HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第26号(2003年1月21日発行)  PDFファイル
<巻頭言>新春雑感
地域情報ア・ラ・カルト
自立研修センター閉所後の福島
長野県日本語ネットワーク
CCS/世界の子どもと手をつなぐ学生の会
行政・施策(厚労省、文化庁、援護基金)
研修会情報
教材・教育資料
とん・とん インフォメーション
※ニュース記事から
事例紹介 〜赤ちゃん誕生〜

巻頭言

新春雑感

 中島みゆきの「樹高千丈落葉帰根」をご存じでしょうか。「落葉帰根」、中国残留孤児の方々につい思いをはせてしまう歌です。
 あけましておめでとうございます。構造改革とデフレ経済問題は別として、2002年という年を振り返ってみると、重要なキーワードとして“帰国”という言葉が浮かんでくるように思います。1つは北朝鮮の「拉致問題」、もう1つは中国帰国者のうちの4分の1に当たる637人による国に対する損害賠償訴訟が起きたことです。国は国民一人一人に対してどういう責任を負い、家族という基本的集団をどう守るべきか、政治と外交の原点というものを考えさせられた年でした。
 訴訟については今後の成り行きを見守りたいと思いますが、北朝鮮拉致被害者に対しては「支援法」があっという間に決まるなど、政府・自治体の迅速な対応に複雑な思いを禁じえません。また、「拉致」問題の陰に隠れてしまいましたが、2002年度に認定された孤児5名の肉親調査のための“帰国”もありました。
 2002年はまた、「支援・交流センター」事業が本格的な活動に入った年でもありました。この支援事業は、帰国後数年までというこれまでの支援の範囲を超え、長期的支援の枠組みを打ち出した点で大きな意味を持つものです。東京と近畿の2つの支援・交流センターで数多くの帰国者やその家族が通学課程、遠隔(通信)学習課程に参加し、交流事業、相談事業も開始されたということで、今後を大いに期待したいと思います。
 所沢センターは、中国・サハリン等帰国者に対する日本語教育と支援に関わる情報を支援者間で共有すべく、活字メディアとしてこの『同声・同気』、ITメディアとしてホームページでさまざまな情報を発信してきました。おかげさまで、このニューズレターは今号で9年目に入り、毎回約2000部を、主に身元引受人や自立指導員の方々、帰国者子弟が在籍している小中高校の先生方、日本語指導の講師の方々や帰国者支援機関・団体等に送らせていただいています。また、ホームページも、昨年12月、アクセス件数10万件を超え、まもなく6年目に入ろうとしています。97年のオープン当時、見てもらえるものかどうか不安でカウンターが500、1000と増えていくごとにほっとしたのが昨日のようです。現在では毎月のアクセス数は3000位で、退所した帰国者2世3世などの若い世代から書き込みやメールをもらうまでになりました。
 孤児世代はもちろん、2世3世世代もそれぞれに生活や学習の大きな問題を抱える現在、当ニューズレター、ホームページも、帰国者とその家族、そして支援者の方々に少しでも役立つ情報の発信をめざして努力して参りたいと思います。
 2003年はイラク・北朝鮮を巡り、不穏な情勢での幕開けです。平和と帰国者の幸せを祈念します。今年もよろしくお願いします。

地域情報 ア・ラ・カルト

自立研修センター閉所後の福島

 2002年8月30日に、福島県中国帰国者自立研修センターが閉所になりました。現在は、当時の自立研修センターを運営していた中国帰国者自立支援協会が、場所を郡山市援護化学株式会社内に移し、「中国帰国者日本語学校」を開いています。県からの補助はありませんが、受講費用は無料、講師もボランティアで行っています。
 教室は週4回(月、火、水、金、9:00〜11:30)開かれており、クラスは初級1クラスです。現在16名が通っていますが、いつも参加しているのは13名ほどだそうです。テキストは『生活日本語』を中心に、補助教材も使っています。学習期間は特に定めていません。講師はセンターで教えていた3名が担当しています。交流等のプログラムはありませんが、生活相談、就労相談には必要に応じて対応しています。みなさん大変真面目でなごやかに学習しているとのことです。

場所:援護化学株式会社内
住所:郡山市図景1-17-24
電話:024-932-3068
福島県中国帰国者自立支援協会

★閉所のお知らせ

鹿児島県中国帰国者自立研修センターが、平成14年11月末をもって 閉所しました。

長野県日本語ネットワーク(NNN)

