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巻頭言 ただ繰り返さないために
こんなところ・あんなところ・どんなところ
 関東地方そのA ― 千葉県 ―
地域情報 ア・ラ・カルト
行政・施策
研修会
とん・とん インフォメーション
 「帰国者センターから世界へ、歴史へ」
   (所沢市立並木東小学校)
 中国帰国者定着促進友の会

巻頭言

ただ繰り返さないために

 所沢センターが開設されてまだ間もない頃(15年ほど前になるが)、追跡調査等で定着地と接触をもつ中で、今から思うと帰国者の人権無視だと問題になるような対応に困惑したことが少なくなかった。 「この家族にご用の方は○○(身元引受人)に断った上で接触して下さい」という旨の掲示を帰国者家族の住居の前に貼り出しているケースがあった。引受人の経営する工場に帰国者一家を雇用し、工場の敷地内にある宿舎に住まわせたのはよかったが、外出や来客をいちいちチェックするという例もあった。また、一家の収入と支出を引受人が細かく監督するというケースさえあった。日本語の学習にしても、帰国者家庭内で中国語を使うことを禁止したり、定着促進センター修了後にもう少し学習を続けたいと希望する帰国者の声に耳を傾けず、直ちに就労するようにすべてを決めてしまったりする例も少なくなかった。 これらのケースのほとんどが帰国者の為を思っての行為であった。帰国者家族はまだ日本の物価がわからず金銭感覚も身に付けていないから、あるいは、悪い日本人に利用されたり要らぬ情報を吹き込まれたりすることから守るため、という気持ちからのものであった。本当に相手のことを考えればやたらに甘やかせばいいというものではない、という声もよく耳にした。基本的には善意に基づく言動であったことが、事態の解決をより難しくした面もあった。 当然のことだが、帰国者は禁治産者ではない。いろいろ援助やアドバイスが必要な状態にはあるが、自分のことについては自分で決める権利がある。自分の進む方向について考えるための情報を得て、頼りになると思う人に相談しながら、最終的には自分で自分のことを決めたいと思うのは当然のことだ。甘やかす甘やかさないという問題ではない。
 必要な情報を伝えること、こうした場合にはこうなるが、こうした場合にはこうなってしまう可能性が高いということ、これを選んだ場合には私はこの程度助力できるが、こちらを選んだ場合には助力ができないこと等をアドバイスすることが、支援する者の行う支援の基本だろう。これを実践することはなかなか難しいが、帰国者が自立するための力と態度を萎えさせず高めるためにも、帰国者に代わって決めてしまうこと、帰国者を束縛しようとすることは避けなければならない。
 こういうことは中国帰国者を援助する人々の間ではすでに常識化しつつあると言ってもいいだろう。そうだとすれば、長い時間をかけ、帰国者が恩恵を与えられるだけの存在から当然得られる権利をもつ存在に変わってきたと言えるし、私たちも自分と文化や言葉、立場の違う人々とより良い関係を結べるように変わってきたと言えるだろう。
 しかし、新たに増えつつある樺太(サハリン)等からの帰国者への対応において、仮に同じようなことが同じ時間をかけて繰り返されるのであれば、結局何も進歩がなかったと言うほかはない。社会の中で少数派である帰国者の中でもさらに少数派である樺太等帰国者の適応について、諸々の権利がないがしろにされないよう、いままでの中国帰国者への対応の中で培われてきた最良のものをできるだけ速やかに移植するように努める必要があるだろう。

こんなところ・あんなところ・どんなところ?

関東地方そのA ― 千葉県 ―

T.中国帰国者の概要

★中国帰国者の定着状況
 今までに、千葉県に定着した永住帰国者は平成11年12月1日現在、174世帯、630人です。近年は年平均7世帯、30人ぐらいが定着しており、その数は横這いないし微減の傾向です。帰国者の居住地域は公営住宅の多さ、大都市志向などからか東京近郊の都市部への希望が多いように見受けられます。

@住宅事情
 千葉県においても、国費帰国者が公営住宅へ優先的に入居できる措置をとっており、定着促進センターを退所すると同時に公営住宅に入居しています。最近では帰国者に限らず公営住宅の空屋入居申し込みが多いため、帰国者が希望する地域の住宅の確保が難しくなってきています。

A就学事情
保育所、小・中学校への編入学については、定着促進センターの助言をもとに居住地の市町村教育委員会の協力により行っています。高校入学については、県内の公立高校で中国等引揚者子女の特別入学者選抜を実施しています。入学者選抜の流れは、入学志願者の在籍する中学校の校長と入学を志願する高校の校長による事前協議、出願書類の提出、面接及び作文による検査、中学校からの調査書、中国等引揚者子女特別措置適用申請書の審査、面接及び作文などをもとに引揚者子女の特別な事情を考慮し、総合的に判定しています。

B日本語の学習について
 自立研修センターでの日本語指導のほかに、10市の国際交流協会や100以上の民間ボランティアのグループや個人が、日常生活に必要な日本語が学べる教室やマン・ツー・マンの学習の機会を無料または低負担で提供しています。地元の国際交流協会や千葉県中国帰国者自立研修センターに問い合わせれば、希望者には県内のリストの中からそれぞれのレベルに合ったところを紹介しています。
 問い合わせ先:千葉県自立研修センター
      TEL:043-247-6500

U.帰国者のための県単独事業

・自立支援通訳の派遣
 医療機関で適切に診療を受けたり、行政機関等での助言、指導及び援助を得易くするために、帰国後3年以内の中国帰国者の二世、三世及びその家族に通訳を派遣しています。
・慰問金の支給
 中国帰国者がこれまでおかれていた特別の状況を思い、慰労の気持ちを伝えるため、帰国後初めて居住する都道府県として、千葉県に@永住帰国した人と、A終戦後初めて墓参、親族訪問のために一時帰国をした人等に慰問金を支給しています。

