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巻頭言 共生社会の日本人とこれからの帰国者支援
こんなところ・あんなところ・どんなところ?
 北海道地方
地域情報ア・ラ・カルト
 帰国者とともに
 長野県飯田市の取り組み
行政・施策
 援護基金から/厚生省から
研修会情報
教材・教育資料
伝言板

巻頭言

共生社会の日本人とこれからの帰国者支援

 〈第二次帰国ラッシュ〉を迎え、増加する帰国者2世世代に対する支援が、今後の一つの課題となっています。「呼び寄せ」の2世家族の場合、一次、二次センターを経ないままに、日本の職場や地域社会に参加していくケースもたくさん見られます。一次、二次センターで研修を受けた50代、60代の帰国孤児本人や配偶者の場合も、短期間で日本語習得を求めることには限界があります。いずれにしても不充分な日本語力で日本社会へ参加することを前提としなければなりません。これは、受け入れ側の職場や地域社会から見れば、文化・習慣の違う、日本語の不充分な人々と共に働き、共に暮らして行かねばならなくなるということです。
 このような現象は帰国者の定着地に限った問題ではありません。現在、在日外国人の数は130万人に上ると言われています。100人に一人は、異文化・異言語の人々です。今後も国という境界は低くなり、異文化を持つ人々との共存は促進されていくでしょう。受け入れ側の「俺に合わせろ」的な態度はもう時代錯誤と言えるでしょう。今後は、地域社会の一般日本人も、日本語力が不充分な人たちともなんとか関係を作って行かねばなりません。そのためには、私たち日本人の側が、そうした人々と、共有できる日本語で、何とかコミュニケーションを成立させようとする姿勢と能力を身に付けていくこと、つまり、お互いに今の自分を否定せずに、なおかつ相手の持つものを受け入れ味わってみる、といったスタンスが必要となるでしょう。これは、容易なことではありません。数々の葛藤を生み出し、長期的な調整作業が必要となるでしょう。しかし、日本人の意識がそのように変わって初めて、帰国者を含む異文化を持つ人々は、日本社会の一市民としての「自立」ができるのではないでしょうか。それが、私たち日本人にとっても、生きる場所を広げていくことに繋がるのではないでしょうか。これからの帰国者支援も、帰国者に対する直接的な援助だけでなく、「共生」の視点に立って、帰国者が生活する環境(職場や地域社会、それを構成する日本人)に対しても、働きかけて行くことが必要なのではないでしょうか。

こんなところ・あんなところ・どんなところ?

北海道地方

1)北海道中国帰国者自立研修センター

 北海道中国帰国者自立研修センターは、95年10月に開設されました。ここは道の委託を受けて北海道新生日中協会が運営しています。同協会は、昭和53年以来、中国帰国者の日本語教育、就労、生活相談など定着支援活動を行ってきました。昭和62年に開設された北海道中国帰国孤児定着促進センターの運営についても全面的に協力し、同センターが平成3年に閉所になった後も、日本語教室を継続して運営し、北海道庁による中国帰国者自立研修講座にも協力して、各地の自立研修センターとほぼ同様の日本語教育・支援体制を維持してきました。北海道中国帰国者自立研修センターは、これまでの支援活動をそのまま受け継いで改編改組して発足したものです。ここでの研修期間は基礎クラスが4か月、初級クラスが4か月の8ヶ月の期間で、週5日で各クラス1日3時間の授業を行っています。
 ここでは入所者に地域社会の実状を実践的、体験的によりよく理解してもらおうと札幌市内参観、病院・銀行の利用、職業安定所の手続き等の社会参観、課外実習活動も実施しています。さらに帰国者相互や帰国者と市民の交流をはかるために、帰国者自身が実行委員になり日中友好新年交流会を実施しています。また、生活相談、就労相談、就労安定化事業については、関係機関の連携と、事業主との協力関係作りにも努力して、成果をあげています。
 ★北海道中国帰国者自立研修センター
  〒060 札幌市中央区北3条西18丁目北海道庁西18丁目別館内
  TEL 011─614─8080

