HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第45号(2009年5月25日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
  北海道中国帰国者支援・交流センター
  中学校:日本語学級の現場から

行政・施策
 厚生労働省から
  平成21年度中国残留邦人対策関係予算の概要
文部科学省から
 定住外国人の子どもに対する緊急支援について
援護基金からお知らせ

研修会情報
 研修会情報 外国人児童生徒教育フォーラム

教材・教育資料
 『介護の言葉と漢字ハンドブック≪インドネシア語版≫』
 Web版『リソース型生活日本語』目次翻訳9カ国語
 『外国人母親のための子育て日本語表現』ダウンロード可に
とん・とんインフォメーション
 ドラマ『遥かなる絆』著者インタビューHPに掲載
「嗚呼 満蒙開拓団」(羽田澄子監督)劇場公開
『孤児に寄り添い25年 財団法人中国残留孤児援護基金25年史』
外国人等の就労/就労に向けての日本語学習等に関わる情報
《 2009年度の進路ガイダンス 》各地の情報
『移民環流』

ニュース記事から 2009.01.11〜2009.05.10

遠隔学習インフォメーション
 応募者状況
 様々な学習スタイル
 “完走”体験談
 
事例紹介 翻訳を仕事として

地域情報ア・ラ・カルト

北海道中国帰国者支援・交流センター

 北海道中国帰国者支援・交流センターは2007年8月に開所しましたので、今年で3年目(実質1年半)を迎えました。当センターは他センターと違い、樺太(サハリン)等帰国者の方も通学しており、日本語習得の現状はそれぞれの能力・年代等により大きく異なっております。
開所当時は、少しでも多くの帰国者に通学してほしいという想いから、色々なコースを設定し、制限をしなかったため、当初の目的は達成できたのですが、反面、仲間同士で幾つも受講したり、都合の良い時間帯ということでの受講を容認したことから、新規希望者が受講できなかったり、クラス内で大きくレベル差が生じるなど、様々な問題点が浮き彫りになりました。
このため、色々検討し試行錯誤の中、4月から新たな日本語学習コースを開講しましたので、その内容と取り組みの経過等について報告させていただきます。
昨年、後期の開講に当たり講師会(毎月、定期的開催)において、各クラスの学習実態の把握と現状における問題点の把握について提案があったことから、@各クラスの学習状況と使用教材等に基づいたカリキュラムの作成 A受講生全員の習熟度の評価の実施、その結果を踏まえて21年度4月からの開講に反映させることになりました。
評価の方法や基準等について何度も議論を重ね、5段階成績表により12月までには全員の評価を終えました。
 一方コース設定に当たっては、検討の結果、従来の細切れコースから習熟度に合わせて総合的に学習する基礎と専門の2コースとしました。中国受講者の場合、文法文型、生活会話、作文・読解など14コースあったものを基礎(初級T、初級U、初級V、中級T)と専門(医療、働く人のための日本語、子どものための中国語、日本語能力試験対策)の2つに大きくくくったのです。また、少しでも多くの帰国者に通学してもらえるように、原則として基礎と専門各1コースに受講を制限をしました。
次に受講生に対しては、来期も継続して通学可能かどうか、通学可能な曜日、時間帯、学習ニーズ等についての意向確認調査を行い、その内容を考慮しながらコース分けをしました。
なお、基礎コースの日本語初級Tクラスについては帰国者1世を対象にし、帰国者同士の交流や情報交換の場として昨年同様週2回としました。
また、子どものための中国語クラスについては、開所当初から要望があったもので、1年間の学習結果を見ると、途中で脱落する子も余りなく、中国語での日常会話や簡単な読み書きができるようになったと親からも喜ばれています。
パソコンコースでは、「自立を目指す障害者」の支援活動を行っているNPO法人に引き続き講師派遣をお願いしていますが、色々と工夫した授業を行っているお陰で、ほとんどの受講者が継続して学習しています。
4月からの開講のため、今のところ受講者から特に苦情や不満もありませんが、これからも帰国者と一緒に考えながら、帰国者のニーズに答えることができる支援に努めたいと思っています。
(教務主任:松本可奈子)