V.千葉県中国帰国者自立研修センター

 千葉県は中国帰国者が一日も早く地域社会に定着し自立できるよう、昭和63年10月に千葉県中国帰国者自立研修センタ−(千葉県社会福祉協議会に管理運営を委託)を開設し、国費帰国者を対象に8か月間日常生活に必要な日本語の指導を行うとともに、日常生活や就職等の相談に応じ、必要な助言、指導を行い自立を支援しています。
@日本語指導
 毎週月〜金曜日、初級クラスは午前9時から11時50分まで、中級クラスは午後1時から3時50分までで、平成11年12月現在受講者は28名です。なお、定員に余裕のある場合に限り、呼び寄せ家族(二世・三世)も受け入れています。
A日本語の再研修
 国費帰国者で自立研修センターの8か月修了者を対象として、毎週土曜日、基礎クラスは午前10時から12時まで、応用クラスは午後1時から3時まで日本語の再研修を行っています。受講者は平成11年12月現在32名です。
B生活相談・指導
 毎週月〜金曜日、日常生活で発生した問題について、通訳兼相談員が相談に応じ、必要な指導を行っています。また、日本で生活するうえで必要な関係機関への届け出、子どもの就学、就籍等の助言も行っています。
C就労相談・指導と就職促進オリエンテーション
 毎週火、金曜日の2回、就労相談員による就労指導及び職業安定所での手続きなどの相談、指導を行っています。また、年2回の工場見学、職業安定所訪問、高等技術専門校見学を実施し、日本の職場環境、就労状況及びその中国との相違等について理解を深める就労指導をしています。
D大学進学準備課程
 日本の大学に進学を希望する国費帰国者の子どもで、中国での学校教育が11年の子どもを対象に準備教育を行う課程を設けています。今年度の受講者は1名で、専任講師により一般科目の講義をしています。
E地域住民との交流会
 帰国者が一日も早く日本の生活に慣れ、自立できるよう、餃子パーティなどを主催し、地域の住民と交流したり、6月には千葉県民の日の行事への参加、11月には東京ディズニーランドの見学をしたりして、一般の日本人とのふれあいの場を作っています。

(千葉県社会部厚生課)

地域情報 ア・ラ・カルト

★再研修の現場から 岩手県自立研修センター

 当センターでは、今までに7クラスの再研修教室を行っています。再研修事業がスタートしたとき、担当講師の中には教室の性格がはっきりのみ込めていない方もいたようです。というのも、センター運営を委託されている中国帰国者通訳奉仕会では帰国者が定着し始めた頃から日本語教室を開設し、期限を定めずに継続してきていたため、センターの本研修(8ヶ月)、再研修(最長2年)も同じようにずっと継続できると考えていたようです。また、センター職員との連携もとれていませんでした。その結果、講義の内容、授業の形式がどうであったのか資料が残っていないクラスもあります。カリキュラムも提出されず、日誌も書かれていなかったからです。
 教材、カリキュラム等の検討や話し合いもなく、目標も定められていない教室は、効果があるのだろうかというのが、私が担当になった際の正直な感想でした。話し合いのきっかけを作ろうとカリキュラムの提出をお願いし、講師を怒らせてしまったこともあります。

 再研修教室は、帰国者の多い地域に公民館等を利用して開設してきました。しかし、受講希望者がいても、その地区に講師が見つからず、遠すぎて派遣もできないこともあります。日本語を勉強したいという声があると、何とかしたい、しかし、出来ない、というジレンマを抱えてきました。殊に半年の再研修を行った沿岸地域ではサバイバルレベルの受講希望者が4名いたので、継続したかったのですが、講師が見つからず、半年でテープの使い方など自習ができるような指導をしてもらいました。週一回、しかも仕事に追われている受講者は欠席しがちでクラス運営は大変だったようです。

 現在は三つの再研修クラスがあります。昨年から継続の中級レベルでは、「新日本語の基礎」を主教材に、文法項目の確認や、文章を書く練習など、様々なプリントを用意して授業を進めています。理解力はあるが、実際に話すとき滅茶苦茶になってしまう受講者にスムーズに話せるようになってもらうのが今の課題です。時々、作文を書いてもらいますが、美しい日本語に感心しています。就職して仕事に慣れ、生活が安定し、比較的高学歴の同僚に囲まれている1人は、学習意欲が非常に高く、熱心です。日常生活の中で日本語の必要性を自覚してもらうことがどんなに大切かわかる例だと思います。

 もう一つは、帰国後の年数は経っているものの読み書きがあまり出来ない、学習適性も高くないクラスです。ひらがなの読み書きと簡単な漢字を読み書きできるようにカードやプリントなどを多用しています。教科書は一応「新日本語の基礎」を使っていますが、あまり重きを置かず、会話練習や、練習問題を活用しています。日常会話は何とかこなしているので、自分でメモを読んだり書いたり出来るよう、また、辞書やテープを使うなどの自習も出来るようになるのが目標です。ひらがなに挑戦している受講者に、先生が「出来たね、すごい」というと本当に嬉しそうです。先生も「覚えてくれると、一歩進んだという手応えがあって、やりがいがある」と言っているのを聞き、このクラスは成功しているなと思っています。

 今年の11月からスタートしたクラスはレベルアップのコースです。今、使役、敬語、謙譲語の定着をめざしています。学習適性の高いクラスで、読み書きと会話の能力にあまり差がありません。聞いてわかるが自分では適切な表現が出来ないという壁の克服が目標です。「みんなの日本語」を使用し、宿題などの課題もどんどん与えています。

