HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第13号(1998年9月24日発行)  PDFファイル
巻頭言  サハリンからの帰国者を待ちながら
こんなところ・あんなところ・どんなところ
 中部地方 その3) ─愛知県─
 地域情報 ア・ラ・カルト
 深川第八中学校「日本語クラブ」/学校現場から−京都市立池田小学校−/再研修の現場から―神奈川県自立研修センター/ふじみの国際交流センターの活動
行政・施策
 厚生省から
 文部省から
 文化庁から
 援護基金から
研修会
教材・教育資料
とん・とん インフォメーション

巻頭言

 サハリンからの帰国者を待ちながら

 数年前であったろうか、テレビの画面には風雪の刻まれた高齢の男性の顔が映し出されていた。「宗谷海峡を隔てたサハリン(旧樺太)に戦後数十年残留を余儀なくされ、ようやく祖国の土を踏む日本人」というナレーションが流れ、親族との再会の様子を伝えた。その時素朴な疑問が頭をよぎった。「サハリンにも残留者がいたなんて。でも何故今日まで帰ってこられなかったのか。終戦後のサハリンには帰国を阻むどのような事情があったのだろうか」と。しかしニュースの終了と共に疑問は疑問としたまま日常に戻り、サハリン残留者を生み出した歴史的背景に辿り着くこともなく、やがてその事は脳裏から消えた。  近年、樺太からの永住帰国を希望する者が増えつつあり、この10月には所沢センターでの受け入れがスタートする。53回目の終戦記念日を迎えた現在も彼の地には500人を超す日本人が残留しているという。  1905年、日露戦争後のポーツマス条約で旧樺太の北緯50度以南が日本領となり、豊富な資源開発を目的に大勢の日本人が渡った。労働力不足を補うため朝鮮半島などからも労働者が多数送り込まれた。1945年8月当時、南樺太には日本人が約39万、韓国朝鮮人が約4万人(中公新書 大沼保昭著『サハリン棄民』より)いたと推定されている。旧ソ連の侵攻に伴い緊急疎開で日本人約10万人が本土に引き揚げた。敗戦後の社会混乱の中、残された日本人の中には、朝鮮人を装ったり、朝鮮人と結婚したりする者がいたという。やがて残る29万の日本人もソ連の支配下1950年までの間にほとんどが引き揚げた。1957年から59年にわたり第二次集団引き揚げが再開され、766人が引き揚げた。この引き揚げでは日本女性と結婚してこれに随伴した朝鮮人の夫とその家族1,500余人も入国した。一方、樺太に引き続き残留した人々は、樺太での生活基盤ができたために残留した者がほとんどであるが、中には日本での民族差別をおそれて残留した者もいた。これが、今日に伝わる残留事情である。  戦後処理にかかわる歴史的経緯や当時の状況を踏まえた時、樺太からの帰国者に対しても、あたたかい支援が必要と思う。  日本は今「国際化」が喧伝され、異文化との共存や多文化社会実現に向けての努力の必要が語られる。サハリンからの帰国者の目に現在の日本はどのように映るのであろうか。日本社会が異文化に対して開かれた社会として変貌しつつあることを真に実感してもらえるか否か、それが受け入れ側の私たち自身に問われていると思う。

こんなところ・あんなところ・どんなところ?

中部地方 その3) ─愛知県─

T.中国帰国者の定着状況

 これまでに愛知県に定着した中国帰国者は、呼び寄せ家族や他県からの転入者を含めて、平成9年12月1日現在において、987世帯、2,733人となっています。年々、帰国者数は増加しており、平成8年と比較しても90世帯、208人増加しています。  定着世帯・人数の最も多い自治体は、全体の約60%を占めている名古屋市であり、続いて豊田市、岡崎市の順となっています。これは、公営住宅の数や入居のしやすさ、希望就職先の多さ、中国帰国者の大都市志向等が影響していると思われます。

U.県単独事業

1)中国帰国者日本語教室(6教室)への補助 ア 学習費補助  中国帰国者及びその家族(二世で16歳以上の者並びにこれらの配偶者)で帰国後3年以内の者が対象者であり、教材費及び通学費について、日本語教室通学開始後2年間まで補助しています。  なお、自立研修センターへ通所している者に対しても通学費を補助しています。 ・補助率 教材費1/2、通学費10/10 イ 運営費補助  日本語教室の円滑な運営を図るため、運営費に対し補助しています。

2)引揚者見舞金の支給  海外からの長年の労苦に報いるため、愛知県に定着する永住帰国者、一時帰国者、再一時帰国者等に対して、見舞金を支給しています。

3)その他 ア 自費引揚者世帯への自立指導員の派遣 イ 自立指導員等研修会の開催

V.愛知県中国帰国者自立研修センター

 県が社会福祉法人愛知県厚生事業団に委託して、昭和63年6月1日から事業を開始しています。事業内容は、日本語教室、生活・就職相談及び指導、地域交流事業、大学進学準備過程を行っています。  設立以来、408名の帰国者が入所しています。(平成10年8月1日現在)

1)日本語教室(8か月)  定員45人(1クラス15人 3クラス)で、昼間コース2クラス(初級・中級:月〜金曜日午後1時〜3時30分)、夜間コース1クラス(月水金曜日午後6時〜8時30分)を開催しています。  なお、定員に余裕があれば、帰国者の二世及び二世の配偶者まで通所することができます。

2)生活・就職相談及び指導  昼間(月〜金曜日、午後1時〜5時)と夜間(月水金曜日、午後6時〜8時)に実施しています。

3)地域交流事業  帰国者を地域に溶け込みやすくするため、また地域の人々に帰国者への理解を深めてもらうため、社会施設見学(動物園、水族館等)、名古屋YMCAのボランティアとの交流会、社会見学(節分行事)、食事会(ファミリーレストラン等)を行っています。     (愛知県民生部障害援護課調査担当) 地域情報 ア・ラ・カルト

