HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第36号(2006年5月22日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
 近畿中国帰国者支援・交流センター 2006年度のセンター
 遠隔学習課程 スクーリングの現場から〈福島〉
 北海道中国帰国者連合会
 ニュース(中国語の医療ネットワークHP・星星通信100号)
 神戸の日本語学習支援活動 紹介
 2006年度「進路ガイダンス」情報
行政・施策
 厚生労働省から
  今年度予算/17年度指導職員等専門研修会/訪中補充調査
 援護基金から
  養父母お見舞い訪中事業
 文化庁から
  地域日本語教育支援事業 活動企画の募集
研修会情報
 ★研修会報告
  医療通訳を考える全国会議 2006
  日本語学習支援ネットワーク会議 in IWATE
 ★研修会情報
  異文化間教育学会第27回研究大会
  第3回東京の日本語教育、日本語学級を考える集い
  第33回全海研(全国海外子女教育国際理解教育) 全国研究協議大会
教材・教育資料
 『外国人児童生徒を教えるためのリライト教材』
 GCN Osaka 日本語学習教材《英語・中国語・韓国語・スペイン語併記学校単語帳》
とん・とんインフォメーション
 孤児問題関係の本・雑誌 リスト
 通訳ガイド資格取得を目指す後輩のための情報
 『馬賊王小白竜父子二代−ある残留孤児の絶筆秘録』
ニュース記事から 2006.1.14〜2006.5.18
事例紹介 通訳案内業試験に合格

地域情報ア・ラ・カルト

2006年度の近畿中国帰国者支援・交流センター

 近畿センターは平日の夜間と土、日に日本語やパソコンのクラスを開講しています。2001年の開設当初約100名の通所生だった当センターも、現在は300名を超え、賑々しいセンターとなりました。特に日曜日には1世から3世まで100名を超える方々が熱心に学んでいます。
 今年度は日本語の新規開講クラスも始まりました。「日本語能力試験3級対策コース」で、従来からの「2級対策」「1級対策」と合わせると36人の受講生が勉強しています。これからも随時参加を受け付けるので、さらに増えると考えられます。昨年度は1級・2級合わせて本試験に4人の合格者が出ました。今年度もさらに受講・受験を勧める予定です。

 また、課外活動として以下のプログラムも実施しています。
 @ 毎週日曜日に行っている和洋裁クラブ
 A 1か月に1回のランチサービス(帰国者と日本人のボランティアが支援センターの受講生のために昼食を作る)
 B 三重県の梅林関係者との交流(山菜祭り参加、梅収穫)
 C 野菜つくり(間もなくタマネギ収穫が始まります)
 D 小中学校での餃子作り講師派遣

 昨年3月のボランティア研修会「まなびや」では、子供としての立場からと親としての立場からと2人の帰国者の体験報告を行い、教育委員会・自立支援通訳・高校の教師としての立場からのそれぞれの取り組みを聴き、支援者との交流を行いました。今年度はこれらをふまえて、新たに「子供たちに対する支援」にも取りくんでいきたいと考えています。子供たちの場合、望むと望まないとにかかわらず、家族と一緒に日本に来ることになるわけです。言葉がわからないまま学校に入り、学習面や友人関係で困難な状況に直面している子供たちも多いです。日本語が上手になった場合は、親に代わって役所関係の手続き等を担当する事が多く、さまざまなストレスを受けています。
 家族間のコミュニケーションが少しでも促進できるよう親子でセンターに通所し、親が教室で学んでいる時間帯に子ども対象のプログラムができないか、と考えています。例えば、「子ども料理教室」で親のための「ランチサービス」などです。
 近畿センターは、多方面にわたるボランティアの方々に支えられています。こういった方々に感謝しつつ通所者が日本語の学びを深めるためにも、地域日本人との出会いやつながりの場を意識して提供していきたいと考えています。

