CABRAMATTA NEIGHBOURHOOD CENTRE
1 カブラマタ・コミュニティ・センターのネットワーク


1.カブラマタ・コミュニティ・センターのプロジェクトの目的
 英語を母語としない移民を対象に生活支援を図る場合には、アドボカシーとケースワークが福祉を充実させるアプローチとなる。特に女性と中年の人々は、英語力不足と自己主張不足が原因で、不利な立場に追いやられがちなので留意しなければならない。まちづくりに際して、すべての要求を満足に叶えることはできない。時には、利用者の突発的な危機を乗り切るために、ケースワーカーが利用者の代理を務めることもある。
 利用者がセンターと関わるきっかけとなるのは、直接サービスを提供するワーカーを通じた場合が多い。コミュニティワーカーにはすばらしいネットワークがあるので、ケースワーカーは必要とあらば利用者を彼等に差し向けることもある。なお、サービスを受けた利用者が、グループや運営委員会のメンバーになることも多い。
 このプロジェクトを推進するにあたって、カブラマタ・コミュニティ・センター(以下「C.C.C.」と略す)を基幹に6センターがネットワークを形成し、事業・活動を展開している。

2.専門スタッフと多言語対応
 C.C.C.がバイリンガル・ケースワーカー・プロジェクトを開始したのは1980年代中頃であった。ワーカーにはセンターに集められた財源から給料が支払われている。バイリンガルワーカーを派遣するサービスは今後もコミュニティのニーズに合わせ増やす予定で、フェアフィールド言語代弁プロジェクトの中には、バイリンガル福祉ワーカー・チーム所属のワーカーもいる。
現在クメール語、ベトナム語のプロジェクト拡大の必要に迫られている。又、東欧からの難民に対応するため、ボスニア人ワーカーが必要となっている。

1)バイリンガル福祉ワーカーの派遣
  アラビア語、スペイン語、中国語、ベトナム語で定期的なケースワーク情報提供、必要に応じて他機関へつなぐサービスを行っている。ペルシャ語、アッシリア語のサービスもニーズが急増している。
 ○アラビア語、スペイン語ワーカーの活動状況
  担当地区で女性のための組織作りに関り情報セッション、英語クラス、自己開発、保健プログラムを支援している。ベトナム出身ワーカーも英語クラスを組織している。
  移民に関するセミナーが、アラビア系オーストラリア人福祉協会とC.C.C.の共催で、移民家族、難民に関するものや人道的プログラムに沿った内容で行われた。また、議会見学、健康デー、就労問題にもアラビア語グループ独自の活動が予定されている。
 ○トルコ語ワーカーの活動状況
  社会保障部と連携して取り組んだ問題に満足のいく結果を得た。
裁判に持ち込まれて相談に来たトルコ人を、ワーカーが人道的立場から支援した例がいくつかある。ワーカーがどうしてよいかわからない場合には、福祉権利センターが助言する。
  一方、カブラマタ社会保障部所属のトルコ語通訳は、フェアフィールドのトルココミュニティの需要に対応しきれていない。コミュニティが増大している現実に対し、通訳の詰め時間が週2時間のみと短すぎるからである。問題を抱えた利用者がセンターを訪れても通訳に会えないことがあり、この事態に利用者は非常に困惑している。バイリンガル福祉ワーカーは、カブラマタ社会保障部のソーシャルワーカーに正直にこの事情を打ち明け、話を公にするようアドバイスを受けた。
  年を追って、戦争と貧困から逃れてくる旧ユーゴスラビア、ブルガリアからのイスラム教徒が増えているが、彼等の60%がトルコ語を話し、内40%は英語を理解する友人や親戚を通訳として連れてくる彼等に対し、住居、食料、衣服、家具の面倒をみる。
  ワーカーが扱った事例として、公立フェアフィールド小学校へ通う子どものケースと精神分裂症の男性のケースを紹介する。子どもには専門の心理学者を紹介し、そのケアのおかげで素晴らしい結果を得た。また、精神分裂症の男性には当事者団体である「精神分裂症の会」を紹介し、彼はその病気を恥じることなく、病気をそのまま受け入れて人生を送ること、障害と見なす必要はないことを学んだ。そして、現在彼はフルタイムの仕事を得て社会に復帰している。これこそが彼に最も必要だったことであり、これを通し彼は自分自身を尊重し、社会で価値があると認識できるようになった。他にも、ことごとく意見が対立していた隣人同士のトラブルを裁判所で解決する等、ワーカーは常に新しい分野に直面するが、移民の生活をほんの少しでも快適にできたらという思いを抱いている。
 ○スペイン語ワーカーの活動状況
  スペイン語新聞やラジオ番組を通し、さまざまな活動への参加を呼び掛けた。反応は非常に良い。また、いろいろなコミュニティの団体に所属するワーカー達と話し合う機会を設けるようにしている。活動資金が不十分なため謝礼を払えない場合に、無料で教えてくれる講師を探すためである。他にもワーカーは、ボニリグにある女性グループの活動を組織化したり、C.C.C.やマウントプリチャード・コミュニティ・センターのコーディネーターが組織した定期的な保育付き活動をしている。スペイン人のコミュニティの人々が自らの道を見いだし、自分に自信をもってくれるよう望んでいるのである。
2)バイリンガル代弁ワーカー
  現在9人の常勤、非常勤のワーカーが当プロジェクト専門にセンターに配置されており、必要な時には通訳として対応できる。なお、ボスニア、ブルガリアからのイスラム教徒の需要が急増しており、トルコ語でのサービスを拡大する必要がある。
  民族問題委員会を中心にフェアフィールド言語支援プロジェクトは、プロジェクトの方向性を変更した。主な変更事項は以下のとおりである。
 ・従来は言語支援に重きが置かれていたが、情報、支援及び代弁サービスを強調する。
 ・利用者は電話でなく直接センターへ出向き、担当者と会い(電話で利用者特有の情報を集約するのは不可能)、個人が置かれている背景や問題を話し合い、必要とあらば専門家の意見を仰ぐ。
 ・プロジェクト用財源の一部は、緊急の場合とサービスが行き渡らない言語グループ用に確保する。
 ・翻訳業務は行わない。
 ・フェアフィールド言語支援プロジェクトは地域に根ざした通訳、翻訳サービスのモデルとして作られた。しかし、他の地域を拠点としたサービスのようには発展しなかった。その理由は、このモデルが、連邦政府のサービスと重なっていたからである。
 ・当プロジェクトは、フェアフィールド地区における通訳、翻訳のニーズに応えることには成功したが、少人数の言語グループの人達にとっては、行政サービスへ繋ぐための地域に実在するニーズが何なのかをぼやけさせる傾向があった。
 ・以前はコストに無駄が多かった。特に代弁サービスは、交通費の出費や待ち時間が多かったが、それらは母語の通訳による利用者との事前打合せで、ほぼ解決された。