地域情報ア・ラ・カルト

★東京都江東区立深川第八中学校「日本語クラブ」

 日中国交が回復して、残留孤児とその家族が、深川八中の学区域にある三つの公共の一時居住施設や、付近の都営住宅に大勢住み始めました。中国から直接八中の学区域に来て住む家族や、地方の故郷に様々な理由で定住できなくて、東京に転居してくる家族などもありました。  当初は学校としても、入学・転入してくる生徒達にはどう対応して良いか、初めての経験で、全くお手上げの状態でした。  そこで区の教育委員会は1979年、中国語の分かる講師を深川八中に派遣し、生徒たちが日本社会や学校に円滑に適応することを目的として「日本語クラブ」を開設しました。 江東区においては、「日本語クラブ」の指導は時間講師が担当しており、他に見られるような、一般の教師が担当する「日本語学級」とは方式を異にしています。しかし実際の指導は月曜から土曜まで、取り出し授業等で生徒が所属する学級の担任や教科の担当を側面的に援助して、一般の生徒と同様に円滑な学校生活ができるように指導していくという点では、その内容はなんら変わりありません。  さて、実際の指導ですが、先にお話ししたように授業時間内に日本語クラブの教室に取り出して授業を行ったり、放課後に呼び出して授業を行ったりしますが、取り出しの時数や、放課後のみの授業にするかといったことについては、個々の生徒の「伝達言語」や「学習言語」の習得状況を見ながら学級担任等と相談して適宜判断しています。  特に講師が通常心に留めている点は、一般の生徒にとっても、中学生段階が精神的にも肉体的にも大きく変化する不安定な時期であるのに、クラブ所属の生徒達は自分自身も家族全員も日本文化の受容と適応という大きな課題を乗り越えていかなければならないという現実を、日々抱えて生活しているという点です。ですから講師の最も大切な仕事は日本語学習、ひいては学習全般の前提となる生徒達の心のケアである、ということです。  講師がクラブ発足当時から継続して勤務し、転勤等の異動がないという利点から、八中日本語クラブでは生徒の卒業後も講師との人間的な繋がりは継続して、折に触れ精神的なケアが行われています。  現在「日本語クラブ」では1学期に一回程度、クラブの講師によって独自にミニ通信を発行し、今後どのように生徒達の多様化(社会の国際 化に伴った中国・韓国・フィリピン人等の入学)に対応していくか、また教育の質の向上と直結する「講師の身分」をどのように安定させていくか、私たちの思いを発信しています。         (宮崎専輔)

★学校現場から−京都市立池田小学校−

 私の学校は、京都市の南東に位置し、校区のほとんどが団地である。数年前より中国残留孤児がその団地に住むようになり、学齢に達した孫たちが1991年頃より本校に通学するようになった。本校の日本語教室は、はじめは週一回放課後に開設していた。帰国児童の増加に伴い、3年前から常設し、担当も私ともう一人の教師の2人体制になった。現在、中国帰国児童在籍数は28名である。  日本語教室の目標として、帰国児童たちが学校で学習していくために必要な基礎的な日本語力を習得することを重点に掲げている。具体的には帰国児童の学習実態を調べ、その結果を初期(抽出必要あり)・中期(基本的にはクラスでの授業可能、必要に応じて抽出する)・後期(抽出の必要なし)に分け、初期段階の児童の抽出授業を中心に取組んでいる。一人の担当が平均して1日4時間程度の抽出授業を行なっている。  私は現在、中国から来て4カ月になるA姉妹と、『ひろこさんのたのしいにほんご』を中心に使って学習しながら、日々格闘(!?)している。彼女たちは中国で1年生を半年程経験して日本に来た状態で、2年生、3年生に在籍することになった。全く中国語のわからない私と、全く日本語のわからない彼女たちとの学習は、はじめのうちはボディランゲージに終始していた。彼女たちは少しずつひらがなを習得し、二語文で話せるようになり、今では自分の方から中国のことなどを話したがるようになっている。彼女たちとの学習は、具体物を使う(長音の学習では一緒にお菓子を食べることもあり)、絵カードや写真などを使う、繰り返し練習する事を基本に進めているが、定着がなかなかむずかしい。  中期段階の児童でも、クラスの授業についていきにくい児童も多い。そのため、週1回程度の抽出授業の他に放課後学習も行なっている。放課後であるため対象児童全員が参加するわけではないが、学年毎のグループに分け、週1回国語学習につながる補充授業をしている。  2年グループのB男は去年1学期の終わりの時点で、ひらがなの読み書きが3分の1程度しかできない状態であった。しかし、放課後学習を休まなかったことや、夏休みに保護者にB男の横について学習をみてもらったこともあり、2学期の後半にはほぼひらがなの習得ができ、2年の今では本読みが得意になってきている。  そういったささやかな成果がある反面、高学年児童については特に課題が重く、個人差も大きく、なかなか成果があがらず、悩みばかりが多い今日この頃である。                   (春山 和美)