 岩手は非常勤講師が常時十数名います。その時間だけ教えるという形は責任も目的意識もうやむやになる場合があります。良いクラス運営のために、情報交換を心がけ、私は苦情を受け付ける窓口になり、教室についてはコーディネーターの役割を果たそうと務めています。また、本研修を含め、ほとんどの講師が中国語を話せるので、受講者が日本語の質問に中国語で答えたり、授業が中国語でのよろず相談の場に変わってしまう事もあります。講師、受講者双方に甘えがあるのではないかと思うこともあります。相談の機会は電話ででも確保できると考えると、貴重な学習時間をめいっぱい活用してほしいと思います。そんなことから、授業では出来るだけ中国語を使わないで下さいとお願いし、クラス新設にあたっては積極的に中国語の話せない先生に担当してもらっています。

 本研修、再研修とも、せっかくのチャンスなので大いに活用してほしいのですが、生活意欲が学習意欲に比例するようで、家にこもっているような帰国者は、教室にも来ません。将来のことを思うと本当にやきもきします。サロンコースのように楽しめるクラスの設置も考えたりするのですが、どうしても実際に役立てようとする帰国者を優先しているのが現実です。

 一人一人に必要な手助けが出来ないのだろうか?高齢で日本語が話せない帰国者はどうなるのか?孤児、婦人の配偶者として来日し、日本語習得もおぼつかない中国人の高齢者は?日常業務の影から、時々そんな疑問が浮かんでは消えていきます。

(岩手センター 熊谷真智子)

★中国帰国者介護支援センター−福岡−

1)介護支援センター設立の背景

平成10年11月、福岡県高齢者福祉協同組合(平成11年4月に生協法人取得)内に、中国帰国者介護支援センターを設立しました。きっかけは、4年前に「帰国した中国残留婦人等の実態調査」を行った(『同声・同気』第11号に報告あり)際に、高齢化した帰国者一世の人たちの生活実態を目の当たりにしたからです。帰国者は、日本人として生まれてはいても中国での生活が何十年と続いた後の永住帰国ですから、これはほとんど「移住」という位置づけとなるでしょう。移住には様々な困難がつきまといます。特に終戦時9歳以下だった残留孤児や、中国人である配偶者は、日本の生活にはなかなか馴染めません。この調査でも、高い通院率や言語の壁、社会的な孤立等が、問題点としてあげられました。
移民の多い外国の研究では、高齢者の移住は、言語習得や文化的適応の困難さから社会的に孤立しがちであり、精神保健上の問題も指摘されています。ただでさえ高齢期は、身体機能が衰え、身体介護が必要になりがちです。「移住」した帰国者の場合はそれに加え多様なアイデンティティを持っている訳ですから、その言語・文化・生活様式に応じた介護が加齢と共に求められています。そこで、先の調査に加わったメンバーを中心に、まだ任意の団体ですが中国帰国者介護支援センターを設立する運びとなりました。この設立には、社会的反響が大きく、地元では、NHK等の報道もありました。
ちょうど設立して一年、帰国者の間でも少しずつ信頼が得られ始めて来ました。これは大きな成果です。また、行政との関係も、8月には、福岡市に要請し、通訳付き中国帰国者介護保険説明会を開催したり、帰国者の介護を専門的に担うヘルパーステーション「福寿」が、公的介護保険の県指定事業者となるなど、大きく前進しています。以下、介護支援センターの目的と機能を簡単に説明しす。

2)介護支援センターの目的

 高齢化した中国帰国者とその家族に対して、生活相談を行いながら、その在宅介護を支援する。帰国者のニーズを尊重し、その介護の独自の課題をあきらかにする。地域に根ざした帰国者支援のネットワークを築いていく。

3)介護支援センターの運営

・介護支援センターは、福岡県高齢者福祉協同組合内 に設置される。
・介護支援センターは、ボランティアによって運営される任意の組織である。
・介護支援センターは、福岡市在住の中国帰国者と共に 活動する。
・介護支援センターは、ヘルパーステーション「福寿」と協力共同の関係を保ちながら運営する。
・介護支援センターの財政的基盤は、主として寄付による「中国帰国者介護支援基金」によってまかなわれる。

4)介護支援センターの業務

・帰国者介護に関する総合的相談と助言。
・ホームヘルパー派遣についての相談と助言。
・ボランティア派遣(通訳を含む)。
・帰国者二・三世を対象としたホームヘルパー養成講座 参加の促進。
(バイリンガル、バイカルチャーのホームヘルパーの養成)
・公的介護保険の広報と申請援助。
・帰国者介護の独自性を明らかにし、その条件整備について提言を行う。
・帰国者の生活の質を向上させるレクレーション等を行う。

5)介護支援センターのこの一年の活動

・帰国者の介護と生活全般にわたる相談活動と助言・支援。
(介護問題を看板にしていますが、子供の教育から就労相談等まで、多数の相談を受けました。帰国から20年近くたっても問題は多く、些細なことでも気軽に相談できる窓口の必要性を痛感します)
・帰国者二・三世のホームヘルパー養成講座への参加の呼びかけ。
(現在、二世の配偶者が、センターの奨学金を受けて福岡県高齢協主催のホームヘルパー2級講座に参加しています。二世の人で交通事故や脳梗塞などで身体障害者になる人も出てきて、介護支援は世代拡大の傾向を見せています)
・公的介護保険についての説明会開催の要請と協力。
(8月に福岡市の主催で通訳付き説明会を開催、帰国者30名が参加。わかりにくい介護保険ですが、この説明会で認知度がぐっとアップしました)
・公的介護保険についての中国語パンフレットの作成。
(福岡市が窓口となって配布しました)
・公的介護保険の申請に関する相談と助言。
・「春節のつどい」の開催、博多どんたくやコンサート参加。

(福岡中国帰国者介護支援センター 名和田澄子)