写真1 《子どものための中国語コース》    写真2 《パソコンコース》授業風景
      授業風景

中学校:日本語学級の現場から―李白「静夜詩」の謎―

李白の「静夜詩」という詩をご存知でしょうか。今回はこの詩にまつわるニュースを紹介します。
東京のある中学校で、中国出身の中学生が、国語の資料集に載っている詩が、自分が中国の小学校で習った詩と違うことに気づき、日本語学級の先生に言ってきたそうです。中国の詩は「床前明月光 疑是地上霜 挙頭望明月 低頭思故郷」であり、国語の資料集にあった詩は「牀前看月光 疑是地上霜 挙頭望山月 低頭思故郷」で、下線の二文字が違っています。
この学校には日本語学級があり中国出身の生徒が他にも何人かいました。そこで、手分けして国語の資料集の出版社に問い合わせてみたところ、日本で採用している詩は間違いではないが、なぜ中国の詩と違うのかわからない、とのことでした。さらに、中国のサイトを調べたりした結果わかったのが、日本の教科書に載っている詩がおそらく李白のオリジナルであると思われ、中国で現在採用されている詩は後代にいくつかの改作を経てその後定着したものであるという事実でした。
この調査結果を、夏休みに他校から日本語学級に通級している生徒たちも加わって7人で模造紙にまとめ、10月に区の表現コンクールに出品したところ、見事入賞したそうです。来日して日が浅い生徒は日中の詩を模造紙に書き、日本語力が高い生徒は中国語のネットの情報を日本語に要約してまとめ、中国語力が高い生徒は中国の大学の先生への問い合わせの手紙を書き、題字は美術が得意な生徒が書く、それぞれの生徒が、自分にできること・得意なことを分担し、協力し合って(みんなで調べたり、議論したり、ぶつかったりして)一つの作品を仕上げたのです。
さてその後、この生徒たちの活動を取材した記事が1月26日に共同通信から国内・海外に配信され、このニュースは世界中に!広がります。日本のサイトは、概ね好意的な受けとめ方でしたが、中国のサイトには無責任な誹謗中傷もあったそうです。中国の人たちにとっては、今まで学校で教えられてきた李白の詩が改作だったという報道を心情的に受け入れられないのは当然のことかもしれませんが、生徒たちには予想外の大きな波紋でした。中国ではこの日本からの報道は関心を呼び、ネット上では「明月之争」が展開され、ラジオ番組で特集が組まれ、テレビ番組にも取り上げられました。
今回のこの一連の出来事は彼らにとっても大変貴重な経験だったと思いますが、我々にとっても大変うれしく、取り組みの参考になるものです。
最初の気づきは日本の学校で学ぶ中国の生徒だからこそのものであり、それを追究した生徒たちの姿勢は本当に素晴らしいと思います。そして、そのきっかけを見逃さず、生徒たちを励まして発表にこぎつけるまで辛抱強く見守った日本語学級の先生の存在もとても大きいと思います。きっかけがあっても、それが生かせるかどうかは周囲の対応次第であり、その対応は実は大変難しい。今回は、本人たちの力と先生の支援がうまくかみ合って、このように素晴らしい実践につながったのでしょう。また、李白の詩の日中の違いは、実は研究者の間では知られた事実ですが、学者の研究は新聞記事にならず、一般の人には知られていませんでした。中国から日本に来た中学生の調査だったからこそ新聞にも取り上げられ、中国の一般の人々にも知らせることができたのです。
日本語学級の担任の先生のことばですが、この取り組みは、「日本に来て自分は何もできなくなってしまったと思っている生徒たちに、そうではない、君たちはいろんな力をもっている。その力を発揮しようよ、との励ましになる」。本当にその通りだと思います。しかし、中国のネットやメディアでの扱いは、生徒たちの意図や願いを超えて、ともすると「日本対中国」のような取り上げ方になっていました。生徒たちは「どちらも私達の中国の大切な財産だから、両方知ってほしい」という自分たちの真意を伝えようと、春休みに集まって、4月に新華社に手紙を送ったそうです。皆さんも中国のネットでその後をさらに追っていただければと思います。
(所沢:小川)

研修会情報

10月3日(土)外国人児童生徒教育フォーラム 於:中野サンプラザ
東京学芸大学国際教育センターHP参照 http://crie.u-gakugei.ac.jp/

行政・施策

 ☆厚生労働省から

平成21年度中国残留邦人対策関係予算の概要
【20年度予算額】 【21年度予算額】
11,145百万円 → 11,113百万円
(※職業安定局及び職業能力開発局計上分含む
 11,251百万円 → 11,204百万円)
「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」に基づき、老齢基礎年金を補完する支援給付の実施、地域における支援ネットワークづくりなどの中国残留邦人等への支援策を着実に実施する。

1.中国残留邦人等に対する生活支援
 9,939百万円 → 9,950百万円
(1)中国残留邦人等に対する支援給付の実施
 9,116百万円 → 9,163百万円
老齢基礎年金を満額受給してもなお生活の安定が十分に図れない中国残留邦人等に対して、支援給付を実施するとともに、その実施機関に「支援・相談員」を配置するための所要経費を計上し、着実な実施を図る。

(2)地域社会における生活支援の実施 
 562百万円 → 562百万円
中国残留邦人等が地域において生き生きと暮らすことができるよう、地域住民との交流を図る場を提供するとともに、身近な地域で日本語を学べる場を提供する。

(3)老齢基礎年金満額支給のための保険料の追納   208百万円 → 192百万円
中国残留邦人等の老後の生活の安定を図るため、老齢基礎年金の満額支給を行うために必要な年金保険料を全額国庫負担で追納する。

2.2世・3世に対する就労支援(※職業安定
  局及び職業能力開発局計上分)
 106百万円 → 91百万円
2世・3世の就労による自立を図るため、ハローワークにおけるきめ細かな職業相談・職業紹介や試行雇用の実施等の就労支援を促進する。