★再研修の現場から―神奈川県自立研修センター

 平成8年度、「試行」で始まった再研修は今年で3年目を迎えました。試行時は初、中級程度の2クラスのみで開講しましたが、この期間中再研修に対する意見・要望について、生徒へのアンケートを実施しました。このアンケートの中で、「仕事場で使える言葉」や「毎日の生活でのコミュニケーションに必要な言葉」を習得したいという声が印象的でした。再研修の限られた時間では、これら帰国者の希望をすべて反映させることはかなり難しく、次年度のクラス内容・数を決める際の職員会議でもさまざまな意見が提出されました。しかし、ここで私たち職員が更に留意しなければならなかった点は、今何を学習しなければならないのかを自分で把握できない生徒達へのケアでした。そこで初級程度の他に入門程度を新たに加えて、更に中級程度の各種さまざまな希望を取り入れるという意味で、短期の目的別コース(新聞を読む/職業訓練校試験案内/日本語能力検定2級対策/パソコン)も設置し、9年度は全4クラスの開講となりました。  そして今年、10年度のクラス編成も同様に検討した結果、右の表のような内容で全7クラスとなりました。3月に募集要項を県内定住の帰国者全家庭に郵送したところ、昨年よりも更に多い申し込みがあり、クラス数が増えたにもかかわらず、4月までの申し込み期間だけで初級程度のクラスは定員をオーバーしてしまいました。中・上級程度のクラスもほぼ定員に近い人数で開講しています。しかし、申請していても仕事や家庭の都合で通学できなくなる生徒が必ずいますので、開講後の実際の出席人数は1クラス毎回平均して10〜20名程度です。  通学に必要な交通費は原則自己負担ですから、通学した1日の時間をなるべく有効に使っていただけるように、同等レベルで午前・午後計4時間受講できるように時間割を組みました。生徒の中にはボランティアの教室に通っている人もかなりいるようです。それだけ「言葉を上達させたい」という焦りの気持ちが大きいのだと思いますが、現状ではボランティアのような少人数指導を行えませんので、きめ細かな対応という点では満足していただけないかもしれません。しかし、我々もまだまだ手探りの状態ではありますが、何か付加価値を見いだしてこの再研修を充実させていきたいと願っております。  例えば、孤児世代の高齢化に伴い今後は仕事場を離れた生活の中でのコミュニケーション作りが必要になってくるでしょう。同時に子供達が独立した後での心の拠り所も必要になってくると思います。幸い現段階では再研修事業にセンター全職員が関わっています。その結果、帰国者の方たちが「8ヶ月修了後でも上大岡に行けばあの顔に会える」と、古巣を懐かしんで通学して来てくれて、そこで少しの安心感が得られるのであれば、それも一つの付加価値となるのかもしれません。  試行の時「とにかくやってみよう!」とスタートし、その時から今日まで3年に渡る多くの課題をそのまま山積みにして走り続けて来た感があります。決してすべて順調に進んでいるわけではありませんが、今後も与えられた条件と環境の中で改善・努力を重ねながらこの事業を継続させていけることを願っています。            〈プログラム一覧〉 クラス    教材 レベル   時間 @ にほんご1・2・3 初級 日曜2時間1年 A 新日本語の基礎T 初級 火・金夜2時間1年 B 新日本語の基礎U 中級 月曜夜2時間1年 C @・Bの修了者 中級程度 日曜午後2時間1年 D @・Bの修了者 中級以上 日曜午前2時間1年 E (修了者含む) 中級以上  月3回土夜2時間1年 F‐1.夏期パソコン教室初心者(Word機能) 中級以上 日曜4時間×3回  F‐2.夏期パソコン教室経験者(Excel機能) 中級以上 日曜4時間×1回 F‐3.冬期パソコン教室初心者(Word機能) 中級以上 日曜4時間×3回 F‐4.夏期パソコン教室経験者(Excel機能) 中級以上 日曜4時間×1回 F‐5.日本語能力検定一級対策   中級以上 日曜午後2時間3カ月 F‐6.職業訓練校試験案内            中級以上 日曜4時間×1回 F‐7.職業訓練校試験案内 中級以上 日曜4時間×1回                   (中川桂子)

★ふじみの国際交流センターの活動 −地域に根ざした外国人住民支援を目指して−

 ふじみの国際交流センターは、埼玉県上福岡市、富士見市、大井町、三芳町の二市二町に住む外国人住民の生活支援と国際交流活動の促進を目的として、1998年4月26日に正式に発足しました。市民により設立され、運営される、まさに市民立の国際交流センターです。  昨年(1997年)4月、公民館等で外国人の日本語学習を支援するボランティアや国際交流・国際協力に関心のある人が集まり、「ふじみの国際交流センター設立準備会」が発足しました。その活動拠点として、昨年7月に上福岡市駅近くの一軒家を借りてセンターが仮オープンし、多言語情報誌「インフォメーションふじみの」の発行、「チャターボックス」(おしゃべりの会)の開催、「国際子どもクラブ」の発足等、その活動が広がりと厚みを増すなかで、賛同者も100人を超え、正式に発足ということになりました。  センターは、個人会員(会費1口3千円)および団体会員から成る会員組織で、当面は任意の市民団体として活動しますが、「特定非営利活動促進法」(NPO法)による法人格取得を予定しています。  センターの事業の柱は、交流事業、情報提供事業、学習活動、生活支援事業、緊急時対策事業、広報活動、収益事業です。  交流事業としては、第2・第4日曜日の月2回、「チャターボックス」(おしゃべり会)という名称で、地域に住む外国人と楽しく気軽に交流する会を開いています。第4日曜日は、外国人のお国自慢の料理を発表してもらっています。  情報提供事業として、多言語情報誌「インフォメーションふじみの」を毎月発行し、外国人住民が地域で生活するにあたって必要かつ重要な情報を、外国人住民の母語で提供しています。現在、英語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、中国語、ハングル、ペルシャ語、タガログ語、日本語の9カ国語で発行しています。また、コミュニティーFM局の開局をめざす地域のネットワークにも参加し、将来的にはFMラジオの多言語放送プログラムを通じた外国人住民への情報提供を行う計画です。  学習活動の大きな柱として「国際子どもクラブ」があります。親が外国人の子どもたちや異文化に関心のある日本の子どもたちが集い、勉強や国際交流を通じて学び合う場で、小・中学校が休みの第2・第4土曜日に開かれ、ボランティアの大学生が子どもの学習指導と交流活動支援を行っています。また、少人数ながら外国人向けの日本語教室、日本人向けの韓国語、タイ語、スペイン語の講座が開かれているほか、国際交流・国際協力のためのボランティア活動に役立つ学習会を月1回程度開いています。  生活支援事業としては、生活相談・通訳などがあり、センターの存在が知られるにつれて徐々に相談件数も増えています。実際に、日本語の話せない外国人を患者として受け入れた病院から通訳派遣の要請があり、急遽、通訳ボランティアを派遣したこともあります。また、センターは宿泊設備も整えており、様々な事情で困っている外国人が、一時的に宿泊施設として利用することもできます。さらに、急速に増えている外国人妻の生活支援の一環として、裁縫や洋裁の技術・技能講習も行っています。  ところで、こうした地域に根ざす市民立の国際交流センター設立を思いたったのは、地方公共団体が国際交流協会などを設立する動きがある一方で、自治会・町内会などの地域レベルでの外国人と日本人の交流があまり進んでいないと思われたからです。中国帰国者をはじめとする外国人住民にとって一番大切なことは、その地域で日本人とともに文化交流を深めながら顔の見える人間関係を地域に築き、豊かに暮らすことではないかと思うのです。そうしたことを実現するためには、日本語学習の支援はもちろん大切ですが、もっともっと総合的で地域に根ざした活動が求められるのではないでしょうか。  そしてこうしたセンター設立を、財政が逼迫し行財政改革のただ中にある地方自治体に求めるのはほぼ不可能となっています。そこで、市民が力を合わせてまずは動き始めようということになったわけです。とはいえ、自治体とはまったく無関係に活動するのではなく、よきパートナーとして協力関係を築いていく予定で、現在、自治体に対しても支援を正式に求めているところです。                   (野元弘幸)   ふじみの国際交流センター    代 表:野元弘幸(東京都立大学助教授)    副代表:石井ナナエ(大井町日本語クラス)       〒356-0005 埼玉県上福岡市西1-4-21  TEL/FAX: 0492-69-5070 行政・施策