2)帰国者のための道単事業

a.中国帰国者日本語教室開催事業に対する助成(北海道新生日中協会)
 呼び寄せ家族で帰国後すぐに就労した帰国者、及び自立センター退所後さらに学習を続けたい帰国者等を対象に、毎週日曜日に日本語教室を開催しています。
b.中国帰国者生活相談室開催事業に対する助成(日中友好道民運動連絡会議)
 道内各地の帰国者を対象に、生活相談、就労相談等、毎週月曜日相談室の開設のほか、直接、間接の相談(出張、電話、手紙等)受けも実施しています。
c.中国帰国者自立促進研修会の開催
 生活習慣の異なる日本の社会生活への適応に苦労している帰国者の早期自立をはかるため、研修会及び交流会を年1回開催しています。帰国者40人ほどが集まり、内容としては、講演、意見交換、公共施設等の見学などを実施しています。
d.中国帰国者援護対策懇談会の開催
 帰国者の定着自立の援護施策を推進するため、関係機関及び関係団体との懇談会を年1回開催しています。
その他、札幌市の単独事業として、札幌市中国帰国者生活相談室が設置され、相談業務は月曜日から金曜日まで行っています。

3)その他の学習の場

 北海道日本語教育ネットワークについては第4号で紹介しましたが、このネットワークが北海道日本語ボランティア教室マップ(試作)を作りました。このマップの目的は、北海道全体の日本語のボランティア情報を外国の方に提供するとともに、ボランティアをしてみたいという日本人にも情報を出せるようにしたいというものです。マップにはグループ名、連絡先、所在地、交通機関、時間、レベル、費用、活動形態、地図等が載っています。集めた情報は今のところ14件で、このうち対象者を特定していないグループが8件です。現在ボランティアをしている方はぜひ知らせてほしいとのことです。個人、グループは問いません。なお、このマップは最終的には5カ国語(日、英、中、韓、ロシア語)にまとめる予定だそうです。お問い合わせは手紙で下記まで。
〒063 札幌市西区八軒3条西5─2─29─42 喜多村喜美江

地域情報ア・ラ・カルト

東京日本語ボランティア・ネットワーク

 このネットワークは、平成5年11月に開催された東京ボランティアセンター主催「’93・ぼらんてぃあ・めっせ・東京」をきっかけに、1グループでは力弱くても、一緒に力を合わせれば難問も解決できるのではないか、との思いで同年12月6日に結成されました。中心的な活動として、・「ボランティア日本語教室ガイド」作り ・「日本語ネットワークニュース」の発行 ・ボランティア自身の資質向上のための講習会の実施を行っています。ボランティア自身の研修向上はもちろんですが、日本語ボランティアに対する社会的認識を高めることも活動の一部です。
 94年11月には(社福)東京都社会福祉協議会の助成を受けて、「東京ボランティア日本語教室ガイド」を発行しました。このガイドには、ネットワークに登録されている団体会員(76)、協力会員(120)、賛助会員(7)のうち、団体会員が運営する都内140の教室について、各教室ごとにグループ名・連絡先・場所/最寄り駅・時間・費用・レベルが日本語と英語で記載されています。また、教室に近い駅を赤で塗った鉄道路線マップもあり、これはたいへん使いやすく好評だとのことでした。このガイドは毎年改訂され、将来はインターネットにのせていく予定だそうです。
 このほかに、「日本語ネットワークニュース」の発行や学習者、支援者双方の情報交換の場としての交流会を開催し、ネットワークが首都圏、さらには全国に広がるようにと幅広い活動をしています。

  ガイドを希望する方は
・ボランティアセンターへ直接行く場合…実費700円
・郵送希望の場合はハガキで申し込む…送料とも1000円を後日払い込む
 連絡先: 〒162 東京都新宿区神楽河岸1─1 東京ボランティアセンター気付 
        東京ボランティア・ネットワーク  TEL 03─3235─1171

