HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第31号(2004年9月22日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
 再研修/遠隔学習課程スクーリングの現場から<千葉県中国帰国者自立研修センター>
 大阪中国帰国者定着促進センター「6ヵ月研修になって」
 2004年度の進路ガイダンス情報
 母語(中国語)学習支援グループ『飛翔』、活動開始!
行政・施策
 厚生労働省から
  6月1日「九州中国帰国者支援・交流センター」開設
  平成16年度共同調査について
 援護基金から
  就学援助事業の大幅拡充-今年度総額5000万円に-
  ◆ヘルパー等養成講座も50人超に増枠
  ◆支援・交流センター就学援助10月より援助額を大幅改善
  新刊案内
 文化庁から
  平成16年度「文化庁日本語教育大会(東京大会)」の報告
研修会情報
 ★研修会報告 中国帰国者支援・交流センター スクーリング 研修会 2004
 ★研修会報告 「東京の日本語教育、日本語学級を考える集い」
 ☆研修会情報 第50回全国夜間中学校研究大会
教材・教育資料
 『にほんご宝船-いっしょに作る活動集-』
 『運転免許学科試験問題集 仮免・本免(日本語版・中国語版)』
 『すぐに使える!6か国語 保育の会話&文書便利帳』
とん・とんインフォメーション
 『外国人を援助するためのハンドブック』
 『とよなかにほんごのあゆみ 1999〜2003』
 『まるわかり外国人医療―これであなたも六法いらず―』
 『日本で暮らす外国人のための生活マニュアル2003/2004年版』
ニュース記事から 2004.5.11〜2004.9.10
事例紹介 為(ウェイ)夢(モン) -夢のために-

地域情報 ア・ラ・カルト

☆再研修・遠隔学習課程スクーリングの現場から 千葉県中国帰国者自立研修センター

再研修

 平成9年、国費帰国で8ヶ月の研修修了者を対象にレベル別の2クラスで開講した。受講生が減り14年からは1クラスになり、現在10名が在籍中で、働きながらの受講者はいない。
 8ヶ月の基礎学習に続き、会話力などの向上を目指しているが、日本語を使う機会が少ない年配者が多く、以前はもっと上手に表現できたのにと思うことが多い。就職してない人は、日本語ができなくても買い物はスーパーで済ますことができ、家でも不自由はない。中国のテレビが映るのでニュースや娯楽も楽しめる。どうしても中国語が主になり、日本語はなかなか進まない。学習は基礎に戻って初級の繰り返しになっている。
 しかし日本語に慣れてきているのは確かである。サバイバル日本語と言われるが、一世夫婦が「駅」「自転車」「ないです」等、少ない単語を駆使して自転車がなくなったのを伝え、保管場所へたどり着き、無事に取り戻した“事件”が最近あった。また必要からだろうが、孫の世話をする人は意欲的で日本語も上手である。しかし全員にそれを求めることはできないので、再研修では“耳慣らし”、“口慣らし”、“手慣らし”をして、ゆっくり日本語を思い出し、使ってみようという意欲を出してくれればいいと思う。
 教材は『すきなもの・すきなこと』(凡人社)『にほんご1・2・3』(アルク)等を使っているが、身近な言葉を覚えられるよう学生の生活の事例や会話を取り入れ、各講師が準備している。前回の病気会話では歯医者の会話から義歯の話になり、一人ひとり入れ歯を見せ合いながらの学習となった。高齢者が多く健康に関しては真剣で、通院についての質問も多く出て、メモをとりながらの時間はたちまち過ぎた。授業はゆっくりだが、納得いくまで学習するので、学習者は達成感を感じているのではないかと思う。今後も生活に密着した日本語を学習者と一緒に進めたいと願っている。週1回だが友達との出会いの場でもあり、生活相談もあり、欠席もなく元気な姿を見せ、毎回楽しい学びの時間を過ごしていく。いわゆる「引きこもり」防止の場ともなっているのではないか。ここに学んだ同士が交流することで、精神的に安定する作用も大きいと思う。

スクーリング

〈漢字学習コース(漢字T・U、ゆっくりA・B)〉 第1土曜…現在の在籍者3名前後。皆、自宅で熱心に課題に取り組んでいる。課題についての質問もあるが、まずテキストの読み練習をとの希望で、会話を交え音読を中心に学習している。学習意欲が高いのに感心させられる。

〈運転免許学科試験対応コース〉 第3土曜…平成14年10月開始時から現在まで受講生3名。各回1名ずつ、マンツーマン授業で細かな質問にも答えられたが、反面、受講生同士の交流・情報交換の場とはならなかった。3ヶ月(最長6ヶ月)の受講期間だが、すでに修了した2名は教習所に通いながらの参加だったため教習所のスケジュールと合わず結局2ヶ月しか参加しなかった。現在受講中の60歳代女性は、講座修了後に免許取得に挑戦したいとのことで、取り組み方はゆっくり。受講生の共通点は、筆記試験の日本語が不安なこと。スクーリングでは、試験問題の特徴、問題を読み取る時の注意点など、幾つかの要点を教えることを中心とし、不安を軽くし励ますことに配慮した。