 長野県日本語ネットワーク(以下、NNN)は、長野県内における日本語学習者、学習の支援者・団体等会員に必要な情報交換の場、相互学習の場、日本語学習支援の輪を広げ、ゆるやかな「つながり」を形成することを目的に、約3年前に発足した団体である。
 現在、個人会員90名、賛助会員9団体で構成されており、Naganoken Nihongo NetWork News という会報での情報の共有・提供を根幹に、その活動は日本語ボランティア養成講座や信州日本語教室フォーラム(ともに毎年開催)の企画・運営協力、文化庁事業・地域日本語支援コーディネーター研修(平成13年度から)の共催など多岐に渡っている。
 また、学習支援者の「学習会」の企画・運営協力・講師派遣なども行っている。
 本年度は、上記の活動の他に、外国籍児童就学支援プロジェクト=サンタプロジェクト※に参画した。県内の学齢相当の外国籍の子どもの4人に1人が未就学であるとの県の調査を深刻に受けとめてのことである。この事業はNNNも田中康夫県知事や県国際課、県国際交流推進協会、県内の経済団体などとともに呼びかけ人となり、援助の輪が県内外に大きく広がり、多くの寄付金や文房具などの物品を集めることができた。また、今年度から始まった文化庁からの委託事業「親と子の日本語教室」にも繋ぎ役として参画し、地域の支援者と連携して県内3カ所で教室が開催されている。
 NNNは様々な日本語支援ボランティア活動だけでなく、「外国籍県民の現場の課題を克服する」という点で、県内の様々なボランティア(個人・団体)が県などの行政とも協力しあうためのパイプ役にもなり、ときには主体者にもなり活動をつづけている。
 問い合わせ先はNNN代表・春原(すのはら)直美さん (E-mail:yuuyuu@janis.or.jp)まで。

※(School Attendance Support Project for Non-Japanese Children To Offer Aid)
※サンタプロジェクトについてはhttp://www.avis.ne.jp/~anpie/santa/を参照。

CCS/世界の子どもと手をつなぐ学生の会

 私たちは、東京都内を中心に外国の文化的背景をもつ子どもをサポートをしている学生NGOです。CCSとは「Club of Children and Students working together for multicultural society」の略です。9年前に八王子で活動を始め、現在では42大学170人の学生がボランティア活動に参加。中国、フィリピン、ペルーなどから来た子ども約110人を支援しています。この中には中国帰国者3世も大勢含まれています。日本語・教科・適応・進学など総合的なサポートを行っています。
 八王子・武蔵野・目黒・練馬で週1〜2回の学習教室を開いているほか、子どもの家庭や一部の小中学校を学生が訪問する派遣サポートも行っています。サポートは1対1を原則としていますが、学習の遅れが顕著な子どもや中3生には1人に対して2〜3人の学生がチームを組んで担当することもあります。
 そのほか、子どもをエンパワメント(力をつける)するための多文化交流イベントを各教室ごとに実施するほか、受け入れる側の日本の子どものための国際理解イベントも武蔵野市教育委員会と連携し実施しています。
 いま大きな問題は、子どもたちの日本語学習(特に読み書きの「学習日本語」)での立ち遅れや教科学習での「落ちこぼれ」です。また、日本の学校や社会によるアイデンティティ否定と同化のプレッシャーの強さは、多くの場合いじめにつながったり、子どもの母語や母文化を否定するだけでなく、学習への意欲や生きていくパワーを奪います。子どもとの話し合いだけでなく、親や学校との連携を重視しています。
 そして、日本の子どもに比べて低すぎる高校進学率(50%以下!)を改善するために中学生への進学の動機付けと学習支援の強化に取り組んでいます。さらに、大学への進学意欲をもつ高校生へのサポートも始めています。
 私たちは外国の文化的背景をもつすべての子どもがこの日本の地で、または世界で自己実現できるよう、また日本の子たちにとっても必要な「多様性」や「個性」が尊重される"多文化共生社会"の実現をめざし、これからも頑張ります!

(代表 長倉利恵)

<会の連絡先>CCS事務局
〒141-0021 東京都品川区上大崎4-6-22 司牧センター内
tel & fax: 03-3779-5719
e-mail ccs21@nifty.com
URL http://homepage2.nifty.com/ccs21

第25号で紹介した千葉の「土曜学級」の連絡先の電話番号が違っていましたので、訂正します。

電話番号 訂正→ 090-4220-9598

行政・施策

★厚生労働省から

中国残留日本人孤児の訪日対面調査の結果について

 本年度、日中両国政府で新たに認定した中国残留日本人孤児6人のうち、5人が他の残留邦人8人とともに、平成14年11月21日より12月4日まで集団一時帰国しました。
 そのうち、「苑淑敏」さんが11月22日厚生労働省において、肉親ではないかと申し出のあった関係者と対面し、長崎県出身の「佐藤範子」さんであることが確認されました。
 なお、厚生労働省では、引き続き、中国残留日本人孤児の身元判明につながる情報提供を広く呼びかけております。