3.その他(身元調査、帰国受入援護、定着自
  立援護) 1,206百万円 → 1,163百万円

お知らせ
◆ 神奈川県中国帰国者自立研修センター 閉所:2009年3月31日
→「神奈川県中国帰国者定住サポートの会」として今後も支援活動を継続
◆ 千葉県中国帰国者自立研修センター 閉所:2009年3月31日
→ 同じ名称で今後も支援活動を継続

☆文部科学省から

「定住外国人の子どもに対する緊急支援について」

昨今の景気後退を背景に、日系ブラジル人等の定住外国人の雇用状況が厳しくなっており、ブラジル人学校等に通学しているこれらの者の子どもの就学が困難になりつつあることが懸念されています。
 このような状況を踏まえ、文部科学省では、本年1月30日に、平成20年度中に講ずべき施策を中心に取りまとめた「定住外国人の子どもに対する緊急支援〜定住外国人子ども緊急支援プラン〜」(※) を、また、3月27日に、平成21年度以降に講ずべき施策を中心に取りまとめた「定住外国人の子どもに対する緊急支援(第2次)〜定住外国人子ども緊急支援プラン〜」(※) を公表し、各都道府県・指定都市教育委員会教育長等宛に通知を出しました。
通知のおおまかな内容は以下の通りです。
1 定住外国人の子どもの公立小学校・中学校等(以下「学校」という)への円滑な受入れについて
(1)外国人児童生徒を受け入れる学校においては、外国人児童生徒のための日本語指導教室等を設けるなどして、日本語指導や適応指導を適切に行うこと
(2)外国人学校を退学するなどにより不就学となった外国人の子どもの学校への受入れを促進するため、本人や保護者の希望に応じ、当該学校内に置かれている日本語指導教室等において、体験的に受け入れるなどして一時的に在籍させるとともに、本人の当該教室への在籍期間や本人、保護者の希望を踏まえ、適切な時期に正式に入学させるような取扱いを講じること
(3)学校においては、外国人の子どもの受入れに際し、年齢相当の学年への受入れに限らず、一時的又は正式に下学年への入学を認める取扱いとすることが可能であることから、外国人の子どもの学力や日本語能力等を適宜判断し、必要に応じこのような取扱いを講じること
2 不登校の外国人児童生徒への対応について
(1)学校に在籍する外国人児童生徒が学校不適応を起こして、不登校となっている場合、教育支援センター(適応指導教室)の実情に応じて受け入れることを検討すること
(2)学校教育法施行規則第56条、第79条に基づき、当該児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施することを検討すること
 なお、上記のプランについての詳細は、下記URLをご参照ください。
※ 「定住外国人の子どもに対する緊急支援 〜定住外国人子ども緊急支援プラン〜」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/01/__icsFiles/afieldfile/2009/02/02/1234694_1.pdf
※ 「定住外国人の子どもに対する緊急支援(第2次)〜定住外国人子ども緊急支援プラン〜」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/03/1259580.htm  
(文部科学省国際教育課)

☆援護基金からお知らせ

中国帰国者定着促進センター所長
 退任 平野 幸生 氏 (3月31日)
 就任 小林 佑一郎 氏 (4月1日)
    (前支援・交流センター所長)
 中国帰国者支援・交流センター所長
 就任 柿原 洋二 氏 (4月1日)

★本年3月『孤児に寄り添い25年・財団法人中国残留孤児援護基金25年史』を発刊しました。(詳しくは本紙7頁の紹介記事をご覧ください。)

教材・教育資料

『介(かい)護(ご)の言(こと)葉(ば)と漢(かん)字(じ)ハンドブック      ≪インドネシア語版≫』
2008年12月,日本語指導グループ“Y”著,(社)国際厚生事業団発行,A5判341頁,2100円(本体2000円)
 日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、介護福祉士候補者や看護師候補者が来日するなど、介護、看護の現場で働こうとする外国人が増えています。そうした中、横浜を中心に活動している上記グループの教師と介護現場の人たちによって、非漢字圏外国人のための漢字語を中心とした「介護用語集」が刊行されました。施設・用品、献立表、日誌や書類、人の体や症状の言葉など、現場で目にする言葉や用語が場面別に、約2200語(単漢字数は429字)収録されています。※今年5月には「英語版」も刊行されました。これはどの書店でも注文できます。連絡先:にほんご書店そうがく社(03-3219-2511)

『外国人母親のための子育て日本語表現』がダウンロードできるようになりました!http://www5c.biglobe.ne.jp/~japonica/
本紙42号(8頁)で紹介した特定非営利活動法人〈ヤマガタヤポニカ〉作成の教材が、同法人のホームページからダウンロードできます。

Web版『リソース型生活日本語』目次翻訳9カ国語 公開!
http://www.ajalt.org/resource/ 
(社)国際日本語普及協会(AJALT)
   ホームページ