〈近隣交際会話コース〉 第4土曜…最初、学習方法がわからない受講生が多く、再研修のような時間を期待していたようだ。一斉授業の希望があり、現在も1時間目は一斉授業、2時間目は各々にあわせている。7月だけは、教材の内容が身近な問題だったので2時間目をミーティングにしたらとても盛り上がり、初めて提出課題を書いた人もいた。最近は、次第にスクーリングの目的を理解するようになったと感じる。教えてもらうのではなく、自学自習のきっかけをつかむように導くのが私たちの役目だと思う。スクーリングに参加するのが楽しいと感じてくれたら嬉しい。

6ヶ月研修 スタート

 これまで4ヶ月だった定着促進センターでの研修が、今年度より6ヵ月に延長され(本紙30号〈厚生労働省から〉にて紹介)、大阪センターでは4月から、所沢センターでは6月から、この新たなシステムがスタートしました。本号では、初めての「6ヵ月研修」修了の時期を迎えつつある大阪センターに、研修の様子を伺いました。

大阪中国帰国者定着促進センター「6ヶ月研修になって」

 以前より多くの項目をじっくり学習でき、復習の時間も増えた。特に高齢者は、学習項目と修了の時期に追い立てられないでゆったり学習できたのはよかった。読解の学習を増やせたので、作文の練習もテーマをひろげることができた。
 中だるみは予想していたので、通常5月の連休明けに行っているクラス再編成テストの外に、6月末にクラス間の微調整のためのテストを行った。初めての試みとして全校生徒参加でカラオケ大会を行った。始めは遠慮していた生徒も終わる頃には積極的になったので、修了前に「お別れ会」を兼ねてもう一度行う予定にしている。また、校外学習を見直し、受身の学習ではなく生徒が中心となって計画することを試みたが、これは成果があったと思う。今後、目標に向けて生徒が努力するような活動、例えばスピーチ大会なども行いたい。一般の日本人との交流や日常生活に密着した体験実習なども増やしたいと考えている。
 今期は4月から9月という夏をはさむ研修期間となった。中国東北地方から来ている生徒にとっては、経験したことのない暑さの中で夏休みなしに学習を続けることはかなりきつかったのではないかと思われる。研修4ヶ月目ごろに全体的に疲れが目立った。中でも高齢者には通学の疲れも加わる。できればこの頃に1泊旅行を含む1週間程度の休暇をはさんでリフレッシュするのがいいかと思われる。
 期間が長くなることにより、人間関係が複雑になり問題が起こることも増える。緊張感が薄れ、礼儀正しかった生徒の態度が変わったと思われる時期もあった。2ヶ月の延長とはいえ、さまざまな部分でさまざまな影響が出るということを実感した。今期の経験をふまえて、来期に備え創意工夫をしていきたい。
 もう一つの大きな問題としては、就学児童・生徒への対応がある。今期は、12歳(中国で中1在学)、12歳(中国で小5在学)、8歳(中国で小3在学)の3名の該当者がいた。センターで大人と一緒に1ヵ月半程、ひらがな、カタカナ、数字、挨拶など学習し、簡単な自己紹介や会話ができる程度で、それぞれ中1、小6、小3に編入させてもらった。いずれは引っ越す児童・生徒であり、日本語もまだまだということもあり、また、センター校の定員という問題もあって、教育委員会や学校と何回も話し合う必要があった。日本の小中学校に編入することで、学校生活に慣れることができ、友達もできてよかったが、中学生の場合は、中途で学校に編入させた方がよいのか、あるいはどの時期に編入させるのがよいのか等は、その子の性格などもよくよく考え合わせる必要があるなと感じた。

大阪センター 事務局長:西山博子

2004年度の進路ガイダンス情報

 2003年度は、新たに進路ガイダンスを開催するところが10ヶ所近く増え、中国/サハリン帰国生徒を含めた外国人生徒への進路選択のための支援が各地に広がった年でした。今年新たに開催するところでは、浜松市、豊橋市などの情報が届いていますが、一方で、去年は実施したが助成金の打ち切り等のため今年はできないというところもあるようです。もうすでに終わっているところもありますが、以下に、今年度の情報(当センターで把握している範囲のもの)をまとめました。これ以外にも開催予定のところがありましたら、是非お知らせください。逐次、当センターHPで紹介いたします。