平成14年度身元引受人会議

 同会議は、東ブロックが平成14年9月10日、11日山形県で(身元引受人23名、県職員等18名出席)、西ブロックが平成14年12月2日、3日京都府で(身元引受人17名、県職員等23名出席)それぞれ開かれ、全体会議とグループ討議が行われました。
 1日目は、厚生労働省による中国残留邦人等に対する援護の説明及び介護保険制度に関する講演があり、その後グループに分かれて身元引受人による体験発表及び参加者によるグループ討議が行われました。
 グループ討議では、就労問題、呼び寄せ家族問題、日本語習得などをテーマとした体験発表に基づき、各県における現状と問題点が報告され、活発な意見交換がなされました。
 2日目は、前日の討議内容の発表及び厚生労働省への質疑応答が行われました。 多くの参加者から、他県の実情が把握できて大変よかった、今後の身元引受人業務を遂行していく上で大変参考になったとの感想が寄せられました。
 同会議は、身元引受人の方々が日頃抱えている諸問題等の対処方法について意見交換を行い、今後帰国者とその家族の方々が日本社会へよりスムーズに定着自立できるよう指導していただく上で大変意義深い会議であることから、来年度も引き続き東・西両ブロックで同会議を開催していく予定です。

★文化庁から

文化庁「地域日本語支援コーディネータ懇談会」の開催報告

 文化庁では、地域社会に滞在(長期生活)する外国人の増加や日本語学習需要の増大に対応し、地域の実情に応じた日本語教育の充実を図るため、様々な事業を展開しています(注1)。例えば、平成6年度から12年度までは、地域日本語教育事業を行いました。そして、平成13年度からは、各地方自治体・国際交流団体等の協力を得ながら、地域の中核的な日本語支援コーディネータの研修事業(文化庁の日本語教育大会における「地域日本語教育活動推進シンポジウム」も含む)を((社)国際日本語普及協会に委嘱して)全国30箇所で実施し、平成14年度からは、同じく地方自治体等の協力を得ながら、親子参加型の日本語教室の開設・運営事業を全国13箇所で委嘱、展開してきています。
 これらの事業の中で例えば、地域日本語教育事業や研修事業の報告書などにおいては、地域における日本語教育関係機関や団体間及び関係者(個人)間の繋がりや連携・協力(ネットワーク)の充実という目標が掲げられたり、コーディネータという役割を担った人々の存在の重要性等が述べられたりしています。
 こうした状況に鑑み、昨年の12月6日(金)13:00〜17:30、国立オリンピック記念青少年総合センター(国際交流棟国際会議室)において、「地域日本語支援コーディネータ懇談会〜日本語支援者の研修方法・内容や連携・協力の在り方について考える〜」を開催しました。
 当日は、前半に、国語課から地域日本語支援活動の充実に関連した施策説明を行い、その後、全国各地域から集まっていただいた27人の懇談会参加者(コーディネータ、ネットワークの代表者、行政や国際交流協会等の担当官、学識経験者など)それぞれが、各地域の支援活動の現状について概要説明を行いました。後半は、国際日本語普及協会の担当者や文化庁の事業に関係した学識経験者の方々の協力を得ながら、(1)地域におけるネットワークの構築、維持、活用やコーディネータの役割、(2)地域日本語支援コーディネータ研修、(3)日本語ボランティアを対象とした専門的知識・能力の向上(ステップ・アップ)のための研修などについて、懇談・意見交換を行いました。
 今後は、当日の意見・説明や懇談・協議の内容等を踏まえつつ、地域日本語教育のさらなる充実へ向けた施策の展開を図っていきたいと思います。

(注1)詳細は、本紙第24号(5月21日発行)8頁の「文化庁から 地域社会における日本語教育活動の充実へ向けて−新規事業の御案内」を参照のこと。

(文化庁国語課日本語教育調査官 野山 広)

★援護基金から

中国帰国者支援・交流センター  2、3世の教材費を半額援助

 支援交流センターにおいて学習する方々の教材費については、現在帰国者とその配偶者については無料ですが、二世三世については、教材費の実費相当を納めてもらっているところです。
 このたび、10月から1回目の学習コースを終了し、その後2回目のコースを習得しようとする熱心な二世三世の方について教材費の半額を援助する制度を始めました。

研修会情報

@第7回子どものための日本語教育フォーラム

主催:全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会(全海研)
日時:2月22日(土)13:00〜17:00
場所:東京都港区立三光小学校1F多目的ルーム
申込:メールまたはファックスで info@zenkaiken.net/Fax:045-564-8764 氏名・所属(または自宅住所)電話・メールアドレス記入のこと
参加費:会員無料、会員以外1000円

※第T部:現場から/第U部:研究者から「家庭と学校におけるバイリンガル教育」(名古屋外国語大学中島和子)/第V部:行政から「JSLの動向」(初等中等教育局国際教育課 浜谷貢)

A日本語フォーラム2003 in 兵庫

主催:日本語フォーラム関西地区準備会/同全国ネット(仮称)準備会
日時:3月2日(日)11:00〜16:30
場所:コミスタ神戸
参加費:500円(但し解説書は実費500円)
定員:100名
申込:ファックスまたはメールで Fax:078-431-0372/fujikawa@pp.iij4u.or.jp