☆遠隔学習課程 スクーリングの現場から:加藤美子〈福島〉

 福島県の〈遠隔学習スクーリング〉は、平成15年1月に始まり今年で3年目に入りました。初めの頃はスクーリングについて、イメージを描くことさえできませんでした。不安を抱きながら中国帰国者支援・交流センター(以下交流センター)の研修会に参加し、また所沢センターの紀要など少しでも参考になる情報を集め、大事だと思う内容に全て印をつけるなどして、ある程度の予備知識を身につけるように心がけました。また、直面しそうな問題を予測して、その対応や指導法などを自分なりに準備しました。
 3年過ぎた今、振り返ってみると、スクーリングの当初は、進度の確認と質問への解説、提出課題の指導と添削された課題の間違い直しなどを、機械的にこなすにすぎませんでした。要領が悪いためか、やりたいことがありすぎて時間が足りないことも度々ありました。3年の年月は長いようで短いものです。スクーリングの回数を重ねるに従いだんだん楽しく余裕をもって行えるようになってきました。それは交流センターの支援によるところが大きかったと思います。添削された課題に書いてある担当の先生のコメントを受講者と一緒に確認するとき、私のアドバイスと同じ内容だったりすると嬉しくなります。こうして自信もついてきました。
 現在、交流センターがスクーリング講師を対象に配信している『スクすく通信』は、24号を数えます。また、所沢センター発行のニューズレター『同声同気』に記載されている、他の都道府県のスクーリング担当者の経験談、指導法や提案などの情報を目にするとき、戸惑いや疑問や悩みが少しずつ解決されるようになってきました。このような形の情報の共有や交換はとても意味のあることだと思います。
 私が担当してきた〈漢字コース〉の受講者には、自学自習の力が高い人もいれば、中国で学校教育を十分に受けられなかったために、意欲はあるもののどう学習を進めればよいかわからず苦労している人もいます。後者のタイプの人のスクーリングでは、進度や課題を完璧なものにすること、わからないところを全て理解させることなどにこだわらずに、自学自習力の養成や学習の習慣をつけることに重点に置くことにしました。間違いを単に直すだけではなく弱点を指摘しミスを分析した上でマークをつけさせる、返ってきたもののポイントを絞って復習させるなどの方法は、学習に不慣れでたくさんは覚えられないという受講者に有効だと思います。また、学習が少しでも生活に役立つよう、受講者自身が覚えたら便利だと思うものをしっかり覚えるようにとアドバイスすることにしています。一世世代は全て60代になりました。万が一のことを考えたとき、筆談でサバイバルのためのコミュ二ケーションを取れるようになることを目的として漢字コースの受講を勧めてみるのもよいのではないかと思います。
 孤児世代には、非識字者がかなりいるのが現状だと思います。しかしながら、現時点で開講されている交流センター遠隔学習課程のコースは全て、対象が最低限の識字力を持った者に限定されています。私はこれまで、スクーリングを受けている家族の傍らで羨ましそうにしている帰国者を何人も見てきました。彼らは、識字力がないために遠隔学習課程を受講することができません。しかし、学習に対する憧れ、「読み書き」できることへの憧れをいまだに持ち続けている人は少なくないのです。交流センターは現在1200人を越える学習者を抱えていると聞いていますが、もし可能であれば、非識字者向けのコースの開設をぜひ検討していただきたい。日本語の学習が無理な人であれば、中国語の読み書きを目的とするコースでもいいのではないでしょうか。非識字者向けに工夫された教材が開発されることで少しでも受講者の枠が拡大されればと思っております。
 孤児世代は、記憶力が弱くなってスクーリングの日を忘れてしまったり、家族や自身が急に具合が悪くなったりして受講できないときがあります。そういう場合も、可能な範囲でスケジュールを調整しやり繰りするようにしていきたいと思っています。

北海道中国帰国者連合会

 北海道中国帰国者連合会は、帰国者同士で親睦交流をはかりお互いに助け合い支え合おうということを目的に発足しました。今年で4年目を迎えました。
 4月の日曜日の午後、5月に予定している総会準備と今年の活動計画を相談するため役員会議が開かれました。会場は、札幌市社会福祉総合センターの貸会議室ですが、帰国者活動は使用料が減免になります。市内各区から23名の役員が参加しました。ほとんどが一世ですが二世もいます。会議が始まる前から和気あいあい、和やかな雰囲気でおしゃべりしています。88年に帰国した身元未判明孤児の江本会長が開会のあいさつをする間もなく、次々と新年度の活動を提案するとにぎやかな討議が始まります。例によって皆大きな声です。
 「今年は、パークゴルフや釣り大会、中国象棋大会など趣味の活動をやろうと思う。パークゴルフってなんだ。知り合いの日本人で中国象棋教えて欲しいという人がいる。「象棋の会」に呼んだらいい。今年の旅行活動の行き先は。世界遺産「知床」はどう。みんな疲れるような遠いところは無理。小樽で船に乗れるらしいよ。近くがいい。今年の秧歌(ヤンガー)で「腰鼓舞」をやろうと思う。手稲のSさんが中国でやっていたようだから教えてもらおう…」とこんな調子で「ワイガヤ」会議が進行していきます。
 秧歌まつりのこと、来年の新年交流会のこと、そして総会開催のことなど役割分担して、3時間に及ぶ大会議をこなして、意気揚々と引き揚げていきました。皆さん、いかにも楽しいという顔です。
 現在、札幌市とその周辺には国費と自費の呼び寄せ家族合わせておよそ400世帯、1200人余りの人が定着して生活しています。帰国家族の中心となる残留孤児世代の平均年齢は63歳ぐらいで、ほとんどの人が生活保護を受けて生活しています。全国的にも「引き籠もり」が大きな問題になっていますが、当地でも早くから支援者の皆さんからそうした問題が提出されていました。言葉の壁の上に生活保護を受けているとその傾向が強まります。 そこで、帰国者の皆さん自身で活動できるようにサポートしていこうと、支援者の皆さんとともに考えて活動が始まったのは6年前のことです。北海道の初夏はほんとうに素晴らしい季節です。自然の中、近郊の滝野すずらん丘陵公園で交流会を行いました。皆さんは、ともに悲惨な歴史的な体験を共有する人たちです。お互いの心情を理解でき、思いを共有して支え合うことは帰国者の皆さんにしかできません。各地域に分散して住んでいた人も顔見知りになり交際も広がっていきました。
 前から新年交流会や秧歌まつりで帰国者の皆さんと支援者がともに協力して活動していました。その基礎の上に、さらに回を重ねて帰国者連合会の発足へと発展しました。規約を備え年度ごとの会計決算、予算、代表者を決めて社会活動として認められる要件を備えた任意団体として活動しています。札幌市や近郊、また道内各地の帰国者も参加して一世を中心に90世帯余りの家族が参加しています。各区に区の「会長」を置いて、電話連絡網で連絡できる体制になっています。
 特筆する活動となっているのは養父母や病弱な帰国者お見舞い活動です。「養父母さんは私たち皆の養父母、恩と感謝を忘れてはいけない」といいます。病気お見舞いでは「寂しかったけれど来てもらって嬉しい」と涙を流して喜ぶといいます。お見舞いした人も多くのことを知る機会になります。また、中国文化は、帰国者の皆さんの人格を形成する一部ですから、新年会、秧歌祭のような文芸活動は、異文化社会でのアイデンティティ形成に大切な活動です。大いに創造力を発揮して思い切り楽しむ中で誇りを取り戻し自信をつけます。
 活動を見ていますと、例えば役割分担も中国社会での職業や経験を尊重した分担で、帰国者の皆さんでないとできない文化や知恵があります。感心するところが多くあります。支援者も決して一方的に日本流を押しつけないことを心がけています。
 帰国者の皆さんは大きな力を持っています。人生の大半を中国で過ごし社会的な役割を果たしてきた人たちです。もとより力を備えています。言葉ができない、事情がわからないというだけで周囲からは「低く」見られがちです。しかし、そんなことは絶対にありません。連合会の活動に接していますと皆さんの力が伝わってきます。私たち支援者は、ただ寄り添って「触媒」のようにしているだけです。
 皆さんが集まると、ゆったりとした時間が流れ、暖かな心地よさに充たされます。自立センターも帰国者の皆さんの拠り所ですが、また違った役割を備えたもうひとつの拠り所となる「安全基地」が作られつつあると実感しています。まだまだ課題は多く二世への働きかけなど取り組みが続いていますが、しっかり根をはった活動団体になれるよう願っています。

