中国・サハリン帰国者教育の相互支援ネットワーク

2014年3月27日号

編集・制作:中国帰国者定着促進センター
          教務部講師会
発行者:中国帰国者定着促進センター

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◎目次――――――――――――――――――――――――――――――――
研修会報告
 ・さぽうと21「日本語教室ボランティア パワーアップ講座〜理解を深める講座編〜」
 ・厚労省主催「中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム」
とん・とんインフォメーション
 ・「各地の中国帰国者のための墓地一覧A」情報更新
 ・「高等学校等就学支援金(新制度)」7か国語翻訳
 ・斉藤さと志さん(ニュース記事から)
 ・お知らせ
       九州中国帰国者支援・交流センター移転/人事異動/切り絵公開
遠隔学習インフォメーション
 ・上期「募集要項」ができました。−新コース「日本語能力試験N2対策コース」2月開講!

研修会報告

さぽうと21

「日本語教室ボランティア パワーアップ講座〜理解を深める講座編〜」


 日本に定住する難民や中国帰国者、日系人等支援の<社会福祉法人さぽうと21>による標題の講座が去る1月26日と3月1日に開かれました。概要をご報告します。
 この講座は、文化庁の委託事業として「生活者としての外国人」について理解を深め、「地域日本語教室」をより広い視点からとらえ直すことを目指したもので、受講者は<さぽうと21>他で外国人を支援している人。
 「日本語教育の今、そしてこれから」と題された1回目、第一部の嶋田和子さん(アクラス日本語教育研究所代表理事)の講演は、長年にわたる日本語学校の運営経験から、日本語教育の変遷と日本人側の意識改革が求められることなどを説かれました。第二部は嶋田さんを進行役として、外国人母子の学習支援に携わってこられた蛯ネな枝さん(埼玉・地球っ子クラブ2000代表)、自治体で多文化共生を推進してこられた林光洋さん(長野県駒ヶ根市)と安場(中国帰国者定着促進センター)によるパネルディスカッションでした。
 特に自治体職員の方がこのような場に出てこられることは大変珍しいこともあり、また駒ヶ根市の試みも興味をそそるもので、林さんに質問が集中しました。駒ヶ根市は元々青年海外協力隊の合宿所があることから「国際」を語ることには慣れた土地柄でしたが、近年増えた日系人住民とは接点があまりなく、互いに無関心だったそうです。そんな中、自身協力隊OBである林さんが推進力を発揮し、日本語教室の受講者減の打開策を考えるところから、日本語学習支援をシステム化し、地域住民を巻き込んでいく方向に市を挙げて動いていったのです。<地球っ子クラブ2000>でも試行錯誤の結果、母と子が分かれて日本語や学科を学ぶ場だけでなく、共に学ぶ場を設けるようになったとのこと。共に学ぶ場で母が本領を発揮する姿を見て、母に対する子の評価が肯定的に転じたケースが紹介されました。どちらも現場の試行錯誤の中からよりよい方向に変わっていくことができた柔軟さを感じさせられました。安場からは帰国者のライフコース毎の課題と支援状況について紹介しました。
 2回目のテーマは「多文化共生社会日本の今、そしてこれから」。第一部では、日本の多文化化の生き証人的存在である田村太郎さん(NPO多文化共生センター大阪代表理事)が日本の現状と多文化社会としてのあるべき姿を説かれました。第二部では、小学生の時に来日した中国帰国者二世である佐々木春海さん(所沢センター修了生、寿楽デイサービス管理者)、ネパールからの元留学生で日本初のネパール語新聞社とネパール人学校を経営されているブパール・マン・シュレスタさん(エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン)、ベトナム難民二世で日本生まれ、無国籍のグェンティ・ホンハウさん(NHKエンタープライズ)の3名によるパネルディスカッションでした。
 佐々木さんは帰国者一世を対象とするデイサービス事業を立ち上げており(詳細はNL56号と本号の地域情報ア・ラ・カルト「デイサービス「寿楽」の挑戦(上・下)」参照)、いじめられた小学校時代からバイトとバイクに明け暮れた高校時代を経てベンチャー企業家としての20〜30代、そして現在に至るまでを、ハウさんは無国籍者としてNHKに取材された番組の一部分を示しながら、難民一世の労苦と無国籍として生きる自身について、ブパールさんは生い立ちやネパールの国勢、ネパール人学校設立の経緯と現状を語ってくれました。多様な背景を持つ3名の語りに、当事者が語ることの意義の大きさを思いました。中でもハウさんの、何人(なにじん)かと問われることへの反発と自己肯定の言葉は重みがありました。
 当事者からの発信の意義、そしてこのような講座を企画された<さぽうと21>の懐の深さを実感した2日間でした。(an)