※分科会1)多文化・多言語社会の創造/2)日本語学習機会の公的保障/3)外国人等子どもの教育保障/4)法制度化の具体的視点

B異文化間教育学会 第24回大会

日時:5月31日(土曜)・6月1日(日曜)
場所:信州大学教育学部(長野県長野市)
申込:大会準備委員会 事務局(信州大学教育学部大会準備室)
問い合わせはできる限りe-mailで ibunka@snow.shinshu-u.ac.jp
TEL:026-238-4411(火・水),026-238-4196(木・金) FAX:026-238-4196

※「異文化間カウンセリングの今日的課題(仮)」/「異文化間コミュニケーション能力を再考する」

研修会報告

東京都北区稲付中学校〈日本語適応指導教室〉公開授業「生活言語から学習言語への移行期における日本語指導の取り組み」H14年11月14日

 稲付中学校適応指導教室(H6年度開設)は、当初は中国帰国生徒が中心であったが、年々帰国生徒は減少し、現在は国際結婚や就労のために来日した保護者に伴われてきた子供たちがほとんどとのこと(今年度通級生徒は36名で、うち26名が中国語母語話者、その他タガログ語、タイ語、ベンガル語等)。同教室は、「学校の授業内容を理解する/中学卒業後の進路を選択する力をつける」ために、生活言語から学習言語・教科までの指導を主にマンツーマン形式で行っている。この「進路」の具体的目標となる高校進学については、入試の特別枠が適用されない外国人生徒が増えている中、いっそう重要な課題となっている(H13年度は卒業生18人中17人が都立や私立の高校に進学)。また、いじめや差別などについての相談や外国人生徒同士の交流の場としても教室が機能しているとの紹介もあった。
 当日は、中国から渡日し高校受験を控えている3年生A君(滞日約1年)の「読解」授業と、B君(滞日約1年9か月)の「課題作文」授業(どちらも約30分)をそれぞれ見学した。
 「読解」は500字程度の説明文を自力で読解し設問に答えを記入した後、文中の語彙・表現の理解を確認し文型練習を行うという授業であった。文章は、表現・長さともまだまだ易しいレベルのものだったが、内容は知的な興味・関心に耐えるものが取り上げられており、科学的な読み物であるため、説明も論旨の展開も具体的で取り組みやすいものであった。ざっと一読させた後、教師から「80%くらいはわかる?」という問いかけがなされる。この「80%」が、教師と生徒との重要な“暗号”のようなものに当たるのだろう。内容が“幼稚”ではない知的なものであること、レベルがその時点での生徒の日本語や総体的な知識の「実力+α」(つまり「80%」は理解できる)のものであること、こうした素材を用いていかに練習を量的に積み重ねていけるかが、意欲を引き出し読解力を伸ばしていくための大切なポイントなのではないかと感じられた。
 「課題作文」は、かなり長文のエッセイについて、@作者の一番言いたいことを抜き出す、Aこれに賛成か/反対か表明しBその理由を書く、という課題をこなしながら、最後にこの@ABをつなげて読後の感想文を完成させるというものであった。これは、近年、都の国語の入試問題では読解の後に自分の意見や考えを200字程度にまとめるという課題が出されるようになり、外国人生徒のほとんどがこれに手をつけようとしないため、これを克服する方法として試みられているものとのこと。ある程度の読解ができているにもかかわらず書くことが苦手だという生徒は、このような一種の定型作文にのっとって書く練習を重ねることで作文力を伸ばしていくことができる、授業を参観してそれを実感することができた。
 この後の協議会では、こうした学習言語を視野に入れた支援を広げていくためには指導者間の横の連携が必要であること、また、小学校と中学校との連携、特に話せるのにまるで書けないというような子どもに対しては小学校時から書くことの指導を十分に組み込むことが大切なこと、そのために有効な指導法等について意見交換があり、非常に参考となる研修会であった。

(所沢:佐藤)

教材・教育資料

★中国帰国者支援・交流センターの各コースで使用しているテキストを改訂し、この度(財)中国残留孤児援護基金より出版しました。(注文先)TEL:03-3501-1050/FAX:03-3501-1026

@『求職会話T』A4判79頁 『求職会話U』A4判75頁 各CD付 2冊で\1500(税込み)
 就職希望者のための日中対訳テキスト。履歴書の書き方から就職面接や職業安定所利用の際の会話、求人広告を見ての電話による問い合わせ等、場面ごとに適切な受け答えができるよう構成されている。巻末には簡単な文法説明がついている他、聴解練習もあって、自学自習が可能。

A『話してみよう 近所の人と@』A4判91頁 『話してみよう 近所の人とA』A4判81頁 CD付で 各\1000(税込み)
 近所の人とよりよい人間関係を結び、より親しくなれるような日本語の会話や日本事情を学ぶテキスト。町内会・冠婚葬祭のつきあい・学校や保育園の先生とのやりとりが題材。教材は日中対訳で、構成は各課のテーマに基づいたモデル会話・重要語句・文型の解説・重要表現や文型の応用練習・テーマに沿った日本事情のコラム等。