オンライン教材素材『リソース型生活日本語』※(2001年公開)の目次として、2003年に、日本語の他9カ国語(ベトナム語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、英語、ミャンマー語、カンボジア語、ペルシャ語)に翻訳された製本版が出版されました。2008年には、この目次翻訳のWeb版が公開され、上記URLから無料でダウンロードできるようになりました。これを用いれば、学習者の母語で173の項目から学習したいことを探すことができます。
※『リソース型生活日本語』は、AJALTがインターネット上で公開している教材で、利用する場合には事前の登録が必要です。(上記URL参照) 内容については本紙19号でも紹介していますが、生活する上で必要な行動場面における学習項目、語彙や表現などが整理されています。(日本語版のみ) オンライン上の教材なので、学習したい項目が、目次から検索できる他、キーワード、文型、機能/技能 からも簡単に検索できます。

とん・とんインフォメーション

★本紙先号でも紹介した城戸久枝原作の
NHK土曜ドラマ、『遥かなる絆』が好評放映中です。放映に先立って行われた、(財)残留孤児援護基金中澤常務による著者インタビューを当センターHPに掲載しましたのでご覧ください。

「嗚呼 満蒙開拓団」(羽田澄子監督)劇場公開のお知らせ!
昨年10月に《東京国際女性映画祭》で上映された上記映画が、東京の岩波ホールで6月13日から7月31日まで上映されます。この作品は、満蒙開拓団の悲劇と中国東北地区にある方正地区日本人公墓を取り上げたドキュメンタリーで、なぜ多くの日本人が中国に開拓民として渡ったのか、なぜ5千人もの人が帰国を果たすことなくこの方正の地に眠っているのかを、残留婦人や残留孤児の証言を通して描き出しています。問い合わせは岩波ホールまで。(03-3262-5252)

孤児に寄り添い25年 
財団法人中国残留孤児援護基金25年史

2009年、(財)中国残留孤児援護基金25年史編集委員会著・編、
同財団発行、A4判270頁、2,000円(税込)

 昭和58(1983)年に(財)中国残留孤児援護基金(以下、援護基金)が設立され、昨年で四半世紀となります。25年という節目を迎えるにあたり、これまでの活動をまとめた一冊が刊行されました。中国において残留孤児、残留婦人が発生した歴史的経緯、援護基金設立までの流れ、そして設立後のあゆみ、各事業の総括等が、豊富なカラー写真や統計資料とともにまとめられています。行政の対応と援護基金の取り組みの詳細が平易な文体で綴られており、中国帰国者に対する援護の記録として大変価値あるものとなっています。

【目次と内容】
序章 援護基金設立までの動き
第1章 中国残留孤児援護基金25年の流れ
第2章 事業別実施状況:養父母への扶養費送金事業、当センターや中国帰国者支援・交流センター(首都圏センター)運営事業、就学援助事業等々
第3章 財務状況:寄付金の募集状況とその運用等の報告
第4章 資料:レポート※の他に、各種規定等、事業実績を示す各種統計、年表、等々
※「定着促進センターから展望した日本語・日本事情教育」/「支援・交流センターの〈交流事業〉に託された役割を見つめて」/「アンケート調査にみる適応状況」
【注文方法】
援護基金へ直接連絡、または、援護基金HP( http://www.engokikin.or.jp/ )の「出版物」ページの注文用ファイルに記入の上、メールまたは郵送で注文することができます。
★連絡先:Tel:03-3501-1050 Fax:03-3501-1026 kyouzai@engokikin.or.jp

長びく経済不況は、日系ブラジル人を初めとする定住外国人の生活に深刻な打撃を与えています。今号では、外国人等の就労/就労に向けての日本語学習 等に関わる情報のサイトを紹介します。

◆ 定住外国人施策ポータルサイト(内閣府)http://www8.cao.go.jp/teiju-portal/jpn/index.html
このサイトは、外国人が日本に定住する際に必要となる教育・雇用・住宅・子育て・医療・年金・生活支援といった基礎的な生活情報や、各省庁が展開しつつある定住外国人のための支援策などを、日本語のほか英語・ポルトガル語・スペイン語で紹介しています。また、定住外国人にかかわる諸機関や各自治体(都道府県・政令指定都市・外国人集住都市)のサイトへのリンクもあります。

◆ 外国人雇用対策(厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin.html
ここでは、緊急雇用対策の一環としての日系人就労準備研修事業や、通訳を配置しているハローワークの一覧など、外国人雇用に関する報道発表資料やパンフレット類をまとめています。基本的には日本語ですが、案内情報の一部はポルトガル語やスペイン語にも翻訳されています。

◆ 就労希望者のための日本語教育 ((社)日本語教育学会 )
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/nkg/resource/shurounihongo_resource.htm
同学会では、サイト内に「就労希望者のための日本語教育リソースセンター」を立ち上げ、就労を希望する外国人向けのコース作りや教材作りに役立ちそうな情報を集約しています。「目次(1)