(北海道中国帰国者自立研修センター:向後洋一郎)

ミニニュース!

本紙34号〈地域情報ア・ラ・カルト〉でご紹介した「中国語の医療ネットワーク」のHP

URL:http://chuugokugoiryou.net/
が、今年1月31日に開設されました。
5月2日現在、東京(17)、神奈川(3)、愛知(1)の中国語が話せる医師のいる医療機関が紹介されています。今後もより多くより幅広い診療科目にわたりネットワークを作っていきたいとのことでした。

祝! 『星星通信』第100号発行

 北海道中国帰国者自立研修センターが開設されてから11年。ニューズレターの発行はこの4月20日で100号となりました。所沢修了生のその後をはじめ、「おもしろ中国語/ところ変われば?日本・中国・ロシア」、そして最近は「日・ロ生活習慣の違い」や出身国紹介シリーズ等、いつも楽しく読ませていただいてます。

〈神戸市外国語大学日本語学習を助ける会/神戸中国帰国者日本語教育ボランティア協会〉 ― 神戸の日本語学習支援活動 紹介 ―

 わたしたちは「神戸市外国語大学日本語学習を助ける会」と「神戸中国帰国者日本語教育ボランティア協会」の二つの名前を持って、神戸外大の学生と、社会人のボランティアがいっしょに活動しています。
 1987年、神戸や明石にも中国からの帰国者が定着し始めたころ、神戸外大学生のサークル活動団体として「神戸外大日本語学習を助ける会」が、そして、それを人的経済的にバックアップするために「神戸中国帰国者日本語教育ボランティア協会」が設立されました。ボランティア協会は、生活支援、地域交流、日本語学習支援の3本柱で運営されています。このうち、神戸での日本語教室の様子を紹介します。
 週に3回、1回2時間、一対一や小グループで学習を進めています。発足以来、多くの帰国者が日本語学習に取り組み巣立っていきました。今は、就職が困難な時代ですが、自立に向かって少しずつ力をつけていっています。
 その中で、日本語学習がとてもとてもゆっくりの人たちがいます。高齢であったり、健康状態がよくなかったり、学校教育をあまり受けていなかったりする人たちです。週1回、一世の男性を担当しているのは、中国語科の学生です。1年で覚えてもらえた言葉は「ニラ」「たまご」「たばこ」「〜から〜まで」など。中国語で中国の話や料理の作り方を話している時間が大部分です。「こいつはわたしの先生だ。中国語が上手になったぞ」と親指を立てます。
 一世で子どもの時ほとんど学校に行けなかったという女性も勉強に来ています。日本語で何というか分かったらすぐノートに書きます。ノートは広告の裏の白いのをていねいにそろえて重ねてホッチキスで綴じたものです。ひらがなで書いて、中国語で意味を書こうとすると、それが書けません。それでも、いっしょうけんめい書いて、家でそれを清書して復習します。
 30代の二世にも学校教育をあまり受けていない人がいます。20代で日本に来たが、日本語学習をするチャンスがありませんでした。知っている言葉をひらがなで書く練習をしています。恥ずかしがり屋ですが、声をたてて笑って照れながら、書いたものを大きい声で何度も読みます。
 集中できないで脱線ばかりするし、おととい勉強したことを覚えていないし、家庭の事情や天候ですぐ休むし、日本語習得への道のりは遠く、日本での生活に役立てる学習とは何か悩む毎日です。
 しかし、どんなにゆっくりでも真剣に取り組む姿、病気で長期休んでもまた教室に足を運んで笑ってくれたりする姿に勇気づけられます。とりわけ、若い大学生が、自分の親より年上の帰国者と接することは、なにものにもかえがたい貴重な体験です。
 いつでも気軽にやってくることができる敷居の低い教室で、勉強したい人はがんがん勉強でき、人とふれあいたい人は楽しく過ごせる、ふところの深い場所でありたいと、時々はメンバー内で熱く議論したりしながら、これからもやっていきたいと考えています。
 大学生が学園祭で出す水餃子の模擬店は、皮の作り方、あんの調合、包み方など、帰国者の指導と応援のもと、大人気で毎年売り切れます。

(神戸中国帰国者日本語教育ボランティア協会:根津京子)

2006年度の進路ガイダンス情報

【東京】6月25日(日)
《多文化共生センター・東京21 TEL&FAX:03-3801-7127 E-mail:tokyo@tabunka.jp》

【福岡】8月6日(日) 福岡市(福岡県教育会館)
《九州大学大学院 吉谷武志研究室 TEL&FAX:092-642-3150》

【千葉】
@7月2日(日)夏期進路ガイダンス 船橋市
A9月24日(日)千葉市
B10月1日(日)船橋市
C10月15日(日)松戸市民会館
《千葉大学教育学部社会教育研究室 TEL:043-290-2568》

