就 籍 ・判 例

【「就籍」の初期】

☆ 山本純江（長野家裁飯田支部 50(家)720号 51・6・8）

ボランティアが在中国孤児の委任を受けて就籍申立。 孤児在中国申立の初ケース。
なお、チチハル市公安局外事科が日本国籍認めず(日中友好手をつなぐ会会報 53.8.15)。 後解決帰国

☆ 小島文子 (長野家裁飯田支部 52(家)740号 53、2、13)　

身元未判明孤児に大阪入管 国外退去命令・強制送還[期限 53、2、17]直前に就籍許可解決
◇ 山本敬三 『国籍』(三省堂) ◆ 日本人と認めて・国外退去命令に涙の訴え(53・2・9-朝日)。 日本国籍戻る(53・2・13-読売) 他各紙

◎ 伊藤司 (東京家裁52(家)8375号。6562号。 53、3、31)

身元判明者として帰国入籍後人違いと分かった事件について、未判明孤児の就籍、一方戸籍訂正(人違い戸籍抹 消)の申立双方を認めた。
◇ 判例時報905号 ◆ 山本敬三 同上 ◆ 中国残留孤児認定に道 東京家裁 「人違い」 に大岡裁き (朝日-53・4・4)
◆ 中国残留孤児肉親捜し第一号の悲劇 (週刊新潮-58・1・5)

◎ 池田澄子（徐明ー今村明子） (東京家裁57(家)710号。57・5・31)

父親判明して帰国したが、戸籍訂正申立の家裁血液鑑定において父娘関係が否定された。弁護士、ボランティア等が 『徐明さんを支援する会』を結成し、支援活動 (強制送還阻止、滞在期間延長、身元未判明日本人孤児として就籍申立<中国公的機関の日本人孤児証明を根拠>)によって就籍、永住帰国できた。
次項松本事件とともに、『国籍取得を支援する会』 の原点をなす。　
◆ 事件経過各紙報道
◇身元判明　血液鑑定−姉妹と確認　［池田澄子］帰国後15年　　 (各紙-96・8・1)

☆ 松本斗幾雄（熊本家裁58(家)153号、昭58、3、14）　

徐明事件を知ったボランティア(角田武尚)が、在中国身元未判明孤児の委任を受けて、「孤児証明」 を根拠に就籍申立。 角田武尚(ひと-朝日-84・5・1)

【却下事件】

◎ 李鳳琴(伊藤琴江)（東京家裁 61(家)5581 61、10、13） 就籍申立却下、 初のケース

◆ 就籍申立却下、涙の孤児 (61、10、17-朝日)。 永住帰国悲惨、長男交通死。就籍却下(61、12、3-各紙)
似た条件でも正反対の判断 (61、11、27-朝日) ◇ 衆・法務委員会 (昭61・10・22)

　◎ 同抗告事件 原審判取消、 就籍許可（東京高裁 61(ラ)655 62、6、8)

◇ 判例時報(1234号・87、8、1) ◆ 就籍却下に抗告(61、10、29-各紙)。 中国孤児に逆転判決(62、6、9-朝日)

◎ 李春珍(中村春美)事件(東京家裁 平5(家)2779 7、4、11) 就籍申立却下

◆ 日中政府孤児と認定したのに、「断定できぬと」日本国籍認めず(7、4、21-毎日)

　◎ 同抗告事件 原審判取消、 就籍許可（東京高裁平7(ラ)448 平7、6、30 )

◆ 逆転 晴れて日本国籍。高裁終戦時の背景に配慮 (7、7、5-朝日)

【特徴のある事件】

＜日本人の証明・戸口簿民族籍、実子＞
◎ 胡海春(小野明輝)　(東京家裁 昭59(家)9722、 62、3、31)　 許可

日中両国政府共、日本人孤児と認めず。 (母姉と鴨緑江集団投身自殺)

◎ 曲桂英(田中桜子) 厚生省孤児名簿記載・中国孤児証明共になし (東京家裁・H2(家)8041、H3・515) 許可
◎ 楊芳秀(川合秀子) (東京家裁・昭60(家)6906、61・11・20) 許可

昭和15年生、 日本人の客観的裏付け欠如-総合的判断

◎ 李英順（松本英子）　(東京家裁・昭60(家)361、61・10・21) 許可

昭和9年生、 厚生省−日本軍の傭人朝鮮籍男子の子と推測

◎ 王吉発（吉田健一）　(東京家裁・昭61(家)8498、63、9、21） 許可

(戸口簿) 実子届、 漢族 ◇ 他にも事例多い

◎ (戸口簿) 満州族　(東京家裁・昭63(家)9734、H、2、1、11) 　　 許可
◎ 劉秀媛（林川芳子）　(東京家裁・昭63(家)8859、元、3、14) 許可

中国孤児証明は 「相当信用性の高いものであると認められる」

◎ 長野太郎（孫千）(東京家裁・平3(家)3008、 3・7・19) 　　 許可

拾い子 拾った中国人から養父母へ。 日中両国政府が日本人と認めた残留孤児である

＜拉致・誘拐＞
◎ 楊秀珍（松田英子）　(東京家裁・昭63(家)12828、元、4、25) 　　　許可

拉致孤児(記憶あり、童養娘(きょうだい男7、女2。 兄の嫁にされた) S14,9,16生

　<誘拐>

◎ 瀋素珍(新井素子)(東京家裁・昭61(家)9057、62・8・14) ◎ 李金有(山下有造)(東京家裁・昭61(家)14495、62・8・11)