帰国者とともに 
  ー名古屋のボランティア団体紹介ー

 名古屋市でボランティアを続けている長谷豊子さんにお話を伺いました。長谷さんは「日中友好手をつなぐ会名古屋支部」及び「帰国子女生活適応教育センター」の代表として活躍されている方で、平成6年にこの2つの団体は厚生大臣から感謝状を受けました。以下長谷さんのお話の概要です。
 「日中友好手をつなぐ会名古屋支部」では民生局障害福祉部福祉課の支援で、大人の帰国者の日本語及び生活指導を行っています。大人と幼児をあわせて30名ほどです。一般ボランティア13名に協力してもらっています。
 「帰国子女生活適応センター」は学校教育に関係する学科教育等も行っており、教育委員会の支援で2世、3世の学習支援を行っています。学習者数は現在70名ほどで、低学年(小1〜小4)20名、中学年(小4〜中1)30名、高学年(中2〜高2)20名です。ボランティアには小、中、高校、大学の現役教師26名をはじめ、高校生、大学生、OB教師、日本語教師等多くの方々が協力しています。学校での勉強になんとかついていけるように、特に学科や受験のための指導にも力を入れています。授業は基本的にマンツーマンですが、低学年の場合は子供2人に1人が教えることもあります。また子供たちは、集まってくると上の学年の子供が下の学年の子供の勉強を見るという形ができていて、とてもうまくいっています。
 どちらの団体でも、学習だけでなく、野外教育1泊研修、遠足、バザー等を行ったり、他施設のイベント活動にボランティアとして参加したり、赤十字の共同募金活動を行うなど社会活動にも積極的に参加しています。こうした社会活動への参加を通して彼らにいろいろなことを身をもって感じてほしいと思っています。
 帰国者支援を始めたきっかけは、市内の公園でぶらぶらしている子供や、夜シンナーを吸っていた青年が中国語を話していたので、相談にのっているうちに日本語の青空教室を開いたことに始まります。4〜5人から8〜10人と次第に増えていったので、愛知県知事や名古屋市長、地域代表などと友人3名で数回にわたり話し合い、名古屋市の中心の栄教育館を借りて日本語教室を開講することになりました。初めの2年間は私費で頑張っていましたが、昭和58年8月からは助成金がもらえるようになり、現在までに成長しました。教育委員会、民生局と帰国者との間に入って大変なことも多いですが、民間の自分たちが中継ぎ役として進めていくしかないと思い、なんとか頑張っています。

長野県飯田市の取り組み
   ─我們是朋友(ウォーメンシーパンヨ)─

   飯田市公民館 木下 巨一(のりかず)

 「ある帰国者の方から教わった言葉ですが、『我們是朋友(ウォーメンシーパンヨ:私たちは友だちの意)』これにつきます」日本語教室を中心とした、飯田市の外国人支援ボランティアグループ‘Hand in Hand 和楽’代表の吉沢裕美子さんはいいます。
 飯田市公民館では、1986年から平和学習を行ってきました。そして日中戦争当時、飯田市とその周辺の下伊那地方が、全国で最も多くの「満州移民」を送り出した歴史を持つことから、これを学習のテーマのひとつとしてとりあげてきました。戦後50年目の今年、多くの自治体や市民グループが平和について考える取り組みをしていますが、飯田市公民館では戦後50年を、平和を考える出発点にしようと、中国からの帰国者を含めた「異なる文化に育ったもの同士の共生」をテーマとした平和フォーラムを行いました。
 現在飯田市で外国人登録をされている方は1700人、これは市の人口(約10万人)の1.6%にあたる数字です。このうち中国国籍の方は450人を超えており、その多くが残留孤児、残留婦人とその呼び寄せ家族です。私自身、何人かの帰国者やその支援者の方とお話しする機会がありましたが、日本の地域社会は、この方たちにとって大変閉鎖的であるということを強く感じました。受け入れ側からも、なんとか地域社会に入ることができた帰国者の「処世術」としても、「日本人になりきることが必要」とされているのが現実のようです。
 「ある社会がその構成員のいくらかをしめだす場合、それは弱くもろい社会である」というノーマライゼーションの理念があります。「地方の地域社会は同質のもの同士によって強固なまとまりを保ち、その力が地方分権の時代といわれる現代、地域発のまちづくりを支えている」というとらえ方もあります。しかし、「多様な価値観や考え方を持つ人たち同士、知恵や力を寄せあうことが、より質の高い地域を創造する」という考え方が、地球的規模の広い視野が必要とされる現代には、むしろふさわしい考え方であると思います。
 幸いに地方は、もう一方で生活の上での共同の必要性から生まれた「結い」という意識が受けつがれている社会でもあると思います。大都市ではたいへん多くの市民運動が広がっているようですが、その影響力を都市全体におよぼすことは簡単ではないと思います。「国籍や文化の異なり、障害者、高齢者、女性、転入者などさまざまな違いをもつ人たちが、違いをのりこえて協同する高い質の『結い』を実現する」、このような考え方に共感する人をうまく結ぶことができれば、「異文化との共生」という課題も、大都市より地方の方が、むしろ実現性がたかいのではないかと考えるようになりました。
 地方に住んでいても居ながらにして国際交流ができる今の状況をチャンスととらえ、お互いの違いを楽しみながら学んでいく、「我們是朋友」はそのキーワードです。こんな市民が増えていくことが、地方分権の時代のまちづくりを一層質の高いものにする条件です。「結いの田」が語源といわれるこの「飯田」の地が、こんな元気な市民でいっぱいになるよう、これからもお手伝いしていきたいと思います。