*すでに開催されたところ
【静岡】(浜松市)5/23(日)、【愛知】(豊橋市)7/9(土)、【福岡】(福岡市)8/1(日)、【北海道】(札幌市)8/7(日)

*これから開催されるところ(一部もう終わったところも含まれています) ※ 以下、《》は連絡先
【奈良】
 @9/18(土) 橿原市立八木中学校
 A9/25(土) 奈良市立春日中学校
 《奈良県外国人教育研究会 TEL:0742−62−5555/FAX:0742-62-5568》

【東京都】
 10/10(日)東京ボランティア・市民活動センター
 《多文化共生センター・東京21 TEL:03-5825-1290(FAX兼用) cmia-tk@tctv.ne.jp》

【埼玉】
 @8/28(土)さいたま文学館・桶川市民ホール
 A9/5(日)所沢市役所
 B10/3(日)越谷市中央市民会館
 《埼玉県国際交流協会事業課 伊藤 TEL:048-833-2992、FAX:048-833-3291》

【千葉】
 @9/26(日)市川市立第七中学校
 A10/3(日)千葉大学けやき会館
 B10/10(日)松戸市市民会館
 《長澤 043-290-2568、白谷 043-424-4364》

【神奈川】
 @9/23(木)かながわ県民センター2F(横浜)
 A10/3(日)ひらつか市民活動センター
 B10/10(日)いちょう小学校コミュニティハウス
 C10/16(土)さがみはら国際交流ラウンジ(淵野辺)
 《高橋清樹 045-942-5202》

【三重】
 @7/25(日)松阪地区
 A9/26(日)伊賀(上野市)地区
 B11/21(日)三泗(四日市市)地区 
 《(財)三重県国際交流財団国際教育課 TEL 059-223-5006、FAX 059-223-5007》

【大阪】
 ★北河内ブロック: 10/16(土)寝屋川市市民会館 《寝屋川市国際交流協会 072-811-5935》
 ★三島ブロック:
    @6/19(土) 茨木市市民総合センター
    A12月頃(予定) 《茨木市国際親善都市協会 0726-20-1604》
 ★豊能ブロック: 11/20(土)午後 《とよなか国際交流協会 06-6843-4343》
 ★中河内ブロック: 12/5(日)東大阪市立男女共同参画センター 《八尾市国際交流センター 0729-24-3331》
 ★南河内ブロック: @10/17(日)A11/14(日) 《とんだばやし国際交流協会 0721-24-2622》
 ★泉北ブロック: 日程は未定 《堺・バークレー協会 072-222-7343》
 ★泉南ブロック: 10/24(日)大阪府立佐野高校 《かいづか国際交流協会 0724-23-2151》
 ★大阪市:
    @7/21(水)大阪府立長吉高校
    A9/26(日)大阪市立扇町総合高校 《多文化共生センター・大阪 06-4395-1377》

行政・施策

★厚生労働省から

6月1日「九州中国帰国者支援・交流センター」開設

 中国帰国者等に対する継続的な支援を行うため、平成13年11月に首都圏及び近畿圏に「中国帰国者支援・交流センター」を開設しましたが、本年6月1日、三番目のセンターとして、九州圏に次のとおり開設いたしました。

1.名称  九州中国帰国者支援・交流センター
  場所  福岡市中央区六本松1丁目2番22号 福岡県社会福祉センター内
  委託団体  福岡県中国帰国者自立促進協議会
2.事業概要
  (1) 日本語学習支援事業  地域社会でのコミュニケーションや就労に役立つ日本語学習支援
  (2) 相談事業  相談窓口を開設し、来所・手紙・電話等で相談等に対応
  (3) 交流事業  帰国者同士や地域住民と交流し、コミュニケーションできる場の提供

平成16年度共同調査について

 中国残留日本人孤児の肉親捜しについては、平成12年度より孤児の高齢化に伴う精神的・身体的負担の軽減や早期の帰国に応えるため、厚生労働省職員が訪中し中国政府の協力を得て現地で共同調査(訪中調査)を行う方式に改めました。
 今年度は、6月20日から約4週間にわたり黒竜江省、遼寧省、吉林省及び北京市において共同調査を行い、孤児申立者24人、証言者28人との面接調査を実施するとともに、継続調査(協議案件)となっていた39人について中国政府と協議を行いました。
 面接調査は省都だけではなく、高齢等のため調査会場に来ることのできない証言者の住所地を訪問するなど、共同調査の集中実施の最終年度として、調査の促進に努めました。
 共同調査の結果については、中国政府と正式文書を交した上で決定されますが、今年度新たに日本人孤児と確認された方々については、今後、報道機関等の協力を得て、孤児名簿を公開して肉親情報を収集するための情報公開調査を行い、希望する孤児は11月下旬から集団一時帰国として訪日し、永住帰国に向けたオリエンテーションや施設見学に参加し、肉親情報のあった孤児については、この間、肉親と思われる方と対面調査を行うこととしています。