行政・施策

★厚生省から

☆中国孤児等対策室から 1.定着促進センターの閉所  早期に帰国を希望していた中国残留邦人については、これまでに概ね受け入れが完了し、今後は、本人や家族の事情により早期帰国を見合わせていた者、新たに帰国希望を表明した者等の受け入れとなるものと考えています。  このため、今後、帰国者数は次第に減少していくものと見込まれることから、平成10年度において岐阜、広島及び宮城の各センターを順次閉所することとしています。その後の帰国者の受け入れは所沢、大阪、福岡の各センター及び長野分室で対応していきたいと考えています。

2.「平成10年度 自立指導員研修会」  主に初任者クラスの方々を対象として、平成10年7月29日〜31日に東京で開催し、講義及びテーマ別に分かれての指導方法に関する研究討議を行いました。(自立指導員44名、都道府県職員34名が参加)  1日目は、厚生省による説明の後、お招きした専門家により「生活保護」、「日本語指導」、「就労指導」について、講義を行っていただきました。  2日目は、「精神保険福祉」、「入国管理制度」について講義が行われ、引き続いて、日本語指導、就労指導等をテーマとした研究討議を行いました。  3日目は、前日の研究討議のまとめの発表、また援護施策に関する質疑応答を行いました。  会議終了後、参加者からは「帰国者の指導にあたる上でたいへん参考になった」「他の指導員同士との経験交流ができて良かった」などの感想がありました。

☆業務第一課調査資料室から 樺太等残留邦人の中国帰国者定着促進センターへの入所について  先の大戦に起因して生じた混乱等により、本邦に引き揚げることができず引き続き樺太等に残留することを余儀なくされた残留邦人の帰国援護につきましては、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」(平成6年法律第30号)に基づき、中国からの帰国者と同様の援護施策を実施していますが、今までの樺太等からの帰国者は、少人数で日本語もある程度解していたことから、定着促進センターへの入所の必要はなかったところです。  しかしながら、最近になって樺太からの永住帰国を希望する残留邦人が増加傾向にあり、また日本語を解しない同伴者も増えつつあることから、本年10月の帰国者から希望する世帯については、財団法人中国残留孤児援護基金に運営委託している埼玉県所沢市の中国帰国者定着促進センターにおいて、日本語の習得・日本社会への適応訓練等の研修をすることとなりましたのでお知らせいたします。           記 1 入所予定時期 平成10年10月上旬 2 入所予定世帯人数    4世帯14人 3 研修期間 4ヶ月 4 定着促進センターへの入所式は、中国からの帰国者  とともに10月19日行われる予定です。

★文部省から

 「外国人子女等日本語指導講習会」  7月27日から8月7日、外国人子女等日本語指導講習会が,文部省と東京都教育委員会との共催で国立オリンピック記念青少年総合センターを会場に行われました。  この講習会は、小学校、中学校の教員及び教育委員会の指導主事で、原則として外国人子女に対する日本語指導等についての知識と経験を有し、今後、都道府県における外国人子女教育の指導的立場に立つことが見込まれる者を対象に行われるもので、都道府県から推薦された72名が参加されました。  文法・音声・文字表記などの語学教育の専門科目、外国人児童生徒の社会背景や発達段階の講義、カリキュラム・指導法・模擬授業の研究、東京外国語大学の「外国人子女の日本語指導に関する調査研究」の講義・演習等が行われました。  今後、本講習会の成果が、参加者を通じて学校や地域の外国人子女教育の充実に寄与することを期待しております。