厚労省主催「中国残留邦人等※1 への理解を深めるシンポジウム」


 平成26年2月8日(土)、宮城県仙台市で上記シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは厚生労働省主催で、毎年1回全国の主要都市で行われています。
 この日は46年ぶりの大雪でしたが、中国帰国者等※2 を含む約400名が太白区文化センター「楽楽楽ホール」に集まりました。日本語を中国語にする同時通訳のレシーバー・サービスが本年も行われました。
  終戦前後の混乱のなか、日本への帰国が不可能で中国や樺太に残された残留邦人たちが、その後、何とか帰国しても言葉や生活習慣の違いや高齢化のために様々な困難を抱えてきたこと、その生き様を帰国者自身が語り、地域住民の方々に聞いていただき、理解をより深めていくことがシンポジウムの目的です。

 厚労省より満額の老齢基礎年金や支援給付が行われることや本年10月1日からは新たに配偶者支援金の支給が開始されることが会の冒頭に説明されました。
 仙台シニア劇団「まんざら」による演劇『「花いちもんめ」―ある母親から明かされる歴史の真実―』は戦後の混乱の中の孤児と母親の苦悩と絆をテーマにしたものでした。会場の中に当時の辛い出来事を思い出し、劇の途中で涙ぐむ方々もいました。
 演劇の後、毎日新聞社の岸井成格特別編集委員と岩手、宮城、山形県に暮らす4名の中国帰国者のパネルディスカッションが行われました。
 帰国者が仕事に必要な資格を取得しても、日本語が十分に話せないことで仕事を手放さなければならなかったこと。また、90歳の母の介護のために60歳で仕事を辞め、その後、再就職しようとしたが至らず、現在は帰国者センターで日本語の勉強をしながら日々過ごしている等、様々な体験が具体的に語られました。
 「どこへ行っても外国人扱いで差別を受けなければならない」「帰国者それぞれに合った就業訓練が大切」だと訴えた方もいました。

 戦後68年が経ち、帰国者たちの過酷な体験も歳月と共に忘れられてしまいがちですが、帰国者が祖国日本でより自分らしく生きていくために、語りを地域の方々に直接、聞いていただくことが大切なのだと実感しました。 (BK)

※1 「中国残留邦人等」は中国残留日本人孤児、残留婦人、サハリン残留邦人を指す。
※2 「帰国者」は永住帰国した残留邦人。来日した帰国者の家族も含めて言う場合もある。
                                                                      

とん・とんインフォメーション

中国帰国者支援・交流センター情報誌 「天天好日」第65号より

http://www.sien-center.or.jp/magazine/all.html

「各地の中国帰国者のための墓地一覧A」情報更新

 埼玉県と愛媛県から、共同墓地などの支援の申し出があったので紹介します。対象者の居住地制限はありませんが、支援給付や生活保護等、自治体からの支援を受けている場合は、自治体と相談の上、自治体の担当者を通しての連絡をおすすめします。また、問い合わせ先での対応は、日本語になります。
●埼玉県「第二武蔵野霊園 白峯墓地」
 埼玉県入間郡毛呂山町[東武越生線武州長瀬駅下車]
 電話・FAX:049-295-6956  定休日:水・木曜日
●愛媛県「繁栄寺」
 愛媛県西予市宇和町[予讃線伊予石城駅下車]
 電話:0894-62-9500

これで帰国者のためのお墓は全国9都県12ヶ所になります。
各地の帰国者墓地一覧の詳細は支援・交流センターのホームページをご覧ください。
http://www.sien-center.or.jp/consultation/life/haka24.pdf