【埼玉】7月:川口、所沢会場で開催決定
さらに県内二箇所で開催予定(6〜10月)
《埼玉県国際交流協会事業課 大西 TEL:048-833-2992/FAX:048-833-3291》

【神奈川】
@9月23日(土)横浜市
A10月1日(日)平塚市
B10月9日(祝日)横浜市
C10月14日(土)相模原市
D10月21日(土)厚木市
《高橋清樹 TEL:045-942-5202 下記HPにも詳細掲載 http://www15.plala.or.jp/tabunka/index.htm》

【静岡】
<浜松市>6月頃及び11〜12月の年2回開催予定
《浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket) TEL&FAX:053-459-1558》

【長野】8〜9月にかけて県内4地区で開催
《(財)長野県国際交流推進協会 春原 TEL:026-235-7186》

【北海道】札幌市で開催予定(時期は未定)
《札幌子ども日本語クラブ 鷲田洋子 TEL&FAX:011-373-0584 E-mail:atoz-birds79@brown.plala.or.jp

【岐阜】8〜9月に可児市で開催
《可児市国際交流協会 TEL:0574-60-1200/FAX:0574-60-1230 E-mail:kiea@ma.ctk.ne.jp》

【三重】
<津市>9月下旬〜10月上旬の間に開催予定
《津市教育委員会人権教育課 TEL:059-229-3253》
<鈴鹿市>9月に開催予定
《鈴鹿市人権教育センター TEL:059-384-7411/FAX:059-384-7412》

【大阪】夏以降に開催予定
《(特活)関西国際交流団体協議会 TEL:06-6773-0256 FAX:06-6773-8422 E-mail:kna@interpeople.or.jp》

※今年度も、新たな情報が入り次第、当センターHP にて紹介していく予定です。
当センターHP コンテンツガイド〈進学進路支援情報〉→「高校進学ガイダンス情報」→ ◆2006各地の情報(追加情報)

行政・施策

★厚生労働省から

1.中国残留邦人等の援護対策

平成17年度予算額 平成18年度予算額
1,562百万円 1,531百万円

 @永住帰国者援護

1,063百万円 952百万円
62世帯281人 50世帯234人
(うち 樺太等
12世帯54人

10世帯50人)

 A一時帰国者援護

151百万円 153百万円
202世帯292人 202世帯292人
(うち 樺太等
122世帯169人

122世帯169人)

 B肉親調査

71百万円 55百万円

 C樺太等現地調査

5百万円 5百万円

 D中国帰国者支援・交流センター

272百万円 366百万円

2.平成17年度中国帰国者指導職員等専門研修会

 平成18年3月2、3日、東京で開催し、中国帰国者定着促進センター職員6名、自立研修センター職員30名、支援・交流センター職員6名、自立指導員24名、就労相談員6名、都道府県職員17名、厚生労働省職員10名が参加しました。
 研修会では、目白大学人間社会学部心理カウンセリング学科教授の原裕視先生による「中国帰国者等の精神保健に関する具体的な事例と対処法について」と題する講演を行いました。
 また、出席者を6グループに分け、日本語指導、生活指導、就労等の諸問題について意見交換を行いました。

3.訪中補充調査の実施について

 平成17年度日中共同調査(6月〜7月)において、何らかの事情によって面接調査に応じることが出来なかった者に対する補充調査を、去る3月5日から2週間にわたって、遼寧省瀋陽市・吉林省長春市、北京市において、8人の孤児申立者及び証言者等に対して実施しました。また、中国政府と孤児調査などについて協議を行いました。
 なお、平成18年度日中共同調査は、7月の実施を予定しておりますが、新たに中国残留日本人孤児と確認された者については、昨年度と同様に、情報公開調査により肉親情報を求め、集団一時帰国及び対面調査を行うこととしております。

★援護基金から

養父母お見舞い訪中事業参加者からのお便り

 平成16年12月のNHKテレビ「大地の子を育てて−中日友好楼の日々−」の放送で関心が高まり、多くの国民の皆様から、「中国に住む養父母を訪ねてあげて」とご寄付が寄せられました。援護基金では、平成17年度より、養父母お見舞い訪中事業を拡充させ、すべての養父母にお見舞いの機会を設けることにしたところですが、新たな形での養父母お見舞い訪中援助は、開始から平成18年3月末までに、100名を越える方が養父母の許を訪問しました。今回の援助を受けて、中国に養父母をお見舞いに訪問した日本人孤児のお礼のお便りを一通ご紹介します。

 援護基金の皆様、中国残留孤児のために寄付金をされた全国の皆様
 この度は誠にありがとうございました。86歳になる中国のお母さんから、日本の皆様に感謝の気持ちを伝えてくださいと頼まれましたので、お母さんの気持を日本の皆様にお伝えします。
 誠にありがとうございました、お陰様でもう一度中国のお母さんに会う事ができました。これが最後かもしれませんので、本当にとても大事な旅でした。ご恩は一生忘れません。出来る限り一生懸命頑張ります、日本のために、日本の皆様に恩返しをするために、終身頑張ります。本当にありがとうございました。

熊本県在住 Aより
原文(日本文)のまま

★文化庁から

近年,来日する外国人の増加と共に,地域における日本語教育に対する需要 は多様化しています。そこで,地域の特徴ある活動を求め,先進的で全国のモデル となる事業を支援するとともに,地域において自立し,定着した活動となるよう関 係機関との連携推進を目標とした事業を今年度より展開します。具体的には,次の 4分野について活動の企画を募集しています。