＜許可入籍証書所持者−就籍許可＞
◎ 王金喜（有田金喜）(東京家裁・平2(家)9184) 公安局説得、養父病気、帰国の当てなく　
◎ 徐素清(成島清子)(東京家裁・平2(家)1812、 2・4・24)
◎ 呉鳳蘭(三杉麗子)(東京家裁・昭60(家)6907、61・12・2) その他

＜血液鑑定＞
◎ 尉世忠(伊藤忠夫) (東京家裁・平6(家)10908、平7・10・20)

第10次訪日調査(昭61・2)、身元判明扱い帰国後、血液鑑定否定。 就籍　

◎ F(女性）(東京家裁・ 平8(家)7456、 平9・11・11 )

第6次訪日調査(昭59・11)兄・妹確認、 平9・7・17血液鑑定-可能性極めて低い。 就籍。

＜孤児(父)死亡・親権者(母)申立＞
◎ 陸安国(及び未成年弟2人）(東京家裁・平7(家)4006〜4008、平7・12・7)　　　　　　　許可

身元未判明孤児(父)帰国後就籍申立中、交通事故で死亡。 成人長男は自ら申立。次男は 親権者(母・前妻)、 三男は親権者(母・後妻)が法定代理人として申立(父離婚)。

＜戦時死亡宣告取消却下→就籍＞
◎　こく殿挙（福井千雄）　(東京家裁昭60(家)69054、昭61・9・4)

第一次訪日調査、両親名乗り出たが確認に至らず。戦時死亡宣告取り消し申し立て却下(宮崎家裁日南支部昭58(家)146)。 就籍許可　

＜戦前中国人の養子＞

☆　林基子(林秀珍)　(東京家裁平7(家)9136、 平9・4・17) (6歳-上海、昭2・4・8日本内地生まれ)
6歳両親と上海、中国人の養子に。中国人と同棲したが[結婚]の儀式なく、日本国籍失わず。

【混血児】

　厚生省の「中国残留孤児」の定義からは外れるが、裁判所は個々のケースについて判断、 し国籍を認めている（帰国、自立定着について国の支援は受けられない)。
　なお、父日本人・母中国人、 父ー日本人女性と重婚、 地域中国本土が多い。
◇　混血児ＹＦ(上海)について、家裁は日本人父と中国人母の婚姻成立せず、地裁は行訴において 成立と判断結論が別れた

◎　就籍却下　(東京家裁八王子支部 昭58(家)3188、昭593188)
◎　国籍確認 （東京地裁民事3 昭60(行ウ)29、昭62・7・29）

◎ （瀋陽→寧夏回族自治区） (東京家裁昭61(家)1082、1083、昭62・4・27) 許可　父日本兵、捕虜となり抑留

戦後中国人母と結婚、本人出生後死亡。父の戸籍判明しないが、中国側証明等により日本人と認定。

◎　却下　　(海南島) (東京家裁昭62(家)10122、昭63・3・28)

婚姻成立前出生、胎児認知又は出生と同時認知なし、　

◎　許可 (東京家裁平元(家)7913 平3・11・28)　

(日本人男が、父であることを認めたが、母とされる中国人との婚姻否認) 少なくとも申立人が日本人であると認められる本件は、父母の確定を不可欠の要件としない

◎　(上海)（東京家裁平9(家)1686、平9・8・21） 亡父の戸籍に就籍許可

[出生届未提出]
◎　却下　(東京家裁昭60(家)2450、昭61・2・13)

（日本人父生存)出生届義務者が積極的でないとしてもこれを理由に就籍を認めることは相当でない(父の届出により入籍可能)

◎ 許可 (東京家裁昭63(家)8852 平元3・8) 正式の婚姻でない -日本人母死亡。 出生届義務者判明しない
◎ 許可 (東京家裁(家)8039、平3・3・14) (遼寧省)　在日母家庭事情から出生届拒否 　　　
◎許可　(東京家裁(家)3238、平5・4・28) (上海) 届出義務者の父が出生届提出を拒否しているのであるから、就籍を許可するのが相当
◎ 許可 (東京家裁平9(家)5537、9・8・14) 身元判明-届出義務者両親死去、就籍手続き必要

【福建省】

◎ 東友雄（陳友雄）　(東京家裁・平8(家)14592、H9・8・5) 許可

「本件の背景-大正年間福建省から華僑多数来日。本人供述日本人確証なし。姉科学的鑑定拒否、知人証言により認定」

◎ 東友鳳（陳友鳳）　(東京家裁・平8(家)14591、H10・5・12) 許可
◎ 藤本相美(陳相美-1929・2・12生） (東京家裁・平9(家)5539、H9・9・10) 　　　 許可

「父カ知レサル場合・・ニ於イテ母カ日本人ナルトキ」 該当。実母日本人(昭11死亡)、中国人養父と昭12福建省に渡る

◎ 松井川玉子(楊玉宋-明治44・10・6生)　(東京家裁・平9(家)5711、H9・9・17) 　　　許可

父不祥、日本人母妊娠中に中国人と結婚、京橋で生まれ、大12関東大震災後福建省に一家移住。母昭22帰国、昭38死亡。
「出生時に母が属した戸籍に入籍させることは諸般の事情を考慮すると適当でない」 「本籍地は母の本籍地」