市販されている教材情報と検索」部分に、全国のボランティア教室等が検索できるサイト、教材検索のサイト、働く人に向けた総合教材※を紹介しているサイト、オンラインで教材が閲覧・ダウンロードできるサイト等がリストアップされています。

※当センターの教材『求職会話1・2』(「就職対応」コース)、『面接のやりとり』(職業訓練校入校準備のコース)もここで紹介されています。
 
◆ 多言語生活情報( (財)自治体国際化協会 )http://www.clair.or.jp/tagengo
このサイトは、外国人が日本で生活するための情報を、「在留資格」、「労働と研修」等、17分野に区分して詳しく紹介しています。(本紙40号で紹介) 日本語のほか、12言語対応。

◆ 定住外国人の子どもに対する緊急支援については本紙5頁「文部科学省から」をご覧ください。
………………………………………………………………………………………………
当センターが運営する遠隔学習課程(通信教育)でも、昨年度は就労に関連する「運転免許学科試験対応コース」と「就職対応コース」の受講生が前の年度に比べ大幅に増えました。運転免許
コースは約2倍、就職コースは約4倍にものぼり、帰国者2・3世が雇用情勢悪化の影響をまともに受けている状況がうかがえます。

《 2009年度の進路ガイダンス 》各地の情報
【東京】
○広尾(会場詳細は未定)
@ 7月5日(日) A 10月4日(日・予定)
《NPO法人多文化共生センター東京》
TEL・FAX:03-3801-7127 E-mail:tokyo@tabunka.jp
○武蔵野 7月12日(日)スイングビル(武蔵境)
《武蔵野市国際交流協会(MIA)》TEL:0422-36-4511
FAX:0422-36-4513  e-mail:mia@coral.ocn.ne.jp
○新宿 6月21日(日)しんじゅく多文化共生プラザ
《(財)新宿区生涯学習財団》 TEL:03-3232-5121 【神奈川】
@9月23日(祝・水)
かながわ県民センター2階ホール
A9月26日(土)厚木ヤングコミュニティセンター
B9月27日(日)いちょう小学校コミュニティハウス
C10月4日(日)ひらつか市民活動センター
D10月12日(月)さがみはら国際交流ラウンジ
《多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net) 》
事務局:向、宮が迫、関 TEL:050-1512-0783
E-mail: me-net@nexyzbb.ne.jp
【埼玉】
@7月12日(日)大宮ソニックシティ市民ホール
A8月2日(日)本庄市役所大ホール
B9月13日(日)新所沢公民館 大講堂
C10月4日(日)アネックス八潮メセナ
(八潮市民文化センター)多目的ホール
《(財)埼玉県国際交流協会 事務課》
TEL:048-833-2992 FAX 048-833-3291
E-mail:kato@sia1.jp 【奈良】
@9月25日(金)「在日外国人中学生と保護者のための高校進学セミナー」
A7月16日(木)「在日外国人高校生のための就職・進学セミナー」 《奈良県外国人教育研究会、奈良県高等学校人権教育研究会、奈良県高等学校等進路指導研究協議会》TEL:0742−62−5555
【滋賀】
8月中の日曜日(13:30-16:30)に開催予定
男女共同参画センターG−net しが
《(財)滋賀県国際協会》 光田(みつだ) TEL:077-526-0931 E-mail:mitsuda@s-i-a.or.jp
【静岡】
○富士市 6月27日(土)
《富士市国際交流ラウンジ》TEL:0545-64-6400
○磐田市 8月頃に開催予定
《磐田市教育委員会 学校教育課》
TEL:0538-37-4921
○浜松市 10月下旬頃に開催予定
《特定非営利活動法人 浜松NPOネットワークセンター》TEL:053-445-3717 E-Mail:info@n-pocket.jp
http://www.n-pocket.jp

【三重】
津市 10月4日(予定) 会場詳細は未定
《津市教育委員会人権教育課》TEL:059-229-3253
【京都】8月2日(日)
京都教育大学附属桃山中学校 
《渡日・帰国青少年(児童生徒)のための京都連絡会》
京都教育大学附属桃山中学校 佐々木
TEL:075-611-0264 FAX:075-611-0371
◆今年度も、新たな情報が入り次第、当センターHP にて紹介していく予定です。当センターHP コンテンツガイド〈進学進路支援情報〉→「高校進学ガイダンス情報」→ ◆2009各地の情報(追加情報)


『移民環流』2008年11月、杉山春著 新潮社、B5判254頁、本体1500円+税

現在、日本に暮らす日系ブラジル人は約30万。ペルーも合わせた南米からの外国人登録者は中国人、在日韓国・朝鮮人に次いで3番目のグループとなっています。本書は、ブラジルからの日系人の現状について、日本とブラジルを何度も往復して取材を重ねることで、深く掘り下げていった問題提起の書になっています。
 日系ブラジル人が置かれた状況は、帰国者のそれと重なる点が少なくありません。特に、子どもの抱える問題−親子の間の希薄なコミュニケーション、学校での差別、アイデンティティや自尊心の喪失、不登校、非行、そしてダブルリミテッドの問題 (母語であるポルトガル語も日本語も充分に習得できていない状態)−は、帰国者の子どもたちにとっても問題となっているものです。約20年前、慢性的な人出不足に陥っていた日本社会は入管法を改正し多くの日系ブラジル人を受け入れました。支援者であるか否かを問わず、本書は日本社会が知っておくべき現実を示しています。