行政・施策

★ 厚生省から

T.平成11年度身元引受人会議

 この会議は、甲信越・東海・北陸地区が平成11年9月9日・10日に山梨県で(身元引受人25名、県職員7名出席)、関東地区が平成11年9月30日・10月1日に栃木県で(身元引受人23名、都県職員7名出席)それぞれ開かれ、全体会議とグループ討議が行われました。
 一日目は、厚生省による行政説明及び「最新の中国事情」の講演があり、その後体験発表及びグループ討議が行われました。グループ討議では、特に親の扶養問題、帰国者との接し方及び日本社会への適応方法について現状と問題点が報告され、活発な意見交換が行われました。
 二日目は、前日の討議のまとめの発表と厚生省への質疑応答が行われました。今回の会議は、10年度同様、初心者又はこれまでこの会議に出席したことのない人を対象としましたが、会議終了後多くの参加者から大変参考になったとの感想がありました。

U.中国残留孤児訪日調査の結果

@平成11年11月1日から16日までの16日間、国立オリンピック記念青少年総合センターを会場に、20名の孤児が参加し訪日調査が行われました。調査の結果、滞在中に肉親が確認された方は1名(判明率は5%)、他に4名の方々が血液鑑定を行い、この中から身元判明者がでることを期待しています。
A今回を含めこれまで30回の訪日調査が行われ、2116名の方が参加し、肉親が確認できた方は666名でした。当室ではこれまでに肉親が確認できなかった方々についても引き続き調査を行っています。孤児の方々が帰国する場合には、帰国旅費の国庫負担、親族に代わって身元を引き受け相談相手となる身元引受人制度、さらに日本語研修、自立指導員の派遣など、様々な引き揚げ援護施策を講じています。ご親族だけに負担をおかけすることはありませんので、情報がありましたら是非お寄せ頂けるようお願いいたします。
B今回は「最後の集団訪日調査」との報道がされました。肉親調査は年々困難な状況にあり、また、大半の孤児の皆さんは、早い時期の永住帰国を望んでいることから、厚生省としても孤児調査の見直しを検討し、現在、中国政府と協議中です。見直しの内容は、中国現地で日中共同の調査を経て、日本側に肉親情報を保有する者のみを訪日対面調査に招致します。日中両国が孤児と認めた者で、肉親情報がない人については、訪日調査を行わず直接帰国させる方法等に改めるというものです。したがって、来年度以降も人数は減少が見込まれるものの訪日対面調査(従来通り年一回)を実施する予定であり、今後も最後の一人まで身元調査を行う方針です。引き続き皆様のご協力をお願い致します。

★文部省から

平成12年度中国等帰国孤児子女教育研究校について

 文部省では中国等帰国孤児に対して様々な援護施策を行ってます。中国等帰国孤児の児童生徒に対して適切な教育機会を確保するため、中国等帰国孤児児童生徒に対する教育的配慮に基づく教育指導と積極的な受入れ、及びそのための研究を行う学校を中国等帰国孤児子女教育研究協力校として委嘱する制度を昭和51年から実施し、以来実践的な研究が行われてきました。平成11年度には10年度からの継続22校、新規19校の合計41校を指定しています。
 本研究協力校制度については事業を開始して以来すでに20年以上経過しており、これまでの研究成果が中国等帰国孤児児童生徒を受け入れている学校及び教育委員会で広く活用されるようになってきています。
 また、文部省ではこれまでの研究成果を踏まえ、日本語指導の補助教材・教師用指導資料(「日本語を学ぼう1〜3」「ようこそ日本の学校へ」)を作成し、教育委員会及び中国等帰国孤児児童生徒を受け入れている学校に配布しました。さらに、現在、日本語を母語としない児童生徒が、より円滑に日本語が習得できるよう、マルチメディア教材を開発しているところです(平成12年3月完成予定)。なお、この教材は中国語をはじめとする複数言語の音声、表記に対応しており、母語と対比させながら日本語が習得できるようになっています。
 一方、日本語指導を担当する教員に対しては、地域や学校で指導的立場に立つ人材の養成を目的として、2週間の合宿研修を毎年実施しています。
 これらの他、平成11年度より学習面や生活面の適応等に関して、中国語のわかる相談員が、中国等帰国孤児児童生徒、保護者及び学校関係者からの教育相談等を行う外国人子女等教育相談員の派遣事業を実施しており、平成12年度は拡充を行うための予算を要求中です。
 これらの取り組みを通じて、中国等帰国孤児児童生徒の受入れについては、これまでに各教育委員会及び学校においてノウハウが着実に蓄積されてきています。そのため、中国等帰国孤児子女教育研究協力校については、一定の役割を終えたものとして、平成12年度においては新たな指定を行わなわず、平成11年度から継続する19校の指定にとどめることとした次第です。なお、今後については、これまでに研究協力校等で培われた中国等帰国孤児子女教育の成果に基づき、帰国子女教育及び外国人子女教育に関わる事業も含めて全体的に見直すことを検討しています。
        (文部省教育助成局海外子女教育課)