3.専門スタッフの養成・研修
1)アドボカシーと書類の書き方
  〔主催〕エッティンガー家族支援センター(NGO)
  申請書等書類の書き方を指導。
2)ワープロトレーニング
  〔主催〕移民援助センター
  ワーカーが6週間のワープロ講座を受講するまで、コーディネーターはワープロの扱い方を教えるが、殆どのバイリンガルワーカーはコンピューターを使用する。
3)コンピュータートレーニング
  〔主催〕移民援助センター、移民雇用促進専門官
4)プロの通訳ワークショッブ
  〔主催〕フェアフィールド援助センター
  現行の通訳サービスが利用しやすいかどうかを検討。
5)プロジェクト再考ワークショッブ
  〔主催〕C.C.C.幹部役員とバイリンガルコーディネーター仕事の開発。
6)アドボカシー資料編集
  〔主催〕C.C.C.幹部役員とバイリンガルコーディネーター
  アドボカシー担当者が作成した統計資料を検討し、当該サービスを利用する際に障害となるものを明確に文章化し、適切な通訳機関に資料を公表する方法を開発。
7)アドボカシーワークショップ(予定)
  〔主催〕エッティンガー家族支援センター
  その他、バイリンガル代弁ワーカーは、バイリンガル福祉ワーカー向けのセミナーやワークショッ
プに参加する。

4.個別サービス
1)特別保育
  カブラマタ地区で週5回、午前中の保育を2名のスタッフで運営。10年を経て、市民センターに専用のスペースが確保されることになり、スタッフは今までのように荷物をその都度片付けなくてもすむようになった。
2)休暇中の保育
  地域の小学校が施設を無料で貸してくれることがなければ、継続できなかった。資金不足が今後の課題である。
3)借家紹介サービス
  西シドニー不動産サービスと共同で移民援助センターのアシスタントコーディネーターとバイリンガル福祉コーディネーターが、C.C.C.の一角で実施している。いずれ専門家からトレーニングを受け、彼らが借家紹介サービスの中心となる見込み。また近い将来、週1回(3−4時間)専用のホットラインも設けられる。