行政・施策

★援護基金から

 平成8年度奨学生募集について、今年度から帰国孤児及び帰国婦人の3世を対象者に加えました。高校、大学、専修学校等の募集締め切りは平成8年1月15日、鍼灸師養成施設入学等便宜措置希望者の締め切りは平成7年12月15日です。残念ながら鍼灸師の方は既に締め切られていますが、募集は毎年秋(10月ごろ)に発表され、締め切りも毎年だいたい同じ頃なので、必要な方は気をつけておいてください。
 また、基金の奨学生以外のもの(大学院進学など)についても、ユネスコ協会に推薦するなどの相談にのってくれるそうです。
 問い合わせ先  財団法人 中国残留孤児援護基金
         〒105 東京都港区虎ノ門1─5─8 オフィス虎ノ門1ビル
         TEL  03─3501─1050

援護基金とは別に、「公益信託森安記念中国残留孤児子弟就学援助基金」でも大学進学者を対象に就学援助を行っています。平成8年度奨学生募集の締め切りは、平成8年1月20日です。下記宛に文書でお問い合わせください。
 問い合わせ先  〒103 東京都中央区八重洲1─2─1
         安田信託銀行株式会社 営業第一部資産運用相談室
         公益信託森安記念中国残留孤児子弟就学援助基金事務局

★厚生省から

中国残留孤児の肉親捜しのための訪日調査について

1.中国孤児等対策室では、昭和56年以来、中国東北地区(旧満州地区)において、昭和20年8月9日(ソ連参戦の日)以後の混乱により、肉親と離別し、身元を知らないまま中国で成長したいわゆる「中国残留孤児」を日本に招いて肉親捜しを行っています。今年も、10月31日から11月14日までの15日間にわたり国立オリンピック記念青少年総合センターを主会場として行われ、補充調査(昭和62年11月)に入ってから最大規模の67名の孤児が参加しました。
規模が大きくなった要因としては、
@7年度に未確定者(長期にわたって日中両国政府のどちらか一方が日本人孤児として確認できなかった者)について厚生省が訪日調査を実施し、直接面接した結果を中国政府に情報提供したところ、7名が今回の訪日調査に参加したこと、また、
A5年度、6年度に孤児からの申し立て件数が多くあったことの影響が反映されたことがあげられます。
 調査結果としては、比較的特記事項が多かったにもかかわらず、滞在中に肉親が確認された方は5名にとどまりました。他に7名の方々が血液鑑定を行い、内1名については肉親関係が否定されましたが、残る6名の方々の中から身元判明者の出ることを期待しております。

2.訪日調査による面接調査および肉親関係者との対面調査は、孤児が申し立てた家族構成、離別状況等を確認したうえ、肉親等から届けられている孤児調査の情報および調査期間中に報道機関の協力を得て寄せられた一般からの情報等に基づいて調査を行います。
訪日調査に参加するまでに長い年月を経ているため、離別当時には所持していた手がかり資料をなくすなど、手がかり資料は極めて少なく、記憶も薄れ、一方、肉親関係者の高齢化、死亡等とあいまって肉親捜しは年々難しくなっております。
しかし、戦後50年の今日に至っても、中国に残されている多くの方々から肉親捜しの調査依頼が寄せられています。これは、養父母から臨終まぎわに日本人孤児であることを告げられ、、はじめて自分が中国人でなかったことを知った方、また、すでに日本人孤児であることは養父母から知らされていたが、養父母の死亡を契機に自分のルーツを確認したいという気持ちが強くなった方、或いは、自分は日本人であり名前も知っているが、肉親捜しを先延ばしにしてきた方等様々な理由によります。「自分がどこの誰なのか」、人間として最も本能的な知りたいと願う気持ちの表れに、当室は出来るだけ応じたいと努力しています。