★文化庁から

平成11年度 文化庁「日本語教育衛星通信講座」

 …日韓間で、リアルタイム双方向の日本語教員研修(実験)を実現…
 文化庁では、11月16日に「日本語教育衛星通信講座」を開催しました。本講座は、平成8年度から着手した実証的調査研究(実験)の一環であり、日本語に関する模擬(モデル)授業や全体協議を行う講座としては、三回目のものです。
 今回は、国内の二会場(東京工業大学、国立国語研究所)のほか、初の海外会場として韓国外国語大学校の計三会場(すべて車載局)を衛星通信回線で結び、各会場合わせて約二百五十人の方が参加し、リアルタイムで双方向の授業・研修や活発な協議が展開されました(注)。
 まず、開会に当たり、主催者及び日本側会場を代表して水野豊文化部長から、また、韓国側会場を代表して圭哲(ゾ・ギュチォル)韓国外国語大学校総長からあいさつがあり、続いて、講座が開かれました。全体を通して、衛星通信の特性をいかした日本語教員研修の在り方に焦点を当て、講座の前半は模擬授業が約90分ずつ二コマ、後半は全体協議が約2時間行われました。
 前半の模擬授業(10時45分〜12時15分及び13時15分〜14時45分)では、「衛星通信を活用した教員研修−上級者向けの口頭表現の授業を通して−」というテーマで、待遇(敬意)表現の学習という授業目標の下、清ルミ氏(常葉学園大学外国語学部助教授)により、日本語上級学習者(東工大、韓国外大とも6人ずつ)に対する口頭表現のモデル授業を題材とした教員研修が行われ、各会場の学習者相互のディスカッション、寸劇の作成・実演、ロールプレイカードの作成・実演、即興スピーチ等の指導が行われました。今回は、待遇表現の中でも特に、断り・謝罪・依頼などの婉曲的表現に焦点を当て、それらを授業に盛り込む際の、一つのモデル(内容・方法)が提供されました。具体的には、「先生との待ち合わせ場所に遅刻した場合の『謝罪』の方法」「一つしかない公衆電話を長時間独占使用している人への『婉曲的忠告と依頼(お願い)』の方法」「ゼミの先輩からの誘いに対する『断り』の方法」などについて、幾つかのパターンが出され、議論・講評がなされました。
 後半の全体協議(15時〜17時)では、「海外の日本語学習者が必要とする情報や日本事情について」というテーマで、日本語教育に関する情報交換・協議という目標の下、西原鈴子氏(東京女子大学現代文化学部教授)の司会により、前半の授業の内容・方法についての講評と、本テーマに関連して、各会場の会場助言者(ファシリテータ)や学習者、見学者も参加し、話し合いが進められました。
 協議の中で指摘されたことの一つに、今回のような、即興性が要求されるコミュニケーション場面の多い授業の場合は特に、本番の前と後で、学習者に対する教育的指導を充分に行う等の配慮が肝要であり、各会場のファシリテータとメイン会場の司会役や授業担当講師の方々との連携・協力も、通常以上に重要であるということが挙げられました。また各会場では、学習者や参加者から、今後も「日本人との直接交流」「学習者・教員相互の意見交換」「日本の最新情報の提供・獲得」「外国の日本語教育事情の入手」などができる講座の開催を望む声が多く出され、国内外における衛星通信を活用した遠隔教育(日本語教育)に対するニーズの高さがうかがわれました。
(注)当日のプログラムに関しては『日本語学10月号』の情報源:平成11年度 文化庁「日本語教育衛星通信講座」の開催案内参照

(文化庁国語課 野山 広)

★援護基金から

 (財)中国残留孤児援護基金では、平成7年に厚生省の訪日肉親調査の記録を中心とした写真集『私の祖国』、平成10年には帰国した孤児等が祖国日本で自立に向けて努力している姿をとらえた写真集『祖国に生きる』を発刊しています。このたび、3冊目として、孤児等と同伴帰国した二・三世にスポットを当てた写真集『未来に向けて』を発刊いたしました。この写真集は、孤児等の高齢化により帰国者家族の自立の柱となるべき二・三世が自立に向けて懸命に努力している姿を写真とインタビュー記事で紹介しています。また、援護基金が実施している養父母訪日招待事業、残留邦人の集団一時帰国援護事業の記録、ボランティア団体の紹介、第1次から第30次までの訪日肉親調査参加者の名簿等を納めています。
ご希望の方には無料で贈呈(送料は受取人払い)しております。援護基金事務局(03−3501−1050)までご連絡ください。

研修会情報

★外国人児童・生徒の問題に熱い議論
   ―東京教研集会に参加して―

11月13日、東京都教職員組合が主催する第49次東京教研集会が日野市立大坂上中学校で開かれました。東京都全域から小・中・高校の教員が集まる年に一度の教育研究集会ですが、今年とりわけ注目されたのは、「人権と教育」分科会で外国人児童・生徒の学習をめぐるさまざまな問題が議論されたことです。
 今年の「人権と教育」分科会では、午後のテーマを「多文化共生教育を考える」とし、実際に外国人児童・生徒の教育にかかわる方がたを招いて、今こうした子どもたちをめぐって何が問題なのか、今後なすべきことは何なのかを聞こうという試みでした。教職員組合がこうした問題を積極的に取り上げ、組合員でない非常勤講師やボランティア、地域在住外国人本人などの声に耳を傾けようとしたことには、大きな意義があると思われます。
 この分科会では、それぞれ外国人児童・生徒のための活動にかかわっていらっしゃる方から次の三つの報告がありました。

1.「外国人児童・生徒の学習権を保障する―制度改革、意識改革、いまのままでできること―」小川郁子さん(児童生徒対象日本語講師)

2.「在住外国人の子どもの揺れる心とかれらの思い―CCS(世界の子どもと手をつなぐ学生の会)の活動を通じて見えてきたもの―」津田知子さん(CCS副会長、一橋大学大学院生)

3.「教育における共通の権利―外国人の児童・生徒の教育権をどう保障するか―」笹本エヴェリンさん(外国人都民会議委員、英語講師)

 まず1の報告では、児童・生徒がすべて日本人であることが前提となっている日本の学校に、そのまま外国人児童・生徒を入学させたらどのような問題が起こってくるかについて、具体的な説明がありました。その上で、こうした状況を変えていくために今後検討しなければならないことを大きく三つに分けて提案しています。
 第一に学校教育法に外国人児童・生徒の学習権保障を明記するなどの制度改革、第二に学校が子どもの母語やアイデンティティの重要性を認めるなどの意識改革、第三に学級の中で、学校の内外で、また地域のボランティアでできるさまざまな工夫や改善です。いずれもこれまでの公教育制度では見落とされてきたことだけに、初めて聞く方がたには衝撃的だったようです。