★援護基金から

就学援助事業の大幅拡充−今年度総額5000万円に−

 昨年度より高校大学等就学資金の貸与、支援・交流センター二世・三世への援助、ホームヘルパー受講援助を拡大し、昨年実績より一千万円余り増額しました。
 このほか、大学等進学の日本語学習援助は、高校等の就学資金の貸与と同じ仕組みで継続し、団体助成事業の日本語教室については、就学援助と位置づけます。
 これら、就学援助事業の総額は4980万円に上ります。
 平成16年度は、高校生11人、専修学校生8人、大学生20人、日本語教育機関学生1人の計40人に新たに就学援助することになりました。

平成17年度奨学生募集案内(申込締切平成17年1月31日)は 当センターHP<進学・進路>コーナーに10月中旬 掲載の予定

◆ヘルパー等養成講座も50人超に増枠

 昨年は援護基金の支援で19人のホームヘルパーが誕生しました。今年度はすでに15人を越す申込があり、年間では、50人ほどの申込者が予想され、これに対応できる予算を確保しました。
 また、ホームヘルパーだけでなく就労上の資格向上に役立つ講座(例えば簿記)があればヘルパー等養成講座(等とは類似のものを指す)として考えますのでご相談下さい。3〜6ヶ月の講習(講義)で修了時何らかの資格が与えられ、費用が10万円以下の講座を対象に、8割の援助(千円未満切り捨て)を行います。
 「ホームヘルパー等養成講座受講援助」は、貸付けでなく支給ですから返還の必要はありません。しかし、最後まで続けることが必要で、途中でやめた場合にはその理由次第で返還を求めることもあります。

◆支援・交流センター就学援助10月より援助額を大幅改善

 東京、大阪、福岡(本年6月開設)の中国帰国者支援・交流センターで通所または遠隔学習で学ぶ受講生について、帰国者本人とその配偶者は受講料も教材代も無料です。二世三世やその配偶者には受講料は無料ですが、教材代は自己負担になっています。
 援護基金では、一昨年の10月から、二回目の受講以降は、この二世等の教材代の半額を就学援助として支援してきましたが、本年10月からは、受講生の負担をより軽くするため、ほとんどのコースで自己負担額を一律千円とし、残額を就学援助として援護基金が負担(支援)することにします。
 特に多くの教材を使ういくつかのコースは二千円かそれ以上のものもありますが、九割のコースが千円で受講できることになります。

新刊案内

 『運転免許学科試験問題集 仮免・本免(日本語版・中国語版)』
 詳しくは9頁、<教材・資料コーナー>をご覧ください。

★文化庁から

平成16年度「文化庁日本語教育大会(東京大会)」の報告

 8月3日(火)・4日(水)の2日間に渡り、昭和女子大学において、「地域における年少者への日本語学習支援について考える」という全体テーマで、延べ1、500人近い参加者を得て、平成16年度「文化庁日本語教育大会(東京大会)」を開催しました。
 大会初日は、文化庁、文部科学省(国際教育課)、国際交流基金などの施策説明や最近の調査結果に関する説明が行われた後、東京学芸大学の佐藤郡衛教授(前異文化間教育学会会長)が「年少者への日本語習得支援について異文化間教育の視点から考える」というテーマで基調講演を行いました。続いて、ペラエス・トミダ・エマニュエルさん(埼玉大学経済学部3年生)が「年少者への日本語習得支援について−私の実体験から−」というテーマで事例発表を行いました。これらの内容を踏まえて行ったパネルディスカッション(司会:水谷修名古屋外国語大学長)では、年少者日本語教育、異文化間教育学、日本語教育学、発達心理学などの専門的視点や、地域の行政担当者の視点など、多様な側面から支援の現状に関する分析を行い知見を出し合うとともに、今後の年少者への日本語習得支援の充実へ向けた活発な協議が行われました。
 2日目は、午前中に社団法人国際日本語普及協会の協力による「外国人在住者の地域参加と共生社会の在り方」と題したシンポジウムを開催し、地域にしっかりと根をおろしつつ、住民として積極的に社会貢献している3人の方をパネリストに迎え、今後の共生社会の在り方について協議しました。午後からは、年少者の日本語習得支援に関連して、前・後半それぞれ2時間ずつ、3つの分科会に分かれて(計6つの分科会で)日本語教育研究協議会を行い、会場では、有用な情報・技術の紹介や活発な意見交換がなされました。
 なお、今年の11月14日(日)には、「関西元気文化圏構想」の一環として、大阪大学コンベンションセンターにおいて「言葉と文化−言葉から見る日本と韓国の文化」をテーマに、平田オリザ氏(劇作家・演出家)による講演をはじめとする関西大会を開催します(詳細は文化庁のホームページ:http://www.bunka.go.jp/の新着情報を御参照下さい)。