★文化庁から

 平成9年度文化庁「日本語教育機関連絡協議会」 について(12号からの続き)  今年度の「日本語教育機関連絡協議会」の開催日時やその趣旨等に関してと、協議の前半(第1部)部分の概要に関しては前回お伝えしました。今回は引き続き、後半(第2部)部分の概要をお伝えします。  後半は、「地域の国際化とリソ−スセンター: 各機関の連携と将来構想」という議題で協議を行いました。まず、学識経験者からの事例報告として、杉田洋氏(東京学芸大学海外子女教育センター教授)が「年少者(児童・生徒)への日本語教育」、柳澤好昭氏(国立国語研究所日本語教育センター日本語教育研修室長)が「国立国語研究所日本語教育センターのネットワーク/研修事業とリソースセンター」、根岸正光氏(学術情報センター教授)が「学術情報センターの活動概要」という題でそれぞれ問題点の指摘と提言があり、その後約1時間の協議が行われました。協議内容の主なものをまとめると次のようになります。 1.地域における年少者の日本語学習支援のためのリソースセンターの設立目的は、「年少者への日本語教育および関連の言語教育を最適に実現するために、調査・研究・開発の実施、研修・相談機会の提供、情報の収集と交流などを行うこと」である。 2.1の目的を念頭に置き、各地域の例えば教育委員会、それから学校などを端末として、もう少し大きなくくりのハブのようなもの、更に大きなくくりのセンターのようなものを配置し、このセンターに、専門的な研究や指導ができるような環境をつくることが肝腎である。 3.2のリソースセンターの機能として考えられるのは、@研究(言語発達および日本語教育を含む言語教育一般の研究)、A研修(現職教員の研修:原理、方法、開発、学習者言語等)、B教育(大学院教育→専門家=教員の養成)、C組織(専門家、母語話者、ボランティア等の人的ネットワーク作り)、D開発(学習プログラムや教材などの開発と開発支援)、E情報(教材、方法等の情報と「情報の情報」の収集・提供・交換)等である。 4.色々な所に分散したリソース(教材、人材、情報、図書など)を結び、支援するのに大きな役割を果たすのは情報ネットワークの広がりとティーチャーズ・ティーチャー(問題解決型の訓練ができるコーチ/ファシリテーター)の育成である。また各地域のリソースセンターの連動(連携)へ向けての工夫や、受信者との相互交流(インターアクション)ができるような情報発信へ向けての工夫をしてゆくことも肝腎である。 5.グローバルな日本語教育の普及や充実は、その種の効果が直接・間接にデータベース(学術情報センター等のリソース)の言語など各方面に及ぶことがある。例えば、特に電子化された情報の場合、かつて英語以外は日本語でいくらデータベースができていても、それはないのと同様だというような居丈高な議論が外国から巻き起こる場合が多かったが、最近はほとんど起こらなくなった。 6.人的リソースとして、日本語教師だけではなく地域の一般の方々も含めて、何らかの形で変容していくことを喚起するような機能を持ったリソースセンターが必要である。 7.縦割り行政の枠組みを超えた発想で、リソースセンターを構想することや、地域のボランティアネットワーク・行政・学校(大学も含む)関係者等との連携や協力を図ることが期待される。 8.リソースセンターを実質的に機能させるためには、連携・協力を促進し喚起できるような能力を持ったコーディネーターの育成とポジションの設置が期待されると同時に、研究支援ができる地域の体制作りや外国語(母語)話者も包み込んだ人的ネットワーク作りが期待される。       (文化庁文化部国語課 野山 広)

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★援護基金から

平成11年度就学援助について  援護基金では、中国残留邦人本人、その配偶者及び二、三世が高等学校、大学、専修学校で就学する場合の就学資金の貸与を行っています。また、日本船舶振興会(日本財団)の補助事業として、帰国後3年以内の二、三世を対象に、大学等に入学するために必要な教育課程を設置している日本語学校に就学するための資金の援助をおこなっています。  平成11年度についても募集を行いますが、詳しくは近々発行の機関誌『援護基金』をご覧下さい。

研修会

★シンポジウム「地域で支える日本語教育'98東北―その現状と課題―」(主催:国立国語研究所・秋田日本語の会・シンポジウム運営委員会)

 4月25・26日秋田市で開かれたこのシンポジウムでは、初日は、中国帰国者、外国人配偶者、子どもといった支援対象ごとに、次の日は、ボランティアの役割、乳幼児を抱えた学習者への支援、外国人自助グループへの支援、地域のことば(方言)といったテーマ別に、11の分科会で活発に情報と意見の交換が行われた。ここでは二つの分科会から印象に残った報告を紹介したい。  「中国帰国者とその家族のための日本語ケア」の分科会では、二次センターや県の帰国者教室や外国人のための日本語教室等公的な学習機関では圧倒的に呼び寄せ家族の占める割合が大きくなっていること、また、地域によっては一次センターも二次センターも経由することなく地域社会に参入してくる帰国者が増えてきていることが報告された。帰国者のための公的な学習機関が設置されている地域とそうではない地域の学習環境の格差は、これまでも大きな問題となっていたことであるが、能代日本語学習会の北川氏の報告は、ボランティアが中心となって、そうした機関のない地域に、いわばゼロから支援のネットワークを作り上げていった実践を紹介したものであった。こうした地域では、帰国者の存在に対する地域住民の関心や自治体の理解が薄く、支援を立ち上げていくには、まず帰国者の抱える問題を地域に発信し支援の必要性について自治体や地域の合意を形成していかなければならなかったという。通訳ボランティアとして帰国者に関わったことから彼らの生活と学習への支援がはじまり、その活動を通して支援者自身も支援に必要な技能や知識を学習し、実力と発言力を高めていくことができた事例としても、非常に示唆に富む報告であった。  「関連領域とのネットワーキング」をテーマとする分科会では、生活相談、学習支援、行政、医療、法律等支援に関わる様々な領域間の連携が重要であることが確認され、そうした連携が、発生した個々の問題の解決に向けてのアクションの中で築かれていった事例が、JVC山形の西上氏、山形県国際交流協会の岡部氏から報告された。また、埼玉県越谷市の国際交流主任千葉氏からは、ボランティアが行政を「巻き込んでいく」ためには、客観的データ(数字・事例)をそろえて論理的に説得すること、行政内部のいろいろな部門にアタックすること(例えば国際交流、社会教育、福祉等の一つの部署がだめでも他の部門で予算がつけられることもある)が必要という貴重な助言を受けることができた。               (所沢センター 佐藤)