 次に2の報告では、CCS(世界の子どもと手をつなぐ学生の会)が在住外国人の子どもや家族に対して行っているさまざまな活動を紹介し、いまこうした子どもや家族が何を求めているかを語ってくれました。家庭や学校へ学生が訪問し、学習や進学の相談に乗ったり、交流のためのキャンプやパーティーを催したりすること、またそれらを通じて、地域社会にこうした子どもや家族の「居場所」をつくり、これまでの日本社会を「多様性」が認められる社会に変えていこうという姿勢に、参加している他のボランティアからも共感が寄せられました。

 最後に3の報告では、在住外国人の立場から外国人児童・生徒の学習権を保障するための具体的なガイドラインの紹介と提案がありました。エヴェリンさんによれば、1995年にCollierは次のように提案しているそうです。 「1.第二言語をアカデミックな内容を通して教える。2.思考技術と問題解決能力を開発するのに必要な学習方法を共同、対話式、発見重視型学習を通じ教える。3.外国人児童・生徒の母語や文化を尊重し、かれらの既存の知識を活性化させる。4.複数の施策を用い、現行制度の見直し作業を行う。」
 このように、外国人児童・生徒の学習権保障をめぐってなされた具体的な提案に対して、会場からもさまざまな意見が出されました。その一つは、そうした子どもの学級担任となった教員には、日本語を母語としない子どもの教育や日本語指導に関するノウハウがない上、どこに行けば情報が得られるのかもわからないというものです。そしてもう一つは、これら全体をもっと人権の問題として取り上げるべきだという意見です。そして、現実に社会と学校をどう変えていくことが本当に子どもたちの「人権」を保障することになるのかという議論こそ今後重要ではないかという感想もありました。それらは、今後の課題でしょう。

(東洋大学 斎藤里美)

★第45回全国夜間中学校研究大会

 昨年12月9・10日、神戸市で「夜間中学校の実態から教育のあり方を問いかえし、義務教育未修了者の基本的人権としての学ぶ権利を保障しよう」をテーマに標記の大会が開催され、全国から約280人が参加しました。ここでは二日目の第4分科会「引き揚げ帰国・定住外国人教育」での二つのの報告をご紹介します。

T.「墨田区立文花中学校の現状(主に日本語学級)について」
墨田区立文花中学校 藤田裕一先生

 同中学には6クラスの日本語学級と5クラスの普通学級があり、生徒の年齢・学習適性・日本語能力・ニーズなどに配慮して細かいクラス編成をしている。最近の生徒の傾向を大別すると、全日制高校への進学を目指す者、定時制高校・技術専門校への進学を目指す者、ゆっくり日本語を学習する帰国者一世とその配偶者、昼間は就労し日本語習得を第一の目的とする帰国者二・三世及び定住外国人の4つのグループであるが、課題も多い。例えば東京都には全日制高校をめざす帰国者に優遇入試制度があるので入学は比較的容易だが、入学後の授業になかなかついていけないということがある。近年増えている就労目的で来日した定住外国人の家族の場合、状況はさらに厳しく、優遇措置がないので日本の子供たちと同条件で一般入試を受けざるをえず、入学自体がかなり困難である。そのため夜間中学としては、日本語だけでなく教科指導の重要性も強く感じている。同校では日本語学級のほとんどで『文化初級日本語』を主教材として使用しているが、これは、挿し絵が豊富で行動場面の設定と文型がうまく合致しているなどの理由からである。生徒の進度によってクラス間の移動が頻繁に行われるため、統一教材の使用は教師、生徒双方にとって便利である。生活指導では、地元警察の協力を得て交通安全の指導を徹底している。また年間を通じて、学校行事は日本語を実際に使う機会として積極的に取り組ませている、ということだった。

U.「中国帰国者の置かれている現状と、夜間中学の課題」
八尾市立八尾中学校 黒岡隆先生

 小規模の町工場が集中し、今でも比較的職を得やすい大阪八尾市の八尾中学校では4年前から帰国者が増え始め、現在では全校生徒の約45%を占めている。同中学では日本語学級と普通学級を明確に分けていないが、若い生徒の場合まず1年半から2年間集中的に日本語を学んだあと中学校の教科内容を指導する方法をとり、40才以上の生徒にはゆっくり進むクラスも設けている。同校で学ぶ帰国者の現状は必ずしも良好ではない。中国で義務教育を修了していないため母語の読み書きも満足にできない十代の生徒も多く、教室での学習経験の不足から、昼間の中学に編入しても50分間座っていることが困難で授業についていけず、その結果夜間中学に通うようになる。しかしここでも長続きせず、パチンコやバイクなどに走ってしまう例が多い。二・三世の「最悪の場合、中国へ帰ればいい」という意識が彼らの日本語学習の妨げになっている。長引く不況による老後の不安も膨らみ「中国へのUターン」を口にする生徒が最近増えてきた。また親の日本語力の限界と子供の中国語力低下により親子のコミュニケーションがとれず、親を無視するなどの問題も起きているので、大阪市では市内の3つの小学校で教師や留学生による母語指導が実施されている。生活指導では、地域の状況と密接に絡みあっている労働条件や社会保障制度などについても積極的に指導している。教師は、日本語学級修了後でも生徒が日本語の学習を継続できるように、@国語の教科書を読めるようにするA日本語能力検定試験2級または3級にパスするB生活や職業に必要と思われる技術資格をとるなどの具体的な目標を持たせて指導しているが、やはり通学しなくなる生徒がかなり多い、という話だった。
 生徒の不登校・退学は多くの分科会参加者の共通の問題で、午後の座談会でも継続して討論された。夜間中学を単に「学費のいらない日本語学校」と考える生徒が多く、ある程度日本語ができるようになると学校に来なくなってしまうという意見が多い。実際に生徒たちを学校に繋ぎ止めるのは難しいようだ。その他「日本語だけを学習するなら日本語学校に行けばよく、生徒には夜間中学校を総合的な義務教育の場としてとらえてほしい」「欧米諸国のように別に公的な日本語教育機関を設けるべきだ」「日本で生活する上で日本語の習得は義務教育の範囲内なので、夜間中学で日本語の指導をしても問題はないはず」などの意見が出された。
 終戦直後に義務教育を受ける機会がなかった人や在日韓国朝鮮の人々を対象として始まった夜間中学ですが、社会環境の変化に伴い生徒の置かれた状況も変わりつつあります。当然夜間中学の役割も変わらざるを得ない状況が今生じているのではないでしょうか。原理原則にとらわれず現実のニーズに合わせた柔軟な対応が望まれます。それぞれの夜間中学に独自の方法や方向性があることを互いに確認し、地域ごとの違いや問題点をお互いに知ることもこの分科会の持つ大きな意義ではないかと思いました。