文化庁日本語教育調査官 野山 広

研修会情報

★研修会報告

中国帰国者支援・交流センター スクーリング研修会2004

 去る6月30日、東京の支援・交流センター主催で昨年に引き続き、遠隔学習課程のスクーリング担当講師を対象とする研修会が、厚労省と各自治体の職員も参加して行われた。午前は全体で資料の解説と質疑応答、午後は遠隔学習課程で使用される主な教材別に3つのグループに分かれ、分科会(漢字関連、読解の基礎、近隣交際各コース)が実施された。現場からの声を聞いた後、意見の交換が行われ予定の時間をオーバーする分科会もあった。この報告では「近隣交際コース」の分科会を中心に報告したい。
 「近隣交際コース」の分科会では主に@受講生の幅の広さ、Aテキストの会話文の難しさ(敬語表現等)、B「受講生が日本語を話す機会の少なさ」などの問題について話し合いが持たれた。
 @については、受講生の年齢・性別・地域・環境・日本語のレベルが異なり、テキストの内容、課題などと合わない場合があると報告された。センター側からはテキストのテーマを近隣の人々との交際の素材、動機付けの材料とし、そこからテキスト中の表現や交流場面を受講生に合ったものに広げてほしい、また課題については、内容・方法・話題を幅広い層に利用してもらえるように改訂中との回答があった。
 Aについては、受講者の日本語レベルが本コースのテキストレベルまで達していない者も多く、受講者の日本語力の範囲でテキストの会話の表現を直し意思疎通できることを第一義とすることが確認された。また、中国では日本語のような敬語表現がないため、わかりやすく説明するのが難しいが、敬語は日本語の特性の一つであり、人間関係をスムーズにする役割があるので徐々に知ってもらうのもいいという意見も出た。
 Bについては、「日本人と話す機会がないのでスクーリングを楽しみにしている」「スクーリングで日本語ネイティブと会話したい」「CDで学習しているがスクーリングで実際の会話をしたい」という受講生からの声が紹介された。「本物の交流場面をどう作るか」は近隣交際コースの重要なテーマである。私自身も授業に飴を持って行き、和やかな雰囲気の中些細な事柄から話題が大きく発展し充実したコミュニケーションがはかれたという嬉しい経験がある。漢字学習などの他のコースと異なり、「近隣交際」は交流の様々な場面を想定し授業を進めるため、授業内容や教室の雰囲気作りが各講師に委ねられる。大変だが、講師には腕の見せ所でもあり喜びである。
 ある日一人の受講生がこんなことを言っていた、「私は日本人なのに日本語が話せない」と。「話せるようになりたい」という気持ちがじいんと伝わってきて、私は心から彼らを応援したいと思った。これからも受講生と共に困難を克服しながら、一人でも多くの帰国者がこの遠隔学習課程のスクーリングを受けてよかったと思えるような「よき伴走者」でありたい。

岡山県スクーリング講師 石黒章子

「東京の日本語教育、日本語学級を考える集い」主催:同会実行委員会

2004年6月12日 飯田橋東京シニアタワーにて

 本紙30号の報告「夜間中学の先生を減らす問題をみんなで考える集い」でも紹介しましたが、今年の初め、東京では夜間中学校日本語学級の教職員定数削減問題が大きな波紋を広げました。また、数年前から話題に上っている都立高校統廃合の問題も、外国籍生徒の定時制高校在籍率の高さを考えると見過ごせません。このような状況の中、標記の集いが開催され、大勢の人が集まりました。
 その中で、夜間中ばかりでなく昼間の小中学校の日本語学級でも、予定されていた専任教諭が結局講師にすりかわってしまった例が報告され、都下で似たような状況が相当数起きていることがわかりました。また、その日本語学級にすら通えないでいる多くの子どもたちの厳しい状況が紹介されて、地域によって、受けられる支援(日本語指導者・通訳ボランティアの派遣等)にあまりに格差がありすぎるという問題が改めて指摘されました。特に中学生は、高校入試という大きな壁があります。公的な支援だけでは到底間に合わず、ボランティア教室を探して補習を受けている子どもも大勢います。しかし、そのような情報を得ることができない子どもたちはどうすればいいでしょう。日本語を母語としない子どものための高校進学の条件整備に関しても、東京都は決して進んでいるとは言えません。高校入試において受けられる措置に関して、引揚生徒と外国籍生徒の間に差があるという点については、都の教育委員会に改善の要望を以前より出していますが、なかなか実現しません。
 会の最後に“日本語教育を必要とする人たちは東京の宝!”というアピールが採択されましたが、この文言がそれぞれの現場で実感を持って受け止められるような環境を作っていきたい、という思いを強くしました。