B『のんびり学ぼうT・音読版』A4判137/29頁 『のんびり学ぼうU・音読版』A4判121/33頁 CD付で 各\1500(税込み)
 日本語の入門から、ゆっくり学び直したいという一世世代対象のテキスト。文字を大きくし、高齢者でも見やすいようにレイアウトを工夫。他の教材はすべて自学自習用に作られているが、これは支援者の助けを受けながら学習する教室用初級文法教材。音読版もついていてCDを聞きながらの予習・復習も可能。

C『運転免許学科教本・中国語版』A4判252頁 \4000(税込み)ただし、中国帰国者とその家族、および支援者には、特別価格\3000(税込み)
 中部日本自動車学校の「学科教本」の完全中国語版テキスト。巻末には、重要語彙も記載。

『こつこつ日本語運転免許』A4判172頁 \2000(税込み)
 日中対訳の運転免許学科試験対策問題集。試験に出る可能性の高い問題に焦点を当て、教程別に整理。日中対訳のため、中国語訳を参考にしながら日本語の微妙な表現の違いも学習でき、読解練習にも役立つ。先に紹介した「学科教本・中国語版」と併用しての学習が便利。

★なお、中国帰国者とその家族で、これらのテキストを用いた中国帰国者支援・交流センターの「遠隔学習課程(通信学習)コース」または「通学課程コース」受講を希望される方は、直接、支援・交流センターに連絡してください。(一世世代はテキスト代無料、二・三世は一定の条件を満たす者にテキスト代一部援助等の措置がありますので、この点についても詳しくは支援・交流センターにお尋ねください。) TEL:03-5807-3171・3173(月曜休)

高校入試特別措置等の情報更新!
−都道府県立高校の中国帰国生徒及び外国籍生徒への対応−

 一昨年から当センターHPにアップしている「全国中国帰国生徒等の高校入試特別措置情報」及び「全国中国帰国生徒等の中学校編入関係情報」を、各都道府県教育委員会に問い合わせ(2002年12月現在)、更新しました。前回非公開であったところが公開になったものもいくつかありました。また、今回は各都道府県教育委員会のHPに直接リンクできるところも増えました。当センターHPの〈進学進路支援情報〉コーナーにアップしていますが、暫くはトップ画面〈ニューコンテンツ〉から直接入れるようになっています。ぜひご覧下さい。

大阪中国帰国者定着促進センターのアンケート集計結果について

 大阪中国帰国者定着促進センターでは去る12月4日「日中国交正常化30周年を祝う中国帰国者と関係者のつどい」を開きました。この催しには帰国者90名、職員等関係者50名が出席し、帰国者のスピーチや、京都大学の蘭(あららぎ)先生の講演がありました。この会にさきがけて、大阪センターでは9月中旬に平成5年4月以降に入所した帰国者に対し、現在の生活等に関するアンケート調査を行い、調査の結果はこの「祝うつどい」の会場で資料として関係者に配布されました。以下にそのアンケートの内容を簡単にご紹介したいと思います。
@アンケートの対象者:平成5年4月以降に入所して現在大阪府下に住んでいる帰国者116名。(回答総数は73名)
Aアンケートの方法:郵送による送付、回収
B質問項目:帰国後の年数/住所の変更の有無/同居家族の有無/在日二世世帯数/就労での問題点/自立状況/就職の障害/中国に残している子ども/子どもの呼び寄せ/趣味、娯楽/日本のテレビの理解度/交流の場/生活保護受給情況

 これらの質問に対する回答から特徴的なことは、
・一世夫婦だけで住んでいる家族が比較的多く、二世家族は自立している場合が多い。
・一世一人に対し平均2.62世帯の二世世帯がいる。
・呼び寄せの二世世帯が就職活動で最も困難なことはやはり日本語で、14名の回答から呼び寄せ家族の全部、または一部が全く日本語を勉強していない、とあった。
・一世の趣味や娯楽で半数以上が無回答や「何もない」と答えている。次に多いものは散歩や、中国語のビデオ鑑賞。
・圧倒的な数(83.6%)が交流の場が欲しいと答えているが、一世が地域の老人会や集まりに積極的に参加するのは極稀である。
・85%が生活保護受給世帯である。そして受給額を充分と感じているのが33%、不充分と感じているのが55%である。

なお、このアンケート資料を希望の方は以下まで。
大阪中国帰国者定着促進センター(TEL:06-6321-1967 川口事務局長)