(所沢センター 小松)

とん ・ とん インフォメーション

◆「帰国者センターから世界へ、歴史へ」−所沢市立並木東小学校−
◆中国帰国者定着促進友の会
◆「長野県日本語ネットワーク」設立のお知らせ
◆シンポジウム 「ニューカマー生徒の高校進学と生活について考える」
◆『中国帰国者定着促進センター紀要』第8号 投稿募集
訃報 福島県中国帰国者自立研修センター所長佐藤清氏

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★ 「帰国者センターから世界へ、歴史へ」−
   所沢市立並木東小学校−

本校では、平成14年度からの「総合的な学習の時間」の実施に向け、隣接している中国帰国者定着促進センターの協力を得て「帰国者センターから世界へ、歴史へ」という単元を設定し学習を行いました。以下、その概要を紹介します。
1.単元名: 『 同声・同気』帰国者センターから世界へ、歴史へ

2.単元の目標
 帰国者センターに関する様々な疑問をもとに自分で課題を考え、理解を深める活動や帰国者の子どもたちとの交流を通し、国際理解の態度を育てる。
 5年生は交流会でセンターの子ども達に日本の様子を伝える取り組みを通して
 6年生はセンター見学に基づいて、自己課題を調査し、その結果の発表を通して

3.学習活動
@センター見学と自己課題づくり
 6年生は11月5日、5年生は11月15日にセンターを訪問しました。各教室を自由に見学した後、全体でセンターの概要や残留孤児についての話を伺いました。子ども達は学校に戻り、さっそくもっと詳しく調べてみたいことについて、自分の考えをまとめ、話し合いながら課題を決めました。
A学習方法
自分たちの課題に沿って、それぞれが工夫して自発的に作業を進めていきました。市立図書館に出かけて資料を調べる、インターネットでセンターのホームページを活用したり質問したりする、中国語に詳しい講師を特別に招いて勉強する、センターにもう一度質問、見学に出かけるなどの様々な活動が行われました。
B発表会
 12月3日の授業参観日に、6年生の発表会を行い、おのおののテーマを中国語劇にしたり、OHPやパネルを使って発表したりしました。中には実際に麻婆豆腐を作って食べさせるグループもありました。
C交流会
 12月14日、センターの小学生クラスの子ども達3人を招いて、交流会を行いました。6年生の社会の授業を一緒にした後、交流会で5年生の「日本の文化や様子」に関する発表、6年生の歌、友好ゲームを行いました。「きらきら星(小星星)」をセンターの子ども達と6年生が一緒に中国語で歌ったり、数送りゲームを中国語で行うなど楽しい時間を過ごしました。給食も5年生と一緒に食べ、帰りには6年生の体育のサッカーに予定外の飛び入り参加をしてくれました。

4.子ども達の感想
総合学習は最初とても大変だと思ったが、とても楽しい学習だった。しかし、時間がもっとあればもっと調べられたと思う。交流会では3人の子たちが、とても日本語がうまくてびっくりした。
はじめセンターに行った時、ぼくは中国語で勉強して いるのかと思い、部屋を覗いてみるとびっくりしてしまいました。中国の人がなんと日本語で勉強していました。それを見た時すごくがんばっているなと思いました。
私は「総合的な学習の時間」の勉強をして、中国や樺太に取り残された人たちがいたのだと知ってかわいそうだなあと思いました。親の顔も分からないような子ども達を置き去りにしなければならない状況になってしまうのは、戦争のせいだとわかり、もう戦争は絶対してはいけないと思います。
私は1年生の時から帰国者センターの中はどうなっているか知りたかったので、今回の総合の授業で入ることができてよかったです。発表会のやりかたもすごく楽しかった。交流会では3人来てくれたけどもっと来て欲しかった。ロシアの人とも交流してみたいです。

5.単元に取り組んで
本校にとって初めての外部施設との連携を図っての学習でしたが、大変大きな成果が上げられたと感じました。その原因としては・センターが国際理解の場として非常に有意義な施設である・センターと学校の連携がスムーズに行われた・校内での指導体制や学習過程の構築が適切であった、ということがあげられると思います。本校の隣にこのような施設があったことは最大の幸運であり、また、どのように関わっていくべきかが本校の大きな課題でしたが、今回の5、6年生での視点を変えての2学年にわたる取り組みは、その課題に十分応えるものであったと感じます。 (所沢市立並木東小学校 勝屋 宏)