☆研修会情報

第50回全国夜間中学校研究大会

日程:2004年12月2日(木)〜3日(金)、引き揚げ帰国者・定住外国人教育については3日の第4分科会で。
会場:足立区竹の塚センター、足立区教育研究所
連絡先:世田谷区立三宿中学校 夜間学級 高橋三郎副校長
Tel:03‐3424‐5255、Fax:03‐3424‐5380

教材・教育資料

春原憲一郎他著『にほんご宝船‐いっしょに作る活動集‐』

(B5判111頁 アスク2100円)

 「教師と生徒といった関係ではなく、共に楽しく学べる教材がほしい!/教材を通してたくさんおしゃべりしたい!/それでいて日本語の基本的な文法事項の力もつけられる教材がほしい!」、『にほんご宝船』は、こうしたニーズに応えるべく企画された教材です。
 生活に密着した50のテーマを巡って会話を楽しむだけではなく、自分で書き込みをしたり思い出の写真などをいろいろ貼りつけていったりして、自分だけのオリジナルの宝物(=テキスト)を作りながら学んでいけます。(構成も、イラストが豊富でゲーム感覚が取り入れられた楽しいものになっています。)
 使用の手引きである『にほんご宝船‐教える人のための知恵袋‐』(1050円)では、テキストの活用例紹介とともに、日本語学習支援を始めて間もない人にも日本語教育の専門的な知識が押さえられるようになっています。

 また、著者や他の使用者と情報交換や交流ができる専門サイトも準備されています。
(URLは、http://www.ask-digital.co.jp/takarabune/)

『運転免許学科試験問題集 仮免・本免(日本語版・中国語版)』

第30号で紹介した日中対訳『こつこつ日本語・運転免許』2003年改訂版、『運転免許学科教本・中国語版』改訂版に続き、最新版学科試験問題集が発行されました。

■仮免問題5種類250問 ■本免問題4種類360問 ■危険予測問題20問 ■全問解説付
発行・編集:中部自動車学校  翻訳:(財)中国残留孤児援護基金
同じ問題の日中国語版です。セットでご利用下さい。
日本語版¥500(税込) 中国語版 援護基金特価¥1,500(税込) 一般の方¥1,800(税込)
セット価格 援護基金特価(帰国者とその支援者)¥2,000(税込) 一般の方¥2,300(税込)

 購入希望者連絡先  (財)中国残留孤児援護基金
 電 話  03−3501−1050
 FAX  03−3501−1026

『すぐに使える!6か国語 保育の会話&文書便利帳』(CD-ROM付)
(中国語/韓国語/ポルトガル語/スペイン語/フィリピノ語/英語)

 日本に住む外国人の増加に伴い、幼稚園や保育園にも国際化の波が押し寄せている。この本は保育者が、日本語のよく解らない外国人の子どもや保護者とより円滑なコミュニケーションをはかれるようにと出版された。15のユニットからなり、各ユニットは、保育者が保護者や子どもと日々交わすフレーズをとりあげた @「話してみよう(基本編)」と「もっと話そう(応用編)」、Aユニットに関わる「保育の単語辞典」、B各国の遊びや童謡が紹介されている「みんなで遊ぼう・歌おう」から構成されている。@とAは全て6カ国語の対訳付きで、その読みがカタカナで書かれている。また、保育現場の事例やことばの発達について書かれている巻末の「保育者のための多文化共生ノート」も参考になる。
 付属のCD-ROMを用いて行事の案内やお知らせ等を各国語で作成できる。会話文の録音は入っていない。

編著者:外国人のこどもの保育研究会
発行所:チャイルド本社
定価:¥4600+税(サイズ:26×21p 119頁)

とん・とんインフォメーション

6月1日「九州中国帰国者支援・交流センター」開設

→詳しくは 5頁〈★厚生労働省から〉をご覧ください

『外国人を援助するためのハンドブック』

 1990年11月に中国語話者のために母国語での〈いのちの電話〉が始まりました。日本で最初にこの活動を始めた「関西生命線」から、電話相談で外国人を支援する活動に携わる人のためのハンドブックが出ました。内容は援助活動の意味と目的、異文化の中で暮らす外国人からの相談事例の紹介、有効な援助の方法、援助者に必要な資質等。

「関西生命線」編集・発行(2003年12月) 本体定価2000円 A5判101頁
注文・問い合わせは 関西生命線代表:伊藤みどりさんに電話かFAX
Tel:06-6441-9595/Fax:06-6443-3562
(Faxの場合は 住所、氏名、電話番号、希望冊数を明記のこと)
代金は冊子受領後指定された口座に振り込んで下さい。

とよなか国際交流協会『とよなかにほんごのあゆみ1999〜2003』(A4判181頁1210円)