5.情報センター機能
 センターの活動、連邦政府あるいは他機関が提供するサービスに関する情報を活用するために以下のことを行う。
1)統計資料の作成:各ワーカーが持つ利用者の最新情報を統計資料化することで、利用者がサービスを受ける際に障害となるものを明確にし、センターはサービス提供者に対しその旨を伝える。この資料の作成には多くの時間がかかる。
2)広報:各ワーカーは必要な時には地域や民族独自のメディアを通じ、プロジェクト、特に新しいサービスについての広報活動を行う。又、グループの紹介、セミナーや情報宣伝等も必要である。コーディネーターは、他のサービス実践者やネットワークの会合で、自分達のサービスを継続的に紹介する。
3)ワーカー同士の情報の共有と相互支援。
4)バイリンガルワーカー個人専用の整理棚の設置。
5)ワーカーが利用しやすいように情報のマニュアル、パンフレット類を整備する。
6)幹部役員とバイリンガルコーディネーターとの定期的で非公式な会合。
7)上記2名に、バイリンガルワーカーを交えた会合を隔月に開く。


6.行政及び関係機関・団体との連携〜ネットワークとコミュニティへの参加〜
 ワーカーの中にはフェアフィールド移民・難民女性ネットワーク等の運営委員会やネットワーク委員会に属している者もいる。フェアフィールド移民・難民女性ネットワークのメンバーの4人は難民週間の式典で英語を話せない女性達のためにワークショップの手助けをした。バイリンガルワーカーは、C.C.C.のメンバーと共に、各コミュニティの活動が円滑に運ばれるように力を貸すことが多い。
現在、コーディネーターはフェアフィールド移民・難民女性ネットワークとオーストラリア国家諮問委員会に積極的に関わっている。連邦規模の委員会と違い州規模の委員会は、難民女性と彼等と共に草の根レベルで働くワーカーで成り立っている。
 オーストラリア国家諮問委員会はオーストラリア難民協議会の一部で、12月に予定されている難民定住会議にワークショップを開いたり資料を配布したりして、積極的に参加するよう呼びかけている。

7.運営等
1)計画
  コーディネーターは定期的に理事と会い、プロジェクトやサービスが必要な地域に行き届いているか、
さまざまな視点から検討し、それを基にレポート、提案や予算案の作成をする。
2)監督と支援
  定期的なミーティングやスタッフの評価は各ワーカー、あるいは同じプロジェクトの仲間で行われ、新しいスタッフに対しては随時サポートしていく。コーディネーター同士もサポートし合う。
3)運営委員等の仕事
  コーディネーターはワーカーのためにスペースの確保、事務用品の補充や道具の注文を行う。また運営委員は次頁のように構成されている。

8.財源
 昨年は、民族問題委員会からバイリンガルワーカーに対する資金援助がカットされたが、今年はフェアフィールド言語支援プロジェクトから派遣されたアドボカシーワーカーに対し、資金援助されることを望んでいる。
 なお、地域サービス局がパートタイムのコーディネーターの派遣プロジェクトの資金援助再開を申し出てくれたおかげで、運営が非常に円滑に運べることになった。

ス タ ッ フ
財  源
代表・コーディネーター
経理職員
庶務担当職員(非常勤)
事務局長
地域サービス局(行政)
C.C.C.
C.C.C.
西シドニー援助機構


事  業  費
財  源
特別保育
休暇中の保育
フェアフィールド言語支援プロジェクトバ
イリンガル福祉ワーカー派遣プロジェクト
地域サービス局(行政)
地域サービス局(行政)
民族問題委員会(NGO)
地域サービス局(行政)


運営委員会メンバー数


1.カブラマタ・コミュニティ・センター(C.C.C.)7名
                    (男性3名女性4名)
2.フェアフィールド移民援助センター(FMRC)7名
                   (男性1名女性6名)
3カラマー・コミュニティ・センター  6名
                   (男性2名女性4名)
4.マウント・プリチャード並びに │
 カブラマタ西コミュニティセンター 5名(男性2名女性3名)
5.女性のシェルター(ロータスハウス)5名(男性2名女性3名)
6.チリ人協会  4名(男性2名女性2名)
7.ニカラグア・コミュニティ協会 5名(男性2名女性3名)
8.青少年のためのサービス  10名(男性6名女性4名)
9.フェアフィールド住宅改造および営繕サービス 6名
                 (男性3名女性3名)

    *  運営委員会メンバーは、各センター、協会、サービスの運営に携わるが、スタッフとしても働き、直
       接サービスを提供する。
    ** 運営委員会メンバーは男性、女性の両者で構成される。それはニーズを保有する側の性や価値
       観によって相談しやすい相手、しにくい相手があることの配慮のあらわれでもある。