★平成10年度文化庁日本語教育研究協議会

 例年通り今年も「文化庁日本語教育大会」が開催されました。7月29日のシンポジウム「これからの日本語教育を考える」に続いて、日本語教育研究協議会(東京会場7月30日、大阪会場8月11日)が開かれました。「日本語教育と他分野との連携について考える」というテーマで行われた東京会場の7つの分科会のうち、第3分科会に所沢センターの講師会からも参加しましたので、その様子を簡単にご報告します。  まず講師の都立大学の野元弘幸先生から社会教育としての日本語教育について公民館との関わり合いを中心にお話があり、ついで法政大学の笹川孝先生から外国人の学習権についてお話がありました。また、東京の国分寺市の光公民館の日本語教室の様子や田無市谷戸公民館の日本語教室の問題点などが発表された後、参加者全員が6つのグループに分かれて「社会教育と日本語教育」について討論し、その結果を発表しあいました。  第三分科会で話題の中心になったことは、現在行われている日本人の生涯教育と同じ扱いで在日外国人への日本語教育があちこちの公民館で行われているが、どうやって場所を確保するか、受講料をどうするか、どうやって教室を継続していくか、講師はボランティアか日本語教育の専門家にするか等の問題が多いことについてでした。また日本にいる外国人にとって日本語学習はいわば生活権の一部なのに、それが茶道や生け花、書道といった他の公民館の講座と同レベルで考えられているのは問題だという意見や、日本語学習を外国人への生活支援の一環と考えると、日本語を教えるのも大事だが、日本人との相互交流も重要なのではないかという意見も聞かれました。最近、日本語教師にも日本語の文法や文型の知識などを教える技術以外に、広く社会教育的な立場から日本語教育を捉えるものの見方が求められるようになっていますが、まだまだ社会教育とは何かという概念自体が曖昧で、社会情報や知識を伝えることが即、社会教育であるかのうような思いこみも一部には見られるようです。そういう意味で、“社会教育とは何か”も含めて、日本語教育と社会教育の関係を考えていかなければならないと思いました。    (所沢センター 中村)  

教材・教育資料

★所沢センター自主開発教材『すいすい引いてみよう』 −日漢辞典と漢和辞典が引けるようになるために−

 中国語を母語とする学習者が「日漢辞典」と「漢和辞典」という2種類の日本語の辞書が使いこなせるようになることを目指したドリル教材です。  具体的には、@名詞や複合語、接頭語・接尾語の付く語、慣用表現などのように、目にしたり耳にしたりした形のまま辞書に載っている言葉の意味を「日漢辞典」で引ける、A形容詞や動詞のように、活用形から辞書の見出しの辞書形を導く必要のある言葉の意味を引ける、B漢字の読み方を「漢和辞典」で引けることを目指しています。  この教材の特徴は、中国で辞書(中国語話者にとっての国語辞典や英語などの外国語と中国語間の辞書)を引く習慣があまりなかった学習者でも、日本語の辞書を引く力を無理なく付けていくことができるように、スモールステップによる積み上げを意識して作成してあることです。ただ、スモールステップを意識したあまり、全体のボリュームは52頁とかなり多くなってしまいました。が、一つの学習項目の量は平均1頁とコンパクトにまとめてあるので、指導者が学習者の進度を見ながら必要な項目を選び出していくことで効率良く進めていけると思います。また、引き方の解説文、例文ともに日中対訳の形をとっているので、学習者によっては自習教材としても使えると思います。  辞書の引き方がわかるようになるまで、そして、わかるようになってからも、辞書を引くこと自体がめんどうでなくなるまでには、練習回数を多くすることが必要です。見出しを追ったり、必要な語釈を見つけたり、取り出したりすることがスムーズにできるようになるための指導上のポイントとしては、一回の練習量と時間を少なくするかわりに(一回1項目が目安だが、時間がかかるようだったら,1項目を何回かに分けてもよい)、練習と練習の間にあまり日にちをおかないようにすることです。また、練習中すぐに指導者に正解を求めてしまう学習者には、正解を導くまでの過程で間違っている箇所や、正解を導くまでのステップとなるヒントを与えるなど示唆するだけにして、あくまでも学習者の自習を後ろから助けるという姿勢に徹することが望ましいと思われます。

              (所沢センター 細川)

 **********************  当教材は現在試作の段階ですが、使用ご希望の方は所沢センター教務課までお問い合わせください。

★『日本人と中国人の交流百話』第二集

 『同声・同気』第11、12号で第一集を紹介しましたが、これはその続編です。第一集と同様、新聞記事や刊行書等から採録したものはなく、すべて、本書作成の趣旨に賛同した人たちが直接体験したものばかりを集めています。従って地域は限られていますが、あくまでも現実に則した日中双方の生の感想が述べられています。私たちは、このような率直な感想を述べあうことでお互いの感じ方・考え方を相対化していけるのではないでしょうか。  問い合わせ先:〒546-0035  大阪市東住吉区山坂4丁目15−1 斎藤 裕子 なお、お問い合わせはハガキでお願いします。

★『外国人子女の日本語指導に関する調査研究・最終報告書』外国人子女の日本語指導に関する調査研究協力者会議・東京外国語大学

 かなり大部の資料です。薄くて緑色の「最終報告書」、厚くて緑色の「資料集」、薄くて白色の「外国人児童生徒に対する日本語指導実態調査結果の分析」の3冊からなっています。  「最終報告書」では、日本語指導の内容・方法・指導体制についての現状分析及び今後への提言がなされています。また、「資料集」には、日本語指導カリキュラムガイドライン(学校生活での適応を図るための場面や話題を通して基礎的な日本語を指導するもので、学校事情等についての簡単な説明には中国語訳がついている)、文法説明(中国語母語話者向けのバージョンがあり中国語訳もついている)、日本語力評価方法試案、教科書の語彙・漢字調査が載っており、今秋には三分冊で市販されるそうです。「調査結果の分析」の内容は、平成7年9月時点の外国人児童生徒の在籍する全国国公立小・中・高等学校と日本語指導者を対象とした日本語指導に関するアンケート調査、外国人児童生徒へのヒアリング調査、都道府県及び市町村の教育委員会への施策に関する調査の結果とその分析です。  概要は文部省海外子女教育課のホームページで公開されています(http://naec.go.jp/kaigai)。また都道府県の教育委員会に三冊セットで配布されているということです。