中国帰国者定着促進友の会

 「中国帰国者定着促進友の会」は、所沢センターが開所した翌年の昭和60年4月に発足しました。この15年間所沢センターを支援し、研修生を励ます活動や、地域に向けて帰国者に対する理解者、協力者を作る活動をしてきました。常日頃、私たちは会員の皆さんから多くの協力を得ているのですが、今まで会の歴史や実状を詳しくお尋ねする機会を持ちませんでした。今回、改めてお話を伺い、活動の様子を皆さんにもお知らせします。(所沢センター 小松、益村)
《会の成り立ち》
 昭和56年、中国残留孤児の訪日調査が始まって、テレビや新聞等で人民服に身を包んだ日本人孤児たちの姿が多くの人の目にとまった。3年後、所沢市並木地区に孤児たちの受け入れ施設(所沢センター)が開設されると知って、周辺の老人会、商店会、団地自治会のあいだで「自分たちにも何か出来る事はないか」という思いが広がった。その多くは戦争の惨禍、戦後の混乱、飢餓の体験を持っていて、何かに駆り立てられるかのように対応を模索しはじめた。センターが開設されると、各団体は独自にセンターと接触を始め、帰国者が日本人の暮らしに少しでも触れ、理解できるようにとの思いから、機会ある毎に花見会、夏祭り、励ます会等が催された。しかし、ばらばらに活動するよりも、一つになって活動する方がより良い支援ができるだろうと、各代表が協議し、3ヶ月の準備期間を経てついに「中国帰国者定着促進友の会」が発足した。当初の会員数は約200人。その後、じみちな口コミ活動や会員の人脈により徐々に増えた。TVニュースで帰国孤児の報道が盛んになると会員は全国に広まった。大量帰国時代(昭和61年)を迎えた頃には、会員数は1400人余りにも昇り、実働会員数は約400人となる。現在は高齢化で約700人に減少したが、実働会員数はほぼ同じで、様々な活動に足繁く集っている。
 《活動》
 今、4ヶ月の研修中の主な活動としては日中辞典・日露辞典の贈呈、花と緑の日(毎月、施設の庭の手入れ)、折り紙教室(4回)、音楽交流会(2回)、励ます集い(花見会、納涼大会、年忘れの会のいずれか)、日本語実習協力、修了記念アルバム贈呈、市民フェスティバルでの啓蒙活動、会報の発行等がある。これらの活動は、研修生とのかかわりの中でさまざまに学んだことが下地になっている。例えば、「音楽交流会」は以前「お楽しみ会」と呼ばれ、「北国の春」を合唱したり、和服を着た会員が大正琴を演奏したりの歓迎ムード一色だった。でも、研修生側も中国の良き文化を持っているはずだ。互いに披露し合おうと時間配分を半々にした(最近は学生側の持ち時間が大半を占めているとか…)。一時期「中古衣類展示贈呈会」を行った。つまり、各地から集まったたくさんの品を「どれでも好きなだけ御持ち帰りください」というのだ。しかし、これは自尊心を傷つけてしまうこともあろうかと考え中止した。また、一度「芋掘り会」をしたときのことだ。掘った後、その場で焼き芋や焼きそばを作って過ごしたのだが、労働と誤解されている可能性があると気付いた。日本人にとってのレクリエーションが、他の国ではそうとは限らないということを学んだ。
 会の帰国者への関心はセンターの研修期間のみにとどまらない。研修生が定着地へ行った後も、変わらぬ良き友として応援し続けている。会報「ともだち」を年に3回発行し、退所した全世帯へ送る。紙面は活動の様子を伝えるだけでなく、修了生から募集した原稿も載せ、帰国者仲間の声も届けている。また、年賀状も全世帯へ出す。年明けは修了生から沢山の年賀状が届き、整理に追われるとのことだ。広報を担当する上村さんは今後の抱負を「若い人にも帰国者について理解してもらえるようにしたい」と語っていた。
 平成10年10月から、センターにはサハリン帰国者も入所しているが、会員は皆、中国帰国者と分け隔てなく接している。「草むしりでもお役に立てばと思って入った」という事務局長の木村さんは「帰国者問題は日々変化しているが、風化させてはいけない。一人でもいる限り続けていきたい」と語る。文化活動担当の伊藤さんは「思えば、沢山の素晴らしい人との出会いがあり、繋がりができた。結局自分達に帰って来てるのね…」と感慨深げであった。
(友の会の活動を紹介した写真ページがありますので、どうぞご覧ください。)

◆「長野県日本語ネットワーク」設立のお知らせ

 長野県にはおよそ70の日本語教室があるとのことですが、県内の日本語学習 者やその支援者たちが「必要な情報を交換する場」「相互に学び合う場」「学習支援の輪を広げる場」をつくることができるようにと標記ネットワークが設立されました。
 代表の佐久市在住の春原直美さんは国際結婚で来日し、地域に住んでいる女性たちのために6年前から日本語教室「すずらんの会」で、ボランティアとして活動していますが、「一人でできることは小さいことかもしれません。でも、その小さな一人が二人になり三人になって連携していけば、いろんなことが可能になります」と話しています。
問い合わせ先 : TEL/FAX 0267-68-0154 , E−mail:yuuyuu@janis.or.jp
〒385-0022 佐久市岩村田396番地

◆シンポジウム 「ニューカマー生徒の高校進学と生活について考える」

主   催 : とよなか国際交流協会、子どもメイト
開催日と場所: 2000年3月 4日(土)豊中市立生活情報センターくらしかん
2000年3月25日(土)とよなか国際交流センター 

(時間・講師は未定)
連 絡 先 : (財)とよなか国際交流協会 TEL06−6843−4343

◆『中国帰国者定着促進センター紀要』第8号 投稿募集

 現在、第8号の原稿を募集しています。内容は、中国帰国者(定住型外国人を含め)を対象とする教育や支援に関わるものであれば、論文、報告、研究ノート等、何でも結構です。締め切りは2000年2月末日。応募したいとお考えの方は、ぜひ所沢センターの佐藤まで。 連絡先は『同声・同気』編集部に同じ。なお、採否は、当センター紀要編集委員会で審査の上決定させていただきますので、ご了承ください。

訃報

福島県中国帰国者自立研修センター所長佐藤清氏が平成十二年一月四日
お亡くなりになりました。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

ニュース記事から(H11.9.7〜H12.1.5)

日付 記事内容
9. 9 来年度、厚生省はサハリン残留邦人の本格的な現地実態調査を実施
11.10 日本語教育「研究協力校」が来年度から半減 ※6頁の文部省記事参照
12. 7 厚生省は12月1日から15日まで、約2600名の中国帰国者について、7回目の生活実態調査を実施