1.人材育成=地域の具体的なニーズに応じた内容の研修,講習を実施します。昨年度まで実施していた日本語ボランティア,地域日本語支援コーディネータ研修のように文化庁が指定する機関から講師の派遣等が行われます。
2.日本語教室設置運営=モデル的先端的な日本語教室運営を企画する団体に対し事業を委嘱します。教室形態は,昨年度まで実施していた学校の余裕教室等を活用した親子参加型日本語教室のように親子参加型に限定せず,多様な教室運営を募集の対象とします。
3.教材作成=市販の教材ではなく,地域の実情に沿った,地域独特の教材を,地域の人たちの手で企画作成する事業を委嘱します。
4.連携推進活動=特定の地域における多様な構成員からなる「検討委員会」を組織し,シンポジウム(研究協議会)を開催する事業を委嘱します。地域における日本語教育の課題と関係機関の連携について意見交換を行い,今後の地域連携に関する計画をとりまとめていただきます。

 募集団体要件は4分野とも@都道府県又は市区町村,A社団法人,財団法人,B特定非営利活動法人,C法人格を有しないが,所定要件を満たす団体,です。ただし,上記要件を満たす団体であっても,授業料を徴収して運営を行っている団体や学校教育を目的とする活動を行う団体は対象外となります。
 企画書,計画書の募集締め切りは,5月31日(水)です。尚,本事業の詳細や企画書,計画書等のフォーマットは,文化庁ホームページからダウンロードできます。

URL:http://www.bunka.go.jp
「国語・日本語教育に関して」→「日本語教育」→「地域日本語教育支援事業」

(文化庁文化部国語課:中野敦)

研修会情報

★研修会報告

医療通訳を考える全国会議2006

 日本で生活する外国人にとって最も困難なことの1つとして医療機関の利用が挙げられるだろう。そしてこの問題に孤軍奮闘している医療従事者、行政関係者、ボランティアが各地にいる。特定非営利活動法人〈多言語社会リソースかながわ(MICかながわ)〉と神奈川県は、去る1月28日にこの現実を踏まえて、多言語医療サービスの質と持続のためには何ができるかを考えようと、「ことばと医療の問題を考える」と題して第1回の全国会議を開催した。当日、会場には全国から様々な立場の関係者が200名近く集まり、多文化社会へ向かう日本で医療通訳問題に関心が高まりつつあるのを改めて感じた。
 午前中の全体会では現在国内外で実施されている医療通訳の養成と派遣システムの事例が報告され、午後は3つの分科会(@医療機関が求める医療通訳像、A通訳の質的向上と医療通訳をめぐる問題、B医療通訳事業の仕組み、財源、行政、NPOとの協働)で活発な意見交換がなされた。そして会議の最後に国内の主な医療通訳関係団体が自分たちの取り組みを簡単に紹介した。以下に分科会ABについて簡単に報告する。

 分科会Aでは日本英語医療通訳協会の水野真木子氏が医療通訳者には語学力はもとより医療知識、通訳技能(声の調子、集中力、記憶力、メモ取り技術、書面を見ながら内容を通訳する技術等)、対人技術、問題処理能力などが必要であると強調された。それに続いて話し合いでは医療通訳者に必要な研修として、言語別、診療科別、受付や診察室等の場面別、実習等があり、いずれも医療の専門家や通訳養成の専門家と協力をしてプログラミングされるべきであるとの意見がでた。また、認定制度導入については、日本の場合海外とは違ってネイティブスピーカー(母語話者)が少なく、様々なレベルの人が医療通訳をしているという現状を考えると、海外のような審査基準の高い制度をそのまま導入するのではなく、通訳者全体の動機付けがなされ、個人のレベルアップに繋がる認定制度でなければならないと話し合われた。

 分科会Bでは、〈多文化共生センターきょうと〉の通訳派遣システム構築の実例が紹介された。もともとは中国帰国者集住地区のニーズに応える形でスタートしたものだが、その後広く外国籍住民支援へと拡大し、現在中国語、英語などの通訳スタッフ22名が登録している。医仁会武田病院に定められた曜日通訳が常駐する固定方式と市内3箇所の病院に通訳を派遣する方式がある。資金面では病院や京都市等も負担している。その他京都市国際交流協会も含め関係団体の連携協力によって実現したシステムだ。病院と連携することによって医療通訳に係わる損害賠償責任保険も適用される点、多文化共生センターや病院がコーディネートをしっかり行い効率的な支援が行える上、通訳の立場が守られている点など先進的な取り組みとなっている。業務範囲の拡大にともなう財源確保と人手不足が課題と聞く。ワークショップでは京都市のように利用者の多い地域だけでなく、利用者の少ない地域でのシステム構築についても議論された。

 高齢化の進む中国帰国者1世世代の罹患率や通院率の高さを考えた時、医療通訳の質の向上、通訳利用のシステム化は焦眉の課題だ。このような研修会が地域の支援の現状を変えていく牽引車となることを願う。

(益村・平城)

日本語学習支援ネットワーク会議in IWATE* (2006.2.18 於:岩手大学)