 1999年、とよなか国際交流協会はそれまで行ってきた日本語教室を、外国人、ボランティア、国際交流協会の職員、アドバイザー、専門家などの参加によってつくる「とよなかにほんご」に転換。この報告書には、そういった様々な人々の葛藤や迷い、喜びや気づき等が綴られている。
 「とよなかにほんご」の諸活動の発足の経緯から現在までの歩みとその具体的な活動、現段階の課題がよくまとめられているが、様々な活動が深く地域と結びついてきたこと、多様な参加者が、あるときは教える側、あるときは教えられる側で、ともどもに活動してきたことがよくわかる。
 私たちが地域に暮らす外国人、外国出身の人とともによりよく暮らす―そのために何ができるか、どうしていけばいいか―こういった問題を解決していくため大変参考になる報告書である。
※入手希望者は下記郵便振込口座に「『とよなかにほんごのあゆみ』希望」と明記のうえ、1210円(送料210円を含む)を入金。

●口座番号:00900-8-100382
●口座名:財団法人とよなか国際交流協会事業口

母語(中国語)学習支援グループ『飛翔』、活動開始!

 子どもたちへの日本語学習支援が進む中で、子どもたちの母語はどうなっているのかについても、しばしば問題として取り上げられています。地域や学校においては、母語保持・母語支援の活動が行われつつありますが、まだ全国的な動きとは言えませんし、支援の内容や方法が共有されているわけでもありません。
 そんな折り、自身も中国から来日し日本語と格闘しつつ中国語も保ち続けてきた「元・子ども」たちが、現在格闘中の子どもたちを支援しようと中国語学習支援グループ『飛翔』を立ち上げました。今年の4月のことです。『飛翔』は大阪府豊中市を中心に、小学生や中学生の子どもたちの家庭を訪問して中国語学習の補助を行っています。日本での生活が長くなると、親たちの日本語習得が進まない一方で、子どもたちは母語である中国語をどんどん忘れてしまいます。もし、親と子がコミュニケーションをするための「ことば」が弱くなったり無くなったりしてしまったらどうなるでしょう。『飛翔』は自分たちの体験を生かした母語支援を進めていこうとしています。
 立ち上げから4ヶ月、まだ始まったばかりの活動ですが、『飛翔』の名前のように、大きく羽ばたく日も近いことでしょう。今後の動きに注目したいところです。
 問い合わせ先:「飛翔」事務局/0727-62-8120 e-mail:world_niwota@yahoo.co.jp
(現在ホームページを準備中とのことでした)

<移住労働者と連帯する全国ネットワーク>編の外国人の生活マニュアルを二冊紹介する。

ブックレット『まるわかり外国人医療 ―これであなたも六法いらず―』

(2004年1月刊)では、主に移住労働者の医療と日本の制度、自治体窓口との交渉等についての様々な事例が取り上げられており、帰国者・支援者にも参考になるだろう。巻末の「移住労働者 医療及び福祉制度関係法令通知集」が充実している。

B5判93頁、定価800円+税(送料別)。
申し込み先:移住労働者と連帯する全国ネットワーク
〒112-0002 東京都文京区小石川2-17-41 TCC2-203
Fax:03-5802-6034/ E-Mail:fmwj@jca.apc.org

もう一冊は、

日中/英対訳『日本で暮らす外国人のための生活マニュアル2003/2004年版』

だ。(B5判350頁、定価1800円+税、スリーエーネットワーク刊)

入国と在留/労働と健康/.結婚・妊娠・出産・離婚/子ども/その他と、日本での生活全般を網羅する内容であり、DV(家庭内暴力)に関する相談先、対応まで扱っている。巻末には全国の支援団体、日本語ボランティアネットワーク等の連絡先を掲載。

ニュース記事から

ニュース記事から 2004.05.11 〜 2004.09.10

05/24 血縁なしで退去処分33人 残留孤児ら在留許可訴え
06/29 残留孤児の生活支援を 〈九州弁護士会連合会〉が国などに勧告へ
07/05 海外の日本語学習者235万人に 5年で12%増=背景にアニメ、ゲーム
07/15 賠償求め香川県内孤児5人 岡山県原告団に加わる形で追加提訴
07/18 静岡−〈中国帰国者を励ます会〉発足 担当者が生活サポート
07/23 新たに18人(京都・奈良)が集団提訴 残留孤児訴訟−京都地裁
08/02 長野−中国帰国者県連絡会が結成大会 国家賠償請求訴訟を支援
08/06 長野−中国残留孤児国家賠償訴訟期日決まらず 手続きの遅れに批判
08/15 生活保護にかわる老後の補償制度確立を 中国残留孤児ら600人が全国集会に
08/19 残留孤児の生活保護世帯 衛星契約認める−北九州市が通知
08/24 ロシアにも残留日本人孤児、厚生労働省初調査へ
08/30 中国残留孤児 里帰り中の生活保護費返還不当 再審査請求