ホームページ紹介〈子どものにほんごJSL〉

⇒ http://jsl2.u-gakugei.ac.jp/m_index.html

 JSL(第二言語としての日本語)はこのニューズレターでも何度か取り上げているテーマですが、今回は「学校教育におけるJSLカリキュラム」(事業主体:文部科学省初等中等教育局国際教育課)に関するサイトを紹介します。日本語を母語としない子ども(小中学生)の支援者向けのサイトはすでにいくつかありますが、今回紹介するサイトは、メンバー登録すると「会議室」で実際の授業作りについての情報交換・意見交換ができるというのがポイントです。
 子どもの学習支援に関わる多くの人が、語彙文型などを中心とした日本語指導だけではなかなか教科の学習についていけないと感じていることは、既に指摘されて久しいですが、“じゃあ教科の学習につなげていくにはどうしたらいいか”となると、まだまだみなさん手探りの状態のようです。JSLカリキュラムは、そんな悩みを持つ人たちに活用してもらうことを目指して開発されているもので、平成13年度は小学校における「トピック型」カリキュラムを、平成14年度は小学校における「教科志向型」カリキュラムを、今後は中学校の開発を行う予定だそうです。このホームページでは、授業作りのツールとなるAUカード*、授業例などを見ることができます。もっと詳しく知りたい、自分からも発信したいという人は、JSLメンバーに登録すると、すべてのAUカード・参考指導案の閲覧・ダウンロード、会議室での情報・意見交換、自分の指導案・実践記録のライブラリーへの投稿などができるそうです。「カードを活用して自分一人で授業を組み立てて・・・」となると、経験の少ない指導者には初めはかなり大変かもしれませんが、ホームページの中の授業例等を参考に、とりあえずいろいろ試してみて、その結果をまたホームページに還元することによって、いろいろな実践例が蓄積され、カリキュラムの姿が見えてくるのではないでしょうか。まずは、一度のぞいてみてください。
 子どもに関するリンク集、イベント情報、出版情報なども参考になると思います。

 *AUというのはActivity Unit(活動単位)のことで、教室での学習活動に含まれる様々な活動(例.知識を確認する、観察する)をより小さい活動に単位化したもので、分類・整理されてリストになっています。それを授業作りで活用しやすいように、活動単位毎にカードにしてあります。カードにはその活動で用いる日本語表現の例が載っていて、裏には授業作りの例が示してあります。

とん・とんインフォメーション

『東京外国人相談窓口マップ』A3判1枚(裏表2頁)

 外国人が母語で相談できる都内72の機関、団体の窓口を地域の相談窓口、専門相談窓口(労働、法律、在留資格、医療、留学生関連)に整理し載せている。表頁は最寄りの窓口を利用できるよう、それぞれの機関をJR線、私鉄線に沿って配した地図になっている。裏面は各窓口の電話番号、対応言語、相談曜日と時間帯、最寄り駅の一覧になっている。日本語版、中国語版、ロシア語版を含め全12言語あり、都内各地の国際交流協会で無料配布している。

(財)東京国際交流財団のホームページでも紹介している。(http://www.tif.or.jp/koryu/map/)
作成:東京国際交流団体連絡会議・外国人相談事業部会(2002年発行)

「中国帰国者の会」からのお願い"「養父母救済基金」にご協力を!"

 長春市の「日中友好楼」には12名の残留孤児「養父母」が暮らしています。この建物は、1990年に日本人の1億円の寄付によって建てられました。土地は長春市が提供し、市の中心部に建てられています。しかし、長春市の財政も逼迫しており、4年ほど前から家賃と暖房費を自己負担せざるを得なくなり、深刻な事態を招いているとのことです。
 中国帰国者の会では、2002年の夏、「日中友好楼」を訪問した際に現状の深刻さを聞き、「養父母救済基金」を立ち上げました。中国帰国者の会は1982年に残留婦人の鈴木則子会長ら10数名で始まり、現在では1,000名以上の会員や支援者の協力を得て、生活相談や日本語教室の開設等、帰国者支援活動を続けている団体です。
 12名分の年間の暖房費は日本円に換算すると約30万円ほどになるとのこと。ご協力くださる方は下記の口座に。

振込口座
みずほ銀行 三鷹支店 普通 4055398 中国帰国者の会
郵便振替口座 00140-8-25052 中国帰国者の会

帰国者の会事務局:
tel/fax 0422-47-4677
ホームページ ⇒ http://kikokusha.tripod.co.jp/

『天を恨み 地を呪いました−中国・方正県の日本人公墓を守った人たち』

 黒竜江省方正県に、重さ1トン余りもの花崗岩で作られた「方正地区日本人公墓」がある。終戦直後、引き揚の混乱の中で無念にも命を落とした満州開拓団の人々の遺骨が納められている。この本は、中国残留婦人の松田ちゑさんが、炮台山麓で野晒し状態だった開拓団民の遺骨を埋葬したいと県人民政府に請願してから墓石が据えられるまでの経緯を、実際に関わった人々の証言や様々な資料に基づいて記録している。また、多くの老幼婦女子が襲撃や集団自決等で亡くなったいきさつも、松田さんの逃避行や難民収容所生活の体験を交えて綴られている。巻末には資料編として「方正県地区日本人公墓の墓参者記録(1982〜2001年末)」「墓参実用ガイド(空路、運賃、宿泊先)」が付されている。