ニュース記事から 2009.01.11〜05.10

2009/01/20 訃報:奈良博さん42歳=「サハリン日本人会」会長
2009/01/20 中国で刊行の研究書を翻訳出版『中国残留日本人孤児に関する調査と研究』
2009/01/23 残留孤児らNPO法人「中国帰国者・日中友好の会」設立
2009/02/13 残留婦人3人・孤児1人提訴の国家賠償訴訟で最高裁 原告側の上告を棄却
2009/04/08 「中国残留日本人孤児」を支援する兵庫の会:ヘルパー資格取得支援
2009/04/08 満蒙開拓平和記念館 阿智村が建設用地の無償貸与へ調印/長野
2009/04/24 松本市長 帰国者19人と懇談−残留邦人地域生活支援事業を充実させようと/長野
2009/05/01 NHKの連続ドラマ「遥かなる絆」放映中(6頁に関連記事あり)
2009/05/06 鎌倉の菅原さん「『中国残留孤児』裁判」出版

*1月〜5月は 定住外国人とその家族に関わる記事が多く見られました。
2009/01/18 被災外国人の支援想定 可児で通訳支援研修/岐阜
2009/01/22 多文化共生へ推進本部設置 部局が連携し外国人住民を支援/静岡
2009/01/30 定住外国人支援に関する当面の対策についてとりまとめ〈内閣府〉
2009/02/03 ヘルパー2級講座:失職外国人対象に 19人がチャレンジ−可児/岐阜
2009/02/06 可児市「外国人の子どもの就学支援基金」へ寄付続々/岐阜
2009/02/17 外国人に「在留カード」、偽造行為に罰則 「出入国管理・難民認定法改正案」
2009/04/04 失業ブラジル人らを「外国人児童生徒教育支援員」に採用/滋賀県教委
2009/04/08 外国人支援講座始まる 日本語・生活習慣 石巻・7カ国32人が登録/宮城
2009/04/08 前年比3倍増−須磨の夜間中学 定住外国人も/兵庫
2009/04/09 不況の影響どこまで 大平町、外国人の生活実態アンケート調査へ/栃木
2009/04/11 外国人の子ら手助け 浜松の主婦ら「子どもサポーターズクラブ」結成/静岡
2009/04/12 外国人登録制度変更は「管理強化」反対集会/大阪
2009/04/16 外国人の子ども808人 就学確認84% 広島市教委調査
2009/04/27 日系ブラジル人らの子ども向け日本語教室50カ所設置を決める〈文科省〉
2009/05/07 「難民保護費」支給を厳格化 今月から100人以上打ち切り〈外務省〉
 

遠隔学習インフォメーション

●遠隔学習課程(通信教育)応募状況

 応募者が増え続け慢性的に受講待機者を多数抱える状態が続いていましたが、昨年度下期(10月〜3月)に入った時点で、その数は600人強にのぼりました。この状況を改善すべく努め、今年3月には何とか「待機者ゼロ」の目標を達成することができました。しかし、その結果、在籍者は当センターの受け入れ能力を超えてしまい、2009年度は、一時 一部コースの募集を停止せざるを得ませんでした。
そして、本年度上期が幕を開けました。受講希望者が最も多い「医療コース」の募集を停止したにもかかわらず、5月15日時点で、さらに多数の応募があったため、420名以上という新たな待機者が出てしまいました。現在、在籍者は約2500名(同時期に2つのコースを受講している帰国者もいるのでこれは延べ人数)で、学習中の遠隔生がいる都道府県は46に及ぶという状態になっています。これは、前年度 同時期と比べ1000人以上の増加となります。
この応募者増加の要因には、2008年度より施行された「新支援策」(本紙41号で紹介)により日本語学習希望者の“掘り起こし”があり「遠隔学習課程」がその受け皿となったこと、また、半期に一度行う大規模募集により「遠隔学習課程」が周知されたこと、それが口コミによってさらに広がったこと、そして、この一大不況期で解雇や、時短・給料カットに遭った帰国者2,3世が増加し、皮肉にも時間的な余裕ができたり、日本語力の必要性が切実な問題として意識されたりしたことなどが、「遠隔学習課程」への申し込みにつながったことが考えられます。
以上のことから考えると、この応募者増加の傾向はしばらく続くことが予想されます。「いつでもどこでも」学習できる「遠隔学習課程」の存在は、現在の帰国者を巡る状況の中で日本語学習の方法の1つとして着実に定着してきているなと感じます。