事例紹介

為(ウェイ) 夢(モン) ― 夢のために―

 残留孤児の二世として、1人息子と中国人の夫と共に日本にやってきたRさんは、五年間、日本語の勉強と仕事に精力を傾けてきた。その努力が報われ、最近では、夫婦とも日本語にはあまり不自由しなくなり、仕事も安定し、日本での生活基盤が固まってきた矢先、突然Rさんが昼間の仕事以外に、夜も働き始めたことを耳にした私は、きっと何かがあるに違いないと感じ、どうしても彼女に話を聞きたいと思った。

 「そうなの」Rさんは私の問いに率直に答えてくれた。「実は高校進学相談の時、息子は公立高校に入るのは難しくて、滑り止めとして私立も受けた方がいいと言われたの。万が一私立に入った時の学費を考えると、もうちょっと収入を増やさないとやって行けないからね」
 Rさんはそう語りながら隣の部屋へ目線を送った。そこにはゲームに熱中する十五歳の息子M君の姿があった。「いつもこのザマよ。勉強嫌いでね。塾に行かせても行ったふりしてすっぽかしたりして、ゲームセンターで時間になるまで遊んでいたこともあるのよ。でも、親としてやるべきことはやらないとね。もし私立にでも入ったら、「お金が無い」なんて、親としては失格でしょ。でも何とか頑張って公立高校に進学してもらうのが私達の夢」
 確かに多くの遊び盛りのこの年頃の子どもたち同様、M君に親の進学に対する心配と苦労を理解してもらうには、もう少し時間がかかるかもしれない。一方で、子どもや孫に、よりレベルの高い教育を受けさせたい、という願いから来日を決意する帰国者二世世代も少なくない。前の世代が後の世代に託す夢と希望は、もしかしたら普通の日本人の家庭よりずっと大きく、また重いかもしれない。少なくとも、Rさん一家はそうである。
 既に二ヶ月間、Rさんは過酷な日課をこなしてきた。夜九時半に出勤、夜通し流れてくる弁当のラインの前に立つ。翌朝の五時半、帰宅と同時に、息子やご主人の朝ごはんや昼のお弁当作りに取りかかる。七時ごろ寝床に入り、約三時間の仮眠を取る。午前十時に起き、十一時に昼間のパート先である近くのスーパーへ向かい、午後四時に再び帰宅。一家の夕飯作りや洗濯を済ませる。夕方七時に二度目の仮眠をとり、夜九時に起き、そして九時半にまた夜のパートのため家を出る。
 「疲れ?もう慣れたね!慣れれば平気。睡眠不足?大丈夫。どっかで読んだ本に書いてあったけど、人間はね、一日に四〜五時間の睡眠さえとれば、健康に害は無いんだって。私は五〜六時間は寝てるから、問題ないよ。それに子どものためだと思えば、力が湧いてくるの」以前より明らかに痩せたRさんの頬に笑みが浮かんだ。
 あれから三ヶ月、M君の受験結果が気になった私は、再びRさん宅を訪れた。
 「お蔭さまで、息子は公立高校に合格したよ。先生の話を聞いたところ、試験の点数が高く、この辺の一番いい高校にも入れたのにだって」。嬉しさを抑えきれないRさんの目に、きらめくものが見えた。そして、Rさんの後ろに、M君の姿があった。
 「生まれて初めてあんなに猛勉強した。だって、親が命を削ってまで僕のために頑張っているのを見て、このままだと罰が当たると思ったから。父や母だって、中国にいた時のほうがよほど楽しそうに見えた。あっちには友達も一杯いるし、毎日笑っていた。でも今は働きっぱなし。僕が公立に上がらないと、母の身体が持たないし」照れくさそうに語るM君は三ヶ月前より確かに逞しく、また頼もしくなった。「それに、今回何ヶ月か猛勉強してみてよく分かった、勉強って、「気合」だよ。その気になるのが一番大事。その気さえあれば、遅れた分も追い上げられる。もう僕は勉強が怖くない」

 今、Rさんは相変わらず昼夜を問わずに働いている、「息子の大学の学費のために」とRさんはいう。「でも、あと三年間だけ、こうやって懸命に働くの。学費が貯まったら、夜のパートは辞めて、昼間も二、三日だけにするわ。後の人生は卓球で充実させたい。昔中国にいた時、私は市の卓球試合にも出たことがあるのよ!こう考えると、これからの人生も楽しみになってくるわ」
 親が自分に託した夢を果たしたM君。彼は、同時に新たな夢をまた親に与えたと言える。それは新天地での親自身の夢でもある。

(所沢センター 小松)