 まだ寒さが厳しく、雪の残る2月、岩手大学(盛岡市)を会場に東北一円の日本語教育に携わる人々が集まった。参加者は57名、講師陣は11名という大規模な集会となった。
 本会議では、田村太郎氏(多文化共生センター)と、春原憲一郎氏((財)海外技術者研修協会)の基調講演、岩手県文化国際課と県教育委員会からの基調報告の後、4つの分科会(日本語教室の運営と学習支援、外国出身の子どもの学習支援、共生のための共通語としての日本語、在住外国出身者支援と行政の役割)に分かれて、さらに具体的な議論を行った。
 基調講演では、田村氏が「多文化共生社会に向けて」と題し、多文化共生へ向けての3つの提言を行い、それを受けて春原氏が「多様な言語・文化がこと言祝がれる地域づくりのために」と題して、多様性について、多様な視点での講演を行った。
 続く基調報告では、岩手県の「外国出身者」の現状についての報告があり、その中で帰国者を含めた「中国人」の伸びが大きい(「特別永住者」が県内の外国人登録者数の13%を占める)という報告がなされた。
 各分科会では、ボランティアグループで既に活動している方々、ボランティア初心者の方々、大学の研究者、行政関係者による議論が展開され、今までの活動から何が学びとれるのか、自分の地域では何ができるのかなどの幅広い話題が提出された。
 東北各地の多様な立場の人々が集まり考えを共有するというまたとない機会となった本会議は、全体総括での「これで終わりにせず、ここから始めていきたい」という岡崎正道岩手大学教授の言葉通り、岩手県内における日本語教育の現状の把握だけに留まらず、東北各地で活動している日本語教育支援者たちの横のつながりを広げていく起点となるだろう。

(荻野)

*主催;岩手大学国際交流センター
 共催;(財)岩手県国際交流協会
 後援;岩手県教育委員会、
 後援;(財)盛岡市国際交流協会

★研修会情報

異文化間教育学会第27回研究大会

日時:6月3日(土)・4日(日)
開催地:関西大学(高槻キャンパス)
参加費:正会員 事前申込み 5000円
参加費:当日申込み 5500円
連絡先:異文化間教育学会第27回大会準備委員会
〒569-1095大阪府高槻市霊仙寺町2−1−1
関西大学 総合情報学部 久保田真弓研究室気付
FAX:072-690-2406
E-mail:ibunka27@yahoogroups.jp
大人も子どもも含めて日本に暮らす外国人の、言語・教育・生活に関わる様々な問題が、発表・パネルなどで取り上げられています。

第3回東京の日本語教育、日本語学級を考える集い

八王子で新たに開設された日本語学級のことなど3本の報告
日時:5月28日(日) 1:30〜5:00 
会場:東京しごとセンター 
(東京都千代田区飯田橋3丁目10番3号 TEL.03-5211-1571 FAX.03-5211-8301)
資料代:700円 
連絡先:実行委員長 見城慶和 047-388-2769T/F 関本保孝 y.sekimoto@jcom.home.ne.jp

第33回 全海研(全国海外子女教育国際理解教育) 全国研究協議大会

日 時:7月31日(月)・8月1日(火)
場 所:イーグレひめじ(兵庫県姫路市本町68番290 TEL:0792-89-3443)
参加費:5000円(一般)3000円(会員)
申し込み先:全海研事務局まで FAX:03-5696-3358 または E-Mail:info1@zenkaiken.net

教材・教育資料

『外国人児童生徒を教えるためのリライト教材』

編著者;光元聰江,岡本淑明

 リライト教材とは,教科書の教材を子どもの日本語レベルに合わせてわかりやすい表現に書き換えた教材で、各地で様々な取り組みがなされています。今回紹介するのは、国語の教科書が読めるようになることを目的に作られた教材集で、岡山大学「外国人児童生徒の教科学習支援学生ボランティア(SSV)」の活動(代表:光元聰江*平成17年度まで)の中で実際に使われ改良されてきたものです。光村図書の教材がもとになっていますが、他の教科書と重なっているものも多いようです。総ルビで、入国して2〜3ヶ月目くらいから使用できるよう配慮されています。

自費出版/1500円+税
問い合わせ・注文先:
ふくろう出版(版元) FAX:086-255-6324
凡人社 東日本 03-3263-3959(営業部)/西日本 06-6264-8140(大阪営業所)
(東京の麹町店および大阪営業所の店頭で手に取ることができます)
インターネットでの購入も可能。

内容:(小1)くじらぐも/(小2)お手紙,たんぽぽのちえ/(小3)三年とうげ,ありの行列
(小4)一つの花,ごんぎつね,「かむ」ことの力
(小5)新しい友達,大造じいさんとガン,サクラソウとトラマルハナバチ
(小6)やまなし,生き物はつながりの中に,平和のとりでを築く
(中1)にじの見える橋/(中2)言葉の力/(中3)生き物として生きる

GCN Osaka 日本語学習教材《英語・中国語・韓国語・スペイン語併記学校単語帳》

http://www.gcn-osaka.jp/japanese/eckssw/index.html

このページは、学校生活で用いられる言葉について、英語、中国語、韓国語、スペイン語の4言語による対訳や一部説明、写真を付した用語集です。学校のお知らせプリントを読んで理解するときなど、日本の学校に対する理解を深める助けになります。〈GCN Osaka〉は大阪大学の留学生や外国人研究者、地域に住む外国人のためのオンラインコミュニティーで、日本語学習教材は最も人気のあるコンテンツです。この学校単語帳は、札幌のボランティアグループ「あかり」(代表:野田豊子氏)よりオリジナルデータの提供を受け、改訂を行ったものです。