●様々な学習スタイル

 「遠隔学習課程」が開設されてから8年目になりますが、当初からずっと受講を続けている人も多くいます。受講者一人一人の遠隔課程学習歴を見ていると様々な学習スタイルが見えてきます。開設時から現在までいろいろなコースをとり続けて切れ目なく学習を続けている人、何年かのブランクを挟みながら必要になったときに必要なコースを受講している人、1つのコースを着実に最後までやり遂げて次に進む人、なかなか最後まで行かないけれどいろいろなコースにチャレンジし続ける人、何年かかろうと1つのコースにじっくり取り組む人、標準として設定された間隔通りにきちんと課題を提出して修了していく人等、それぞれの学習経過を見ると、それぞれの学習スタイルや、学習ニーズ、個性が見えて大変興味深いものがあります。このように様々な学習者の様々な学習スタイルが見られるのも、“受講者主体”の「遠隔学習課程」ならではのものではないかと思います。

[遠隔学習課程“完走”体験談]
2008年度1年間で延べ725人が、いろいろなコースを修了しています。本紙39号、41号に続き、今号も、遠隔学習課程を“完走”した受講生の手記の中から抜粋して、自学自習の工夫や方法などを紹介します。

●帰国者1世 (64歳);医療コース

・何があっても遠隔学習課程をやり遂げるという信念を固める。
・コースの学習計画表を参考に、自分の状況に応じて、半年或いは1年で修了するような学習計画を立てる。
・学習計画ができたら、課題提出の具体的な日

を決める。
・不明な点は人に聞いたり辞書を引いたりして、すぐに解決する。
・添削された課題をしっかり読み、復習する。
・病院へ行く前に自分の症状についての単語や文を調べ、書き写す。診察時うまく言えないときには、医師に書き写した文を見せる。

●帰国者1世 (67歳);ピンインコース(中国語の発音表記を学ぶコース)

 勉強は1回1時間くらいで、疲れたらテレビを見る。ドラマやニュースはわかりやすく勉強になる。毎週火曜日夜8時からのNHK歌謡コンサートは歌詞が出るので、歌を聞きながら漢字の読み方がわかり、一石二鳥だ。※(続く)
※(10頁の続き)以前は歌詞の意味がわからなかったので、あまり聞きたくなかったが、今はだいたい理解でき、歌が好きになった。寂しい気持ちも解消された。

●帰国者2世 (57歳);入門日本語文法文型コース

  できるだけ日本語環境を作るように工夫している。
・繰り返しCDを聞き、読み、覚え、言う。
・テレビをたくさん見る。特に子供向けの教育番組はわかりやすく収穫大。
・電車に乗っているときや病院での待ち時間を利用して、日本語の漫画本や文庫本を読む。

●帰国者1世 (67歳);入門日本語文法文型、医療、続・入門日本語文法文型、近隣交際会話コース

・単語を覚える:テープを聞きながら、各課の新出単語を正しい発音・アクセントで覚える。
・文型の練習をする:文型の正しい意味をとらえ、しっかり身に付くまで練習を繰り返す。
・メモをとる:単語、文法、文型、助詞、副詞、接続詞、例文は忘れないように簡単に書きとめることにしている。
・日記を書いて、日本語の先生に直してもらう。
                (今号はここまで)

事例紹介

「翻訳を仕事として」

苦労して身につけた日本語と母語である中国語の力を生かして翻訳業に携わりたいという帰国者二世三世もいる。今号では、翻訳を仕事としている帰国者二世のTFさん(中国語講師)と翻訳会社で営業を担当している三世のYさんのお二人にいろいろとインタビューしてきた。(本稿は先に首都圏支援・交流センターの情報紙『天天好日』第38号に掲載しています。)
●TFさんの場合
一九九〇年に残留孤児である母とともに二十歳で帰国。帰国前の日本語は五十音と簡単な挨拶ができる程度だった。中国の大学を一年生で中退して帰国したが、日本でも勉学を続けたかったのと日本語習得のため、日本の大学進学を目指す。当時はまだ中国籍で留学生入試で入ったため、入試では特に苦労はなかったが、逆に入学後、学業に加えて日本語も勉強しなければならず、少し苦労した。専攻は人文学の言語文化。卒業後、日本人に英語や中国語を教える語学学校に教務として勤める。
教務のはずだったのに、ネイティブだからと講師として使われてしまったことがきっかけで中国語講師に。翻訳を仕事として始めたのもこの学校の業務の中に翻訳が含まれていたからだった。この学校の学生が企業からの派遣であることが多く、その企業の訪中団のスピーチ原稿や業務上の文書の翻訳などを引き受けていたのだ。もともと言葉に興味があり、日本語を勉強しながら母語ではどう言うのかを考えるのが好きで、自然に翻訳に興味をもつようになった。
その後、翻訳会社に登録もし、そこの仕事も受けるようになる。同業の翻訳者からや、自分が以前にボランティアで翻訳・通訳を引き受けた人からの紹介による依頼も多い。一度引き受けてOKラインをクリアしていれば、その依頼者の紹介で別の所からの依頼も舞い込むようになる。こうして依頼元を増やしていった結果、今では、小説などの文芸作品の翻訳の校閲(日本人の中国文学研究者などが訳したものを中国語ネイティブの目でチェックする)や日中辞典の例文の翻訳なども手がけている。
とはいえ、翻訳だけで食べていくのは難しく、今は非常勤の中国語講師と兼業。翻訳はフリーで、講師の仕事の合間を縫って朝や深夜にやっている。培った人脈を生かして注文を受けているが、仕事としては不安定。
高度に専門的な内容の依頼はないのだが、時間をかけて推敲するタイプなので仕事は遅い方。二、三回のチェックを含めて最終的に費やす時間は翻訳文四百字に平均五十分から一時間。また、専業ではないのであまり多くの依頼は受けていないにも関わらず、ぎりぎりにならないと始動しない性格のため、いつも締め切りに追われている。慢性的な睡眠不足に加えてパソコンの前に座りっぱなしということもあって、常にわき腹や胃に痛みを抱えている。結構不健康な仕事ではある。
ただ、「人人為我、我為人人」という言葉もあるように、月並みながら人に必要とされて今与えられた仕事をこなしていきたいと思っている。将来翻訳業に携わりたいと考えている二・三世に対しては、二世の一人として「中日二か国語を習得していることは財産だと思う。中国語さえできれば誰でも翻訳ができるわけではないし、その財産は今すぐには使えないかもしれないけれど、将来役に立ちたいと思ってこつこつと精進することが大切」と言いたい。