編著:奥村正雄 A5判173頁2002年6月発行
1冊700円、送料240円(下記へ連絡すると振込み用紙を送ってもらえます)
連絡先 〒262-0033 千葉県千葉市花見川区幕張本郷7−7−3
電話:043-272-9995
FAX:043-272-0214
メール:k.beijing@mx5.ttcn.ne.jp

〈外国人のための医療情報あれこれ〉

大阪

府国際課は平成13年度に「AMDA国際医療情報センター」に委託して、「在住外国人のメンタルヘルスに係るプロジェクト」を実施。このプロジェクトにおいて、ストレスについての理解を促しストレスを緩和するための方法を記したハンドブックを9言語で作成した。

『こころとからだの健康のために−外国人向けストレスマネージメントハンドブック−』A5判22頁〈英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、ハングル、フィリピノ語、ベトナム語、タイ語、日本語〉

内容は、@日本で生活する外国人のストレスAストレスを知るBストレスとつきあう方法、付録:相談窓口リスト。同ハンドブックの内容はPDFファイルでダウンロードできる。→ http://www.pref.osaka.jp/kokusai/amda.htm

名古屋市

98年に設立されたNPO「プラザなごや」を拠点として、無料健康相談や通訳の派遣など在住外国人の医療支援、電話、ファクス、メールによる医療情報提供を行っている。
連絡先:Tel/Fax:052-588-7040 受付:水〜土の13:00〜17:00 E-mail: mica@spice.or.jp URL:http://spice.or.jp/mica/

東京

都健康局のHPより〈英・中・スペイン・タガログ・ポルトガル〉の6ヶ国語版パンフレット『予防接種と子供の健康』がPDFファイルでダウンロードできる。⇒ http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/kansen/boueki/yobou/yobou.htm
健康局総務課広報係 Tel:03-5320-4345・Fax:03-5388-1425

また、都保健医療情報センターでは受付電話番号03-5285-8181で外国人向け医療情報サービスを、医療機関向けの電話による救急通訳サービスを03-5285-8185で行っている。

神奈川

外国籍情報支援ネットワーク「ソナの会」が、外国語の対応が可能な医療機関を調査した結果をまとめた『外国人のための医療機関リスト2002-神奈川県-』(英・中・ハングル・ポルトガル・スペイン・カンボジア・ベトナム・ラオス・タイ・タガログの10言語、6分冊)をもとに、独・仏語などを加え、20言語対応、538ヶ所の医療機関リスト(日本語版)を作成。内容は、@言語別対応医療機関索引A地域別医療機関情報B休日診療所C多言語相談先他。

問い合わせ・申し込み先:かながわボランティアセンター気付 ソナの会
神奈川区鶴屋町2-24-2-12F Tel:045-312-1121 内線 3242/Fax:045-312-6307
※原則として機関・団体が対象ですがご要望がありましたらご相談ください。

また、「MICかながわ」の担当する県モデル事業により、県内6病院に中国・韓国・タガログ・スペイン・ポルトガル語5ヶ国語の通訳を派遣するモデル事業が本年3月まで行われる。

連絡先:神奈川県民センター2階「県民の声・相談室」Bブース、医療通訳スタッフ派遣コーディネーター、Tel:045-317-8803/Fax:045-317-8813

ニュース記事から(1) 2002.9.14〜2003.1.14

09/27 今年度新たに認定した残留孤児6人の名簿公開これまでで最少数
10/01 離婚で強制退去処分 中国残留婦人2世の元夫
10/03 中国の養父母に暖房費を 氷点下30度、支援呼び掛け
11/21 今年度認定された残留孤児のうち5人が肉親を捜すため訪日同行した一時帰国者8人とともに12月4日まで滞在
11/22 残留孤児の身元判明苑さんは「佐藤範子」
11/24 残留孤児が浅草寺見物 支援・交流センターのパソコン講習も見学
11/28 残留孤児ら、大阪中国帰国者センター見学、和服を体験 水族館など大阪見物
11/29 「再び家族を引き裂くな」 血縁関係にない孤児家族退去問題で、支援団体 法務省に要請
12/03 一時帰国最後の夕食会 残留孤児4日離日
12/11 全ての都道府県に夜間中学の設立を
「全国夜間中学校研究会」は1月、日本弁護士連合会に人権救済申し立てを行う。申し立ての趣旨は、@各都道府県と政令指定都市に1校以上の夜間中学を設置する、A夜間中学設立運動が行われている地域、とりわけ需要が高く自主夜間中学校を運営している地域については1日も早く公立夜間中学校を開設する、B夜間中を根拠付ける規定を教育基本法に設けること
12/16 残留孤児の家族 入管収容者に成人式通知 在留認めてと同級生ら
12/17 国が血縁重視の姿勢か 孤児家族の提訴相次ぐ <大阪地裁>
12/20 「子と離れたくない」 送還取り消し求め証言 <福岡地裁>