3.訪日調査に参加した方は、日中両国政府で日本人孤児であると確認された方ですから、身元の判明、未判明にかかわらず、本人が望めば永住帰国ができます。このため、調査参加者にはこの機会を利用して日本の生活実態を知りたいという希望が強く、情報の寄せられる待ち時間を利用して、帰国孤児等が働いている職場見学、帰国孤児宅訪問、永住帰国のためのオリエンテーション等も行っています。
今年も、東京都、千葉県、埼玉県および神奈川県にある9カ所の企業と10名の帰国孤児の方々の協力が得られ、それぞれのグループごとに電車やバスを乗り継いで職場見学、帰国孤児宅訪問に出掛けました。参加した方々からは日本での生活の一端に触れることができたと好評でした。また、オリエンテーションのプログラムの一つとして、先輩帰国孤児の方の帰国以後自立までの体験談講演を取り入れていますが、これについても皆さん大変熱心に耳を傾けていました。

4.今回を含めてこれまでに26回の訪日調査を行い、1981名の方が参加しましたが、肉親が確認できた方は653名にとどまっています。当室では、これまでに肉親が確認できなかった方々についても引き続き調査を行っています。小さな手がかりでも結構です。情報がありましたら是非お寄せいただけるようお願いいたします。

研修会情報

平成7年度厚生省「自立指導員研修会」

 平成7年9月20日、21日、22日、今年度の研修会は静岡県熱海市のホテル池田で開かれました。
 参加者は、各都道府県の自立指導員6l名、担当職員43名、厚生省社会援護局中国孤児等対策室職員6名、職業安定所等の関係機関の担当者7名の計117名。初日は、最新の中国事情、自立指導員制度、帰国者の特性、精神保健、生活保護、入国手続きに関する講義。二日目は、年金制度、日本語指導、就労指導の講義の後、参加者がテーマ別にグループに分かれて話し合いました。テーマは、(T)「就労問題」@雇用主との信頼関係の構築と指導員の関わり方、A日本の労働事情の理解を得るための効果的な方法、B就労の安定のための雇用主・同僚の理解、C職業(就業先)選択の際の助言・援助のあり方、D日本語習得との関係(就労を優先した方がいい場合の例)(Aグループ@AB DグループACD)、(U)「日本語習得」@指導員が日本語指導を行う場合の効果的な指導方法、A就労就学との関係(日本語を優先した方がいい場合の例)、B日本語の習得に有効と思われる地域や職場の人々との関わり方、C高齢者や習得意欲の乏しい者などへの対応(Bグループ@AB Eグループ@BC)、(V)「その他」@自立意欲の乏しい者への対応、A帰国者との信頼関係の樹立にあたっての対応、B社会制度や生活習慣などの違いの理解のための工夫、C関係機関(職業安定所、福祉事務所、ボランティア等)との連携、役割分担等、D身元引受人、親族との連携(Cグループ@AB FグループBCD)。夜は懇親会。三日目は、前日のテーマ別グループ討議意見交換のまとめの発表、質疑応答、特別講演「国交正常化当時の中国現地の帰国者対策」。 私はEグループの討議・意見交換に参加して、貴重な意見を聞くことができました。まず日本語指導をする際に重要なことは高齢者と若い人、学習経験のある人とない人などを分けて、その人毎に生活言語だけでもいいか、学習言語まで必要とするかを考えなければならないということでした。また、言語以外の要素の重要性を再認識しました。言葉の不足を行動・動作でカバーするというのが今まで私が考えていた日本語指導でしたが、ここでは「当座の行動→言棄」の順でいいのではないかという意見でした。たとえば、郵便局で80円の切手を5枚買いたいときに、「80円切手」「5枚」というのを言葉で表現できなくても、それを紙に書いて局員に見せれば伝わるというものです。この場合、言葉を全く発しなかったとしても、紙に書いたものを見せるという行動だけで切手を買うことができます。さらに、効果的と思われる教授法、センターで開発されたすばらしい教材の情報も得られました。できれば今後そのような教材を手にして見ることができる機会を設けていただけたらと思います。
私は今まで教えたいことを一方的に教えてきたように思います。が、これからは先輩の話を聞かせたり、仕事場を見せたりして多くのことに興味を抱かせ、自分から話したいという学習者の積極性を引き出して、共に学んでいきたいと思っています。指導員一年生の私はこの研修会に参加して、これからの目指す方向が少し見えてきたように思われました。(富山県自立指導員 小西由美子)