とん・とん インフォメーション

最近出版が相次いでいる孤児問題関係の本・雑誌 リスト

・『父母の国よ―中国残留孤児たちはいま』 鈴木 賢士著/大月書店/1470円(税込)/2005年7月発行
・『国に棄てられるということ〜「中国残留婦人」はなぜ国を訴えたか〜』 石井小夜子・小川津根子共著/岩波ブックレット/504円(税込み)/2005年12月発行
・『異国の父母―中国残留孤児を育てた養父母の群像』 浅野 慎一著/岩波書店/1890円(税込)/2006年1月発行
・『誰にも言えない中国残留孤児の心のうち』 埜口阿文著/草思社/1680円(税込)/2005年11月発行
・『中国で成功した残留孤児たち』 日中2ヶ国語版 湘湘著、段躍中監修/横堀幸絵訳/日本僑報社/1900円(税抜)/2005年4月発行
・『アジア遊学』 85 特集 中国残留孤児の叫びー終わらない戦後/勉誠出版/1890円/2006年3月発行
・『終わりなき旅―「中国残留孤児」の歴史と現在』 岩波現代文庫/井出 孫六著/岩波書店/1155円(税込)/2004月8月発行
※1986年の大佛次郎賞を受けた著作

16頁〈事例〉の福田さんは投稿の最後に、通訳ガイド資格取得を目指す後輩のための情報をまとめてくれています。併せてご紹介します。

1) 3年前、日本は「観光立国」として、観光出国者が入国者よりも多いのを挽回するため、2010年までに外国からの旅行者数を毎年1000万人(2005年実績730万人)とする目標を決めました。専門家の分析によると、欧米からの旅行者の増加はもうほとんど余地がなく、重点をアジアにシフトするようになったと言います。アジア経済、特に中国経済が高度成長するにつれ、日本への海外旅行者が日に日に増えています。予想では、今後数年で中国からの日本への旅行者は激増します。そのため中国語ガイドは、需要が供給を上回るとみられています。
2) 2005年6月通訳案内業法が改正され、2006年4月1日から施行されますが、その中には無資格者が報酬を受けてガイドを行った場合の罰則の強化が含まれます。そのため、有資格者が仕事をする機会が徐々に増えることになると思います。
3) 数年後には中国語ガイドが不足する事態が発生すると思われます。また、日本国際観光振興機構(JNTO)は、この資格の合格率を高めることを考慮しており、2005年中国語通訳ガイド試験の合格率は過去最高(12.9%)を記録しました。

通訳案内業(ガイド)試験については、『天天好日』27号 特集「資格を取ろう」にもその概要が載っています。ご覧になりたい方は支援・交流センターHP:http://www.sien-center.or.jp/magazine/index.html参照。

鹿児島の支援者から『同声同気』編集部宛に頂いた本を紹介します。
『馬賊王小白竜父子二代―ある残留孤児の絶筆秘録』

小日向明朗(張明樺)著 近藤昌三訳(朱鳥社、223頁、1500円)

 この本には中国に渡り「馬賊王」となった小日向白朗(通称「小白竜」)とその息子明朗の激動の物語が綴られています。第一部は父の人生の描写、第二部では中国に取り残された筆者とその母の体験記。文革中、日本人である筆者とその母親は悲惨な目に遭いますが、彼は馬賊王の息子としてのプライドを胸に困難に立ち向かいます。毛沢東の死後、筆者は財界人として成功しますが、消息の途絶えていた父がすでに日本で死去していたことを知ります。そして、父の死から10年後の1991年、知人の助けによりついに日本で墓参りをすることができました。1998年、筆者は苦労の末、中国残留孤児として日本に帰ってきます。2003年4月に癌と診断された筆者が、病床で書き残した記録が本書です。

ニュース記事から

ニュース記事から 2006.01.14〜2006.05.18

01/31 「被害実態に理解を」/残留孤児訴訟2審始まる/大阪高裁
02/03 昨年一時帰国の孤児王善林さんDNA鑑定の結果熊本の女性と血縁なし
02/03 フィリピン残留孤児の2世 日本国籍取得へ/東京家裁
02/16 15日 残留婦人訴訟 請求棄却も 国の早期帰国支援の不十分さ指摘/東京地裁
02/21 残留孤児らの医療の言葉の壁解消図る『医療用語・表現集』(本紙35号8頁で紹介)
02/21 残留孤児2世の日本人男性 中国で7年服役「外務省の依頼で情報収集」
02/28 九州4県孤児・婦人原告27人が4次提訴/福岡地裁 ※これまで全国15地裁2高裁で係争中 原告約2100人に
03/06 条約難民支援施設 4月 都内に開設へ/内閣府
03/08 北九州市議会に孤児「生活支援の議案提出を」陳情/福岡
03/18 与党プロジェクトチーム 月額13万生活支援の「帰国者老齢給付金」制度創設の検討へ 議員立法による成立目指す
03/20 京都在住の外国人や帰国者の生活向上のための「京都外国人高齢者・障害者生活支援ネットワーク・モア」設立総会開催 初の都道府県レベルネットワーク
03/28 強制退去取り消し 中国人高校生の長男/東京地裁
04/19 外国人子ども 登録なくても県内22市が就学容認/05年度市民団体調査/愛知
04/20 ウクライナで生存が確認された旧日本兵 上野石之助さん 一時帰国/岩手
04/20 中国残留孤児訴訟 第9回口頭弁論 日中両国で受けた差別等意見陳述/岡山
04/22 外国人不就学問題:「多文化共生づくり協働塾」活動成果の冊子作る/三重
04/25 岩手県内発提訴16人を含む東北原告団37人国に賠償求める/仙台地裁
04/26 外国人児童生徒 日本語指導が必要 初の2万人台に(2万692人:前年度比5.2%増)
05/06 残留婦人ら「早期解決を」と国の支援求め集会/東京