「高等学校等就学支援金(新制度)」7か国語翻訳

 平成26年4月からの「高等学校等就学支援金(新制度)」について、文科省のHPで日本語の他、7か国語(英・中・スペイン・ポルトガル・韓・ベトナム・タガログ)の説明を見ることができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/detail/1342886.htm

 以下のサイトからは、神奈川県教育委員会財務課&ME-netで作成した「授業料について」「申請書の記入例」等の多言語版(上記言語のほかタイ、ラオス、カンボジア語)が見られます。
NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ http://tabunka.justhpbs.jp/index5.html


中国帰国者のお母さん 斉藤さと志さんを悼む/長野 (ニュース記事から)

 2013年11月27日死去。87歳。1944年に大陸の花嫁として中国東北部(旧満州)へ。終戦後も中国での残留を余儀なくされたが、79年に永住帰国。国の中国残留孤児の集団訪日調査(81〜99年)では、全30回に援護員として参加し、孤児と家族との橋渡し役となった。その後自立指導員となり木曾を中心に帰国者家族の支援に尽力した。亡くなった前日も通訳業務で松本を訪れており、昼食時に倒れて帰らぬ人となった。


お知らせ

○九州中国帰国者支援・交流センター移転(平成25年9月より)

 【新住所】 〒810-0041 福岡市中央区大名2丁目6番39号 ランディックビル大名6・7F  ※連絡先は変わらず


○人事異動:中国帰国者定着促進センター所長 

 退任 柿原 洋二 氏(3月31 日付)  就任 佐藤 恵美子 氏(4月1日付)


○切り絵公開

 当センターの遠隔課程の受講生でもある兵庫県の張雨均さんの作品(切り絵・書道)を当センターホームページで紹介しています。
http://www.kikokusha-center.or.jp/sonota/motto/tenrankai/sakuhin/newchousan/chousankirietou.html

 

遠隔学習インフォメーション

上期「募集要項」ができました。帰国者の皆さんにお薦めください!
−新コース「日本語能力試験N2対策コース」2月開講!−

 中国帰国者向け「遠隔学習課程」の上期の募集要項ができました。4月の上旬に帰国者の方々にお送りしました。サハリン帰国者向けの募集要項は、昨年12月にお送りしています。帰国者の中には、届いた募集要項に気付かない方や、送られていない方もいると思いますので、是非、支援者の皆様方から「いつでも・どこでも」無料で学習できる「日本語遠隔学習課程」を、帰国者の皆さんにお薦めください。
 さて、2月に開講しました「日本語能力試験N2対策コース」は、既に100名ほど受講者がいます。年代は、若い層が多いですが20代から70代までいます。受講動機は、自分の日本語の力を確かめたいという方、資格取得を目指す方、もっと上の日本語力を付けたいという方、いろいろのようです。本コースのテキストの特徴は、「試験」という形に不慣れな方が、問題形式や学習のコツなどをスモールステップで中国語で学べ、「試験」への敷居が低くなるように工夫をしているところです。「挑戦して見たいけど試験は苦手だなあ」という帰国者の方にお薦めです。
 12年前に所沢センターを修了した1世のAさんは、「遠隔学習課程」を受講し、そのコース修了時にこのように述べています。「10年前、センターでの勉強と生活はとても楽しかった。4か月勉強したが、何もできなかったし、何もわからなかった。10年前に勉強したたくさんの知識が、今になって初めて理解できるなんて、本当に笑ってしまう。私はやっぱりまず実践して、それから理論的に勉強するのがいいと思う。勉強して10年になったけれど、日本の友人の話が分からない。日本の友人は十数年中国語を勉強しているが、私の日本語はまだ彼らにもわからない。外国語の勉強はなぜこんなに難しいのか。」この言葉は、まさに生活者として日本語を学ぶ人の言葉だと思います。帰国時は50代半ばだったAさんにとって、日本語の学習はまだまだ続きそうです。そうであるならば、高齢化する帰国者には、少しでも楽に、楽しく学べるような環境を作っていきたいと思います。1世世代には特に、「いつでも・どこでも」に「のんびりと」を加え、応援していきたいものです。

お知らせ

★web版『同声・同気』は、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお送りください。
宛先:tongtong@kikokusha-center.or.jp
(お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689)