ニュース記事から(2) 〈集団訴訟〉に関わるこれまでの動き

2001-06/21 「中国・養父母謝恩の会」メンバーなど約350人の残留孤児が老後の保障を訴え、厚生労働省周辺でデモ 「支援金の給付制度創設を」
2001-08/15 中国残留日本人孤児ら約600人が老後保障を求めてデモ行進
2001-12/07 放置の損害賠償 国に求め初提訴 中国残留孤児ら3人
2002-09/23 中国残留孤児約600人原告団結成 国家賠償訴訟を起こすことを決定
2002-12/03 北朝鮮拉致で参院 被害者支援法、4日成立へ
         ※国民年金は拉致期間を被保険者期間とみなし、国がその期間の保険料を全額負担
2002-12/20 「支援不十分」 残留孤児637人が国家賠償を求め提訴、総額210億円 東京地裁に
         ※原告弁護団は、孤児高齢化の実状を踏まえうち40人を「先行訴訟」と位置づけ審理迅速化を目指す
         ※原告団は関東地方に暮らす孤児だが、同様の動きは北海道、九州、四国にも広がっている
2002-12/20 「老後保障する政策を」 提訴の残留孤児らが決起集会
         ※原告団は賛同を求める百万人署名運動を起こし、訴訟や運動の資金にあてるため募金を求める考え

事例紹介

「赤ちゃん誕生―初めて日本で出産するお母さんたちの心は―」

 新年には修了生からたくさんの年賀状をいただく。進学、結婚など喜びの報告の中にかわいい写真とともに「新しい家族がふえました」という知らせも多い。出産は通常でも喜びと同時に心配や緊張を伴う大きな体験である。まして帰国者の出産では喜びとともに習慣の違いからくる行き違いなど様々な問題があるだろう。

 サハリンから三年前に帰国したKさんは、一昨年第二子を出産した。定着地で「出産関係の費用は自己負担だ」と初めて知り、驚きと不安を感じた。第一子と同様今回も帝王切開での出産になりそうだとわかり不安が更に増した。サハリンでは出産後一度も担当医に会う機会がなかったり、子どもに会えるのは授乳時の5分だけだったりで、「あんな体験はこりごりだ」と思っていた。しかし日本の病院に通い出すと、不安はだんだん薄れていった。病院のスタッフは日本語がまだ十分でないKさんに「何でも聞いてください」と言い、親切に辛抱強くどんな質問にも答えてくれた。入院中は母子同室で執刀医は毎日会いに来てくれた。退院後「以前外国映画で見たとおりだった」と喜んでサハリンの親戚に電話をかけた。
 費用については帰国者の出産は5回目という自立指導員が貴重な情報をくれた。出産経費は健康保険や生活保護世帯の医療券の対象とはならない。しかし入院費用は市役所の福祉課に相談し、「入院助成」を申請することができる。全額ではないが妊娠中の検査費用は保健所の「指導票」で補助を受けることができる。そうは言っても帰国者が自力でこういった情報を得ることは大変難しいだろう。
 出産後も習慣や考え方の違いに違和感を持つことがある。ロシアでは乳児が一ヶ月になると何種類かの予防接種を行う。ある日Kさんが「おたふくかぜ」の予防接種について尋ねると「うつったほうがいいんですよ。小さいころにかかれば軽くて済み、免疫もつくから」と医師に言われびっくりした。今でも100パーセント納得したわけではないが、常にわかるまで説明してくれるこの医師に信頼を置いているので「おたふくかぜ」の予防接種はしなかった。次男は保育園に通っている長男がもらってきた水ぼうそうやおたふくかぜにかかりながらも元気に成長している。
 中国から帰国したBさんも昨年第二子を日本で出産した。入院の際Bさんや母親が心配したのは食事のことだった。中国の東北地方では出産直後冷たいものを食べず、歯磨きの時でさえ水を使わないなどの習慣がある。他の人には小さなことだと感じられても緊張と不安の中にいる当事者には気がかりである。しかしBさんの担当だった助産婦さんは「この病院では中国の人が何人も出産したことがある。習慣の違いがあるのはわかってるから何でも言ってね。」と言ってくれ、Bさんはほっとした。食事も温かくおいしく食べられたそうだ。

 今回のKさん、Bさんは初産ではなかったので少しは気持ちに余裕があったかもしれない。初めて出産する場合は更に大変だろう。また自立指導員がつかない呼び寄せ家族が助成制度の情報を得、手続きするにはどうするのだろうと考えてしまう。支援者が情報を共有すること、帰国者の周りに理解者や受容してくれる人を増やすことの大切さを思う。ことばの問題、習慣の違い、費用の負担、出産に際して心配や問題は多い。帰国者や家族が安心して新しい家族を待ち望むためには何が大切だろうか。KさんやBさんにとって「何でも聞いてください」「わかるまで説明しますよ」と言われたことがとても大きかったように感じられる。日本式を説明する前にまず話を聞こうとする受容的な姿勢が安心感や信頼感につながるのだろうと思われた。

(井本)