「認め合い助け合う心を育てる国際理解教育発表会」に参加して

 12月5日(火)板橋区立志村第四小学校で、帰国・外国人児童対象の言語教育の公開授業を見学し、研究発表を聞く機会を得ました。各学年1クラスと日本語学級2クラスの授業のうち、特に日本語学級を中心として参観しました。ひとつはおにぎりを作ってみて、食べて、その形、色、味を表現する、あるいは、4コマ漫画の吹き出しのセリフを自分の頭で考え短文で表現するといったものでした。参観者が多かったので生徒も緊張していました。日本語学級以外も活動中心で子ども電話相談室、討論会─生まれ変われたら─など、学年に応じて表現力を高める工夫がされていました。研究発表の内容は、平成7年度の研究紀要としてまとめられています。特に日本語学級の指導の参考として役立つと思います。残部があるそうなので希望者は受取人払いで分けてもらえます。下記に申し込んで下さい。(教務課 和田・大沢)
  〒174  板橋区小豆沢4-13-1板橋区立志村第四小学校日本語学級
   TEL 03─3966─3542   FAX 03─3969─8744

中国帰国生徒適応教育研究発表会報告

 平成7年12月7日、堺市立晴美台中学校で、研究発表会がありました。研究主題は、中国帰国生徒を中心とした国際理解教育の推進─日本語の指導と相互理解を深めるための取り組み─でした。研究冊子があります。下記へお問い合わせください。
 堺市晴美台中学校 山中久仁子 〒590─01堺市晴美台3丁目8番1号 TEL0722─91─5300

異文化教育学会第17回大会予告

 期日:1996年6月1日(土)(日)
 場所:上智大学四谷キャンパス
    〒102 東京都千代田区紀尾井町7−1
    TEL(代表)03−3238−3111
    (教育学科)03−3238−3980
 シンポジウム:異文化共生時代に日本の学校はどう変わるべきか
 特定課題研究:カルチュラル・リテラシーの諸問題(仮題)

教材・教育資料

1.『ようこそ日本の学校へ』−日本語指導が必要な外国人児童生徒の指導資料−

 これは、日本語指導が必要な外国人児童生徒を受け入れている小・中学校教員向けの指導資料で、文部省が作成しました。資料では、外国人児童生徒の受け入れや日本語指導・学習指導上の配慮点等の事例を取り上げています。また、巻末付録で学校から家庭への連絡文例を中国語で示し、各学校での具体的な参考となるよう配慮しています。本資料は、都道府県教育委員会を通じて日本語指導の必要な外国人児童生徒の在籍する小・中学校に配布するとともに市販もしています。(発行:ぎょうせい  1000円)

2.『日本語を学ぼう3』及び教師用指導書

 小学校4年までの算数、理科、社会の学習に必要な日本語指導教材「日本語を学ぼう2」に引き続いて、文部省が小学校高学年の算数、理科、社会の学習を理解するために必要な日本語を指導する教材として「日本語を学ぼう3」及び教師用指導書を作成しました。児童用教材の最後には「漢字あれこれ」を盛り込み漢字の指導に配慮しています。教師用指導書には、児童用教材の縮尺版(課のタイトル、本文、イラスト)がそのままの形で掲載され、それに詳しい指導事項の解説が付き、使いやすいものになっています。また、教師用指導書の最後には、中国語を含む5カ国語の新出語彙対訳リストも掲載しています。本教材は、都道府県教育委員会等へ配布するとともに市販しています。
(発行:ぎょうせい  児童用教材1300円、
           教師用指導書2000円)

3.『月刊日本語』(95年、11月号)

 11月号では、『「言葉をつかむ」子どもたちへ−学校と地域の日本語教育』と題して、子どもの日本語教育を特集しています。教育委員会・公立学校・ボランテイアの各現場での取り組みの事例や、子どもに日本語を教える・補習を手伝う等の活動をしている支援グループのリストが掲載されているほか、日本語教材の紹介もあります。
(発行:アルク  720円)