● 翻訳業界の動向 (以下は主としてYさんの談話に筆者調べの情報を加えてある)
実務翻訳の業界全体としては、高度に専門的な内容の翻訳依頼が多い。というのは、今どきはどこの企業も中国人社員の一人や二人は抱えていて一般的な文書の翻訳を担当させており、そこでこなしきれなかった高度なものが翻訳会社に発注されることが多いため。最近では環境保全(汚染防止策など)や観光(官公庁からの依頼で日本の観光地を中国語圏に紹介する)、バイオ関係の依頼が多い。日中間で特に翻訳が必要になる時事問題(例えばSARS等)もその時その時である。
翻訳の仕事に資格が必須ということはないが、中国語検定や通訳ガイド(中国語で日本国内の観光ガイドができる国家資格。『天天好日』第27、28、33号)、翻訳検定などの検定資格は持っているにこしたことはないだろう。また、翻訳者の養成学校は行けば行っただけのことはあり、文章としての体裁の整え方も教えてくれる。独学の人と養成学校出の人では仕上がり具合を見れば違いが一目瞭然。
 翻訳会社に登録する場合、履歴書を提出し、「トライアル」翻訳で審査されて採用される。但し、採用されてもよほどオールラウンドであるか、逆に特定の専門分野に非常に明るいかをアピールできないと「ウリ」が弱い。また、どんどん仕事が回ってくるということはそうないので、一社だけでなく、複数の会社に登録する方がよいだろう。
会社に来る依頼は専門的な内容のものが多いため、登録者が多数いても慢性的に人材不足。但し、その分野の専門書などを参考書として渡して事前学習をしてもらうようにしているし、いい仕事をすれば次の仕事を回す。ということは、初めはその分野の素人であっても、このときに意欲的に取り組んで及第点の仕事をし、知識を培っていくことができれば、後々その分野での翻訳のエキスパートとなることも可能。一般的に、若いうちは翻訳者としてはまだ安心して任せることはできず、三十代以降になってやっと経験が生きてくるようになり、四〜五十代がいちばん脂の乗る時期となる。長いスパンで自分の能力を向上させる姿勢が必要。
翻訳だけで食べていくことは一般的には難しい。専業の人も翻訳者十人中に三人ぐらいはいるが、専業者はコンスタントに仕事があるようにするために常に多めに引き受けている。そのため、一年中締め切りに追われ、精神的なストレスが大きい。
最後に、中国社会の変化は大変大きく、新語や流行語がどんどん生まれている。こういうものにも追いついていけないと翻訳者としては失格。ネットで絶えず新情報を仕入れることが求められる。

★参考情報
『通訳者・翻訳者になる本―プロになる完全ナビゲーション・ガイド2009年度版』(年刊、イカロス出版、1800円) 英語がメインだが業界の全体像を知ることができる。同じイカロス出版に『産業翻訳の仕事を獲得する本 2008〜2009』(1890円)、『通訳翻訳ジャーナル』(隔月刊、1000円)がある。最近、バベルプレスから『ザ・プロフェッショナルトランスレーター』(季刊、1000円)が創刊された。ウェブでは、「通訳・翻訳WEB」 (イカロス出版のサイト)、「産業翻訳の基本がわかるwebマガジン」などが参考になる。検定では「翻訳技能認定試験」、「ビジネス中国語検定」がある。       (an)