事例 読者のお便りから

帰国者の住宅入居に際しての保証人

 「(前略)N県の場合、帰国者を主に県営住宅に入居させるのですが、未判明孤児や、親族が引受人にならない残留婦人の場合、入居に際しての保証人がいませんので身元引受人、自立指導員が保証人になっている現状です。(その際、保証人には前年度の収入証明書や、印鑑証明を要求されます。)  ご存じの通り、引受人、指導員の任期は三年ですが、保証債務はそれ以後も、半永久的に続くことになります。例えば十年又は二十年後に家賃未払いがあった場合でも責任を持たねばなりません。その時は、援護基金などの関係機関などにお願いしようにも、もう帰国業務が完了して援護関係の機関は存在しないと思われます。特に引受人、指導員には高齢者が多く死亡していることが考えられます。(保証債務は、配偶者や子供などが相続するということです。)こう考えますと保証人になること自体が無理なことです。  そこで、この保証問題をどうしたら良いものか、他の都道府県の場合どんな方策を取っていられるのか、御教示等を頂ければと思い、失礼をも省みずお手紙を差し上げる次第です。(後略)」

 このお手紙のように、国費で日本に帰国した中国残留孤児や婦人の家族ははじめの定着地では大方の都道府県で優先的に公営住宅に入居できますが、その際、一般的には各地方自治体の住宅条例に従って、保証人をたてることになっています。  日本では公・私営にかかわらず、住宅を借りる場合は本人以外に保証人をたてることが慣例になっていますから、このことは特に帰国者だからというわけではなく、一般の日本人と同じということになります。  さて、保証人をたてる場合、一般の日本人ならば親兄弟や親戚などに依頼することが多いのですが、帰国者の場合はどこでも特別身元引受人や自立指導員が引き受けることが多く、上のお手紙のような心配はどこにでも共通にあることと想像されます。  将来のことは万が一のことであってもこの際、これらの保証人の精神的負担が少しでも軽くなる方法はないものか、情報や意見を出し合って、互いの参考にしてはどうでしょうか。  『同声・同気』の編集係で聞き及んでいる、地方自治体ごとに決められている住宅入居の際の保証人制度には次のような例があります。A県は保証人二人、B県とC県は保証人二人だが止む終えない場合は一人でも可、D県は保証人一人、但し見つからない場合は本人のみでも可など。また、自立指導員の任期切れを期に、自立した帰国者の親族など適当な代わりの人を見つけて、保証人を降りる例もあるようです。

とん・とん インフォメーション

★外国語を母語とする人たちのための高校進学ガイダンス'98(神奈川県)

 『同声・同気 第10号』で紹介した、神奈川県高校進学ガイダンスの98年度の催しが、今年も下記の通り行われます。今年度から中国残留孤児援護基金も後援団体に加わることになりました。 *************************   ・入場無料(事前の申し込みは不要)   ・中国語の通訳有り (以下の情報には当ニューズレターの発行の都合で時間切れになったものがあります。ご了承ください。)  @9月23日(休日)午後1時〜5時    藤沢市商工会議所(藤沢駅5分)  A9月27日(日)午後1時〜5時    県民サポートセンター(横浜駅5分)  B10月4日(日)午後1時〜5時    海老名市総合福祉会館(海老名駅8分) プログラム ☆いろいろある県立高校 高校の種類・高校の場所・外国人の多い高校・日本語を教えてくれる高校など、おしえます。 ☆高校に入るには お金はどのくらいかかるか・成績は?・勉強の方法は? ☆入学試験のことは……くわしくおしえます。 ☆Q&A……どんな質問にも答えます。   問い合わせ先 事務局 高橋 清樹 〒224-0055 横浜市都筑区加賀原1-24-12-301       tel:045-942-5202

★中国大水害緊急募金への協力のお願い

 中国では、今年6月以来続いている史上最大級の洪水により、2億4千万人が被災し、1万4千人余りの死者が出ています(8/31現在)。湖北省、江西省では長江大堤が何度も決壊し、中流域の大都市・武漢も緊急事態にさらされ、数千万人の兵士や市民が24時間体制で長江大堤を守っています。  また、東北三省(黒竜江省、吉林省、遼寧省)でも大雨と洪水に見舞われ、白城市とチチハル市は洪水に包囲されている状況です。ハルビンでは26万人の兵士や市民が26kmに及ぶ防波堤を築き、洪水被害を食い止めようとしており、内モンゴルのダムでも警戒水位をはるかに越えていると伝えられています。現在、長江の両岸と東北三省では2千3百万人が家や田畑を失い、感染症の流行も予想されています。  阪神・淡路大震災の時に、各国から救援の申し出のあったことは記憶に新しいところですが、このような大災害時には地球市民として国境を越えて助け合う行動が期待されています。とくに今回、被災した東北地方は、残留婦人・孤児が多数出た地域でもあり、豊中市にもその子孫で黒竜江省出身の子どもたちが在学するなど歴史的にも関係の深いところです。活動趣旨をご理解の上、ご協力をよろしくお願い致します。 ○主  催:中国大水害救援豊中ネットワーク ○構成団体:国際ネットワークとよなか、(財)とよなか国際交流協会、豊中市教職員組合、豊中市日本中国友好協会、豊中市労働組合連合会、豊中市平和連帯会議、中日新報社(8/31現在、五十音順) ○募金振込先:郵便振込番号 00950-3-11231 口座名「中国大水害救援豊中ネットワーク」 ○支援先:中国東北三省(黒竜江省、吉林省、遼寧省)方面、および日中友好協会全国本部の「長江流域水害義援金」、また中日新報社を通じて詳細を調査して実施予定。 ○報 告:活動内容や募金状況などについて適宜、協会発行ダイレクトメールなどで報告予定。 ○事務局:(財)とよなか国際交流協会〒560-0022大阪府豊中市北桜塚3−1−28 tel:06-843-4343/fax:06-843-4375