4.『開かれた学習環境づくりをめざして』

 近年、世界諸国では、教育の仕事を学校だけに負わせるのではなく、学校と地域住民やボランテイアとが一体となって行っていこうとする動きが見られるようになってきました。カナダのスカボロー市では、学校にボランティアが入り、教師や生徒とともに様々な活動に参加し、成果を上げています。本書は、スカボロー市の実践例を紹介したもので、ボランティア参加の具体例、ボランティアの探し方、教職員とボランティアの関係作りのための資料が掲載されています。
(発行:モニカの仲間  B5版 61ページ)
なお、これは市販されているものではありません。当センターに50部ありますので、ご希望の方は、角型3号の返信用封筒に送料の240円切手を貼り、お送りください。
★★本書を編集発行した「モニカの仲間」は、神奈川県綾瀬市で外国籍の子どもたちに対して学習援助を行っているボランティアグループです。2年前に市の教育委員会が社会福祉協議会に中学校に在籍する外国籍生徒の学習援助を依頼したところから誕生しました。当初は校外で活動していましたが、今では中学校内で放課後に学習援助も行っています★★

伝言板

§ 第4号7ページの“パソコンネットから”に掲載の「初の共同の墓完成」の‘初’は間違いではないか、とのお問い合わせをいただきました。掲載の一行は新聞社・通信社のニュース速報の見出しのみですのでわかりにくかったかも知れません。内容を簡単にご紹介します。
「中国東北部で終戦後、日本人残留孤児を育ててくれた中国人養父母の恩に報いようと、元孤児の遠藤勇さん(55)=横浜市磯子区在住=が黒竜江省 方正県に220万円を寄付して中国人養父母のための共同の墓を初めて作り、8月11日その除幕式が行われた」というものでした。
お問い合わせくださった群馬県の須田さんからは、平成4年に群馬県では帰国者のための共同墓地が作られたという情報と、それを記念する冊子もお送りいただきました。

§ 11.10 第26次訪日団の一行67名が、所沢センターを見学に訪れました。

§ 体験集『異郷に生きて』
 平成7年3月 中国帰国者日本語研修会 発行
 これは、中国からの帰国者家族の皆さんの体験を綴った文集です。石川県で30年にわたって中国帰国者のお世話をしてきた中国帰国者日本語研修会会長である北崎可代さんの念願が、石川県厚生援護課の提案で実現したものです。
北崎さんは、お世話してきた帰国者が語る敗戦時の肉親との辛い別れや、その後の苦難を聞くたびに、それらの体験を何とか記録して後世に残したいものと考えていました。それは、北崎さんの“夢のようなもの”だったとのことですが、その“夢”のようなものを現実としてくれたのが帰国者を担当する行政からの思いがけない働きかけでした。編集後記にもあるように、担当課員のみなさんも又編集作業に協力し、いわばこの一冊は帰国者と行政担当者が一体となって取り組んだ、その産物と言えるようです。
  問い合わせ先
編集責任者:松田 正三さん
〒920─03 金沢市 金石東1丁目7─11
TEL  0762─67─3506


§ 「同声・同気」創刊号2ページでご紹介した神奈川県のボランティア団体“ソナの会”が、NHK厚生文化事業団が主催する、地域福祉支援「わかば基金」の平成7年度活動支援を受けました。この基金は、「福祉分野で“草の根”の活動を続けているグループに支援金を贈呈してその活動を支援するとともに、その活動を放送で紹介することによって、すべての人がともに支えあって生きられる地域を作っていこう」というものです。支援対象としては「公的な援助を受けていないグループ」という制限がありますが、地道に、様々なボランティア活動を実践しておられる皆さん、応募してみてはいかがでしょうか。

※ 埼玉県教育委員会高等学校教育課は、今度、電話とFAXによる情報サービス「彩の国さいたま公立高校ナビゲーション」を開始しました。これは、県外および海外から埼玉県の公立高校への転編入学を希望する者のために、転編入募集校の一覧や各募集校の学校概要、また転編入試験のための案内等の最新情報を提供するシステムです。中国で高校を中退して来日し、日本の高校で教育を続けて受けたいと希望する中国帰国者二世・三世にとっても大変便利なものではないでしょうか。なお、転編入以外にも高校入学を希望する場合の入試情報もここで知ることができます。
TEL 048─825