や給付金制度 原案作成

事例紹介

 中国帰国者支援・交流センターでは、支援者間の情報交換やネットワーク強化につながる“場”作りを目指し、各地でボランティア研修会《まなびや》を開催しています。今回の事例は、東海・北陸中国帰国者支援・交流センターが、今年3月、この「まなびや」を開くにあたり作成した資料集から、ある帰国者一世とその支援者の手記を取り上げ、その内容をまとめる形で紹介します。

 8年ほど前、Aさんは勤め先のパン屋で初めて残留孤児のBさんと出会った。日本人なのに日本語が喋れないということをAさんは不思議に思ったという。
 その後、Aさんは「好奇心も手伝い」、Bさんから中国語を習うようになり、またBさんやその家族を通して「帰国者」のことを知るようになる。「戦争を境に変わってしまった運命を背負い、懸命に生きているBさんたちの重い人生」はAさんに感銘を与えた。
 やがて、中国語を教わる過程で、Aさんは「日本語教師」という存在を知り、通信教育を受けて教師の検定試験に合格。また、このころBさんもご主人が交通事故に遭った際、言いたいことも何も言えず相手の言うこともわからないという言葉のハンディーを痛感。それが日本語学習に再び挑戦しようという決意を促し、こうしてAさんとBさん夫婦との日本語学習はスタートしたのである。「一緒にテーブルを囲み教科書を開きながら話していると、Bさんたちが中国でいろいろな目に遭いながら今に至った、逞しさ、余裕のようなもの」を感じるとAさんは言う。
 「Bさんと知り合えたことが家庭のことしか知らない私の目を開いてくれた。」とAさんは手記に書いている。特別なきっかけではない偶然の出会いとそれを大切にしたAさんの行動力が、AさんとBさんたちの人生に新たな扉を開いたのだと私には感じられた。

 Bさんとご主人は、十二年前日本に帰国した。
 Bさんにとって、日本語を勉強する最初の動機はもちろん「早く生活に慣れるため」であった。定着促進センター、そして自立研修センターでの研修の後も学習を続け、テレビ番組を見ていてわからない言葉があればすぐ辞書を引くというような努力を続け、簡単な会話ができるようになり、「だいたい自分で生活できるようになると満足して」、「一生懸命勉強する意欲」が持てなくなっていたという。
 そんなBさんが、Aさんの支援を受けて再び日本語学習を始めようと「遠隔学習課程」を受講することにしたのは昨年の八月のことだった。
 Bさんは、手記の中にこんなエピソードを書き留めている。「あっという間に時が過ぎ私にも孫ができました。……ある日、二歳半の孫が『三匹の子ブタ』の絵本を持って私のひざに座って読んでほしいと言いました。私はつっかえながらも読みました。すると孫が絵本を取りあげて本を指しながら『三匹の子ブタ』と言い、私の顔を指差して『おばあちゃんは読めない』と言いました。孫は私から離れて座り、がっかりした顔で絵本を眺めていました。言葉が話せないことが私と孫の間に壁を作ってしまいました。その時私はせつなくなり、孫にすまない気持ちでいっぱいでした。それから私は子供の絵本を買って勉強しました。でも、私の勉強は子供の成長には追いつきません。孫は毎日新しいことをしてほしがります。私と一緒に遊ぶためにも、私はまた勉強を続けるべきだと思いました。」
 年を重ね、いつしか介護が必要になるかもしれない自分たちが、ヘルパーに「迷惑を掛けないよう」と、Bさんはさらに「介護用語」も勉強しようと考えているようだ。
 「活到老,学到老,人生結束也学不了」(年老いるまで生き、年老いるまで学ぶ、人生が終わっても学び切るということはない)。これはBさんが座右の銘にしている言葉である。(所沢:小松)
※本稿のもととなったBさんの手記はすべて本人による日本語作文です(抜粋部分はこの手記の一部)