事例紹介

 今回は7年前に来日した帰国者2世、福田宏美さんの手記を紹介します。この手記は、福田さんが通訳案内業を目指そうとする後輩たちのためにまとめたもので、中国帰国者支援・交流センターの情報紙『天天好日』27号に掲載されました。支援者の皆様にもぜひご紹介したいと思い、『天天好日』から転載させてもらったものです。原文を翻訳して紹介します。

通訳案内業試験に合格

 国土交通省が実施している通訳案内業(ガイド)の国家試験については、帰国者の二、三世の中にも知っている人がたくさんいますが、受験を躊躇っている人が少なくありません。というのも、毎年の合格率が10%に満たない難関資格のひとつだからです。私もご多分に漏れず、長らく試験を受ける気にならなかったのですが、2005年に勇気を出して受験したところ、運良く合格することができました。その時の経緯とそこから私が得たものが、皆さんにとって啓発になり、勇気を出して奮起されることに少しでも役立てばと思い、ここに体験記をまとめてみました。
 私の母は残留孤児で、1998年6月に帰国しました。私と夫はその1年後に自費で帰国し、現在東京に住んでいます。私が最初に通訳ガイドの資格のことを知ったのは2001年です。当時の私は日本語能力試験の1級に合格していましたが、自分のレベルにまだまだ不足を感じて、更なるレベルアップのための学習を考えておりました。そして、インターネットの検索で、通訳ガイドの資格を見つけたのです。これは、日本に観光で来る外国人にその国の言葉でガイドをする仕事でした。しかし試験の内容を知って、挑戦する勇気をなくしてしまいました。日本語と中国語の相互訳以外に、日本の歴史、地理、産業、政治、経済、文化等に関する一般常識も問われるのです。来日2年足らずの私にしてみれば、とうてい難しすぎ、また、この資格のための学校の1年間の学費は少なくとも数十万円で、あきらめるほかなかったのです。
 私が再度通訳ガイドの資格に挑戦しようと考えたのは3年半前から日中友好経済交流協会の事務局で働き始めてからのことです。この協会は中国帰国者の支援を目的にしたボランティア組織です。帰国者の方々と頻繁にふれあうことで、多くの帰国者の二、三世が私同様この資格に挑戦したがっていること、また、この難しさに驚いていることを知りました。一体どれほど難しいのかは受けてみなければ永遠に分からないので、自分自身で受けてみれば、人から聞かれた時にもアドバイスができると思いました。ちょうどその時期、上野(東京都)の中国帰国者支援・交流センターの通学課程において、中文和訳コース(2004年4月〜9月)と、下半期の10月から日本の観光地理と歴史のコース(10月〜3月)が開設(両コースとも隔週で全10回)され、私も早速、申請しました。内容が多いのに時間は少なく、私たちのように中国で育った学生は、日本で重要な歴史上の人物や出来事、日本の名山や名水、日本の社会事情等をまったく知らなかったため、大変苦労しました。しかし、20回の講義と演習で翻訳技術の初歩と日本の地理・歴史についての基礎知識を得ることができ、自信を持つことができました。
 先生はコース修了後にガイド資格試験の予備校を勧めてくださいました。そこで私はすぐにそれぞれの学校に行って調べたのですが、各校で実施している学習内容は、日本で生まれ育った人向けのものでした。彼らの弱点は日本語を中国語に翻訳する点であるのに対して、私が必要とする点はまったく逆で、中国語を日本語に翻訳するのが弱点だったので、結局、センターで学んだ教材(注)を家で復習することにしました。しかし、日本の歴史、地理、政治、経済等の一般常識は、自学ではだめではないかと心配し、どうすればいいのだろうと思っていたところ、クラスメイトの一人が通訳ガイド資格試験対策で非常に有名な学校で「歴史、地理、一般常識のマラソンコース」が開かれていることを教えてくれたので、すぐに申請しました。有名校の名のとおり、レベルが高く、コースの内容もボリュームがあり、広範囲をカバーしていました。今思い返すとその学校で学習した内容は有益で、学費も決して無駄になっていないと思いました(この学校には通信のコースもあります)。
 数年の準備と努力でとうとう結果が実を結び、合格通知を手にした日には、家中でお祭りのような騒ぎでした。私の子供は合格通知を手にして部屋中走りながら、「お母さんが勝った!お母さんが勝った!」と叫びました。私の両親も満面に喜びと誇らしさを湛え、「きっとできると思っていた」と言ってくれました。この言葉は私が日本に来て2回目に聞く言葉でした。1回目は、私が日本語能力試験の1級に合格したときです。私はよく両親が自慢げに他人に「娘は日本に来て、働きながら学習して、日本語1級を取った」と言うのを聞いていました。私の努力が、両親にとっては慰めになっているようでした。今回の合格で日本社会でまた一歩堅実な歩みを踏み出せたことが証明されました。これは私自身の大きな自信になっただけでなく、私の上の世代と下の世代にも勇気と自信をもたらしたと思います。帰国者の二、三世の中には日本に帰国後満足な仕事が見つからず、給料の低い労働にしか従事できていない人も多くいますが、その中には中国で高等教育を受けていたり、各種の貴重な就業経験がある人も少なからずいます。自分の持っている特技が発揮できないのは大変、もったいないことです。
 日中での各分野の交流が深まるに連れ、今後、仕事の各分野において中国語に精通し、中国の国情を理解した人材へのニーズもますます大きくなるでしょう。通訳ガイドの資格はその中の一つにすぎませんが、私は帰国者の二、三世が自分の足りない部分を補い、自分の長所を発揮し、皆が自分に見合ったポジションを見つけられるよう、また、立派な日本の公民として社会に貢献できるようになることを願っています。

(注)『通訳案内業(ガイド)試験中国語過去問解説』(法学書院発行)