『劉先生とその仲間たち』 - 大阪府上神谷高等学校の取り組み -

 大阪府の上神谷高等学校には「上神谷週末中国文化サロン」と呼ばれる講座があります。毎月第一、第三土曜日の午後三時間、上神谷高等学校や周辺の大阪南部地域の中学校・高等学校に在籍する中国帰国生徒たちが、劉任遠先生の中国語による地理、歴史、文学の他、日中文化の相違について等、様々な内容の授業を受けます。92年に始まったこの講座は次第に参加者が増え、97年度には55人の中国帰国生徒が劉先生の授業を受けました。  この講座に参加した生徒たちの作文や、生徒を支え続けた上神谷高等学校の先生方と劉任遠先生の感想を集めた文集「劉先生とその仲間たち」が94年から98年の間に第三集まで発行されています。この文集には、中国帰国生徒のアイデンテイテイーの問題(自分は日本人か中人か)、現実社会の差別とどう向かい合うか、帰国生徒の進路の問題、経済的に困難な家庭状況を抱えてどう学習を続けさせるか等、様々な問題に対して上神谷高等学校の先生方が続けてきた取り組みも報告されています。そして、100頁以上あるこの文集を読んでいくうち、中国帰国生徒以外にも学習困難な状況を抱える生徒が多い上神谷高等学校の先生方が、いかに一丸となってこれらの生徒の教育や指導に取り組んで来たかが分かって、考えさせられものがあります。  文集についての問い合わせは下記まで。     大阪府立上神谷高等学校     〒590-0134 大阪府堺市御池台4丁24―1                    加藤智久     TEL 0722-99-1200/FAX 0722-93-2529

★あなたの地元からの情報を募集します

 『同声・同気』編集講師会は、読者の皆さまに少しでも役に立つ生きた情報をお伝えしたいと心がけています。  読者の皆さまは日本の各地で、帰国者のために、または帰国者とともに活動していらっしゃいますが、ある地域の活動や状況の事例が他の地域の方々にとって、励ましになったり、参考になったり、考える材料になったりするはずです。  皆さまの周りに、他の地域でも参考になりそうな活動やおもしろい工夫、すばらしいアイデア、使ってみてよかったと思った教材、みんなから意見をもらって解決したい問題などがありましたら、ぜひ当講師会まで情報をお寄せください。お手紙でもファックスでも結構です。  情報をお寄せくださるときは必ずお名前と連絡先の電話かファックス番号をお知らせください。掲載する場合は必要に応じて匿名にしたり、固有名詞は消すこともあります。  情報お寄せ先:〒359-0042 所沢市並木6−4−2    中国帰国者定着促進センター 教務課講師会    FAX 042-991-1689

★訃報

・中国帰国者定着促進センター元所長の石井清氏が9月7日お亡くなりになりました。 ・財団法人中国残留孤児援護基金理事長八木哲夫氏が9月10日亡くなられました。  謹んでご冥福をお祈りいたします。

いまどきのキーワード その(4)

エスノグラフィー(ethnography)

 異文化間教育学会の今年の大会の自由研究発表では、64件中9件がエスノグラフィーないしその技法を取り入れたものでした。帰国者支援も含まれる異文化間教育の領域で、「エスノグラフィー」による研究が増えた背景はどこにあるでしょうか。  まずは「エスノグラフィー」とは。以前から「民族誌」という訳語はありましたが、現在では主として@フィールドワークという方法を使って調べた研究Aその成果として書かれた報告書、という2つの意味で使われています。フィールドワークとは、文化人類学や社会学において、調査者がある地域・社会に入り込んで(多くは住み込んで)その地域や社会を通して何かを把握し理解しようとする営みを指します*。その代表的な技法の一つが「参与観察」です。文字通り「参与しつつ観察する」、つまり対象者と同じ場に身を置いて自らの体験を分析や記述の基礎におく調査法で、実験室の中の対象を研究者が外からこっそり観察するのではなく、調査者と対象との間に何らかの相互作用があることも排除しないものです。この他には、インタビュー項目をあらかじめ決めておかないで対話の中で広げていく「非構造的(あるいは半構造的)インタビュー」という方法もよく用いられます。いずれにしても重要なのは、調査者ができるだけその調査対象の視点から見た世界を了解しようとしている、その立脚点にあります。    こうした方法が多用されるようになった背景には、「量的調査」(多数の対象者から質問紙によって引き出した回答を統計的に分析する方法)や文献資料のみに基づいた研究では、社会的文化的な事象に迫ることは難しいと考える人が多くなってきたことがあるようです。統計的な分析や数値の記述を主とせずに、少ない事例であっても、それを詳しく分析することによって、社会的文化的あるいは心理学的な問題について、できるだけ多くの要因間の関連性を分析し記述しようとする「質的調査」が重視されるようになりましたが、エスノグラフィーもそうした質的調査の一つにあたります。  しかし質的調査は、調査者個人の体験をデータ源とするため、当然対象の数は限られますし、調査者の主観になってしまい一般化できる結論を導き出せないとの批判を受けてきました。また、エスノグラフィーと銘打っていても、調査者が自身の立脚点と方法論をよほど意識してかからないと、その成果も自分の日記や雑談の記録から恣意的な結論を導いたもので終わってしまうか、逆に既存の文化人類学的な枠組みに囚われて対象を切り取って終わることになりかねません。さらに、調査者が、なまじその地域・社会に入り込んで一定の信頼関係を得てしまうが故に、そうして得た知見を調査結果として公表することの倫理上の問題も起こります。どの方法も結局万能ではあり得ません。「深いが狭い」と言われる質的調査と「広いが浅い」量的調査、両者を補完的に用いることで初めて、その対象を、そして対象を通して人間社会をよりよく知ることができるのではないでしょうか。

(*佐藤郁哉(1992)『フィールドワーク−書を持って街へ出よう』(新曜社)がお勧め!)

新聞記事から(98.4.18〜98.8.31)

98.05.11 厚生省、中国残留孤児を訪日前“審 査”へ
98.05.23 厚生省、仙台・広島・岐阜の各定着促進センターを今年度中に閉鎖
98.06.02 厚生省・援護基金、中国残留孤児18人の一時帰国を3日から16日まで実施
98.08.11 今年の訪日調査は11月5日から20日まで
98.08.23 吉林省長春市に中日友好会館完成
98.08.26 厚生省、サハリン残留邦人の永住帰国受け入れを発表、10月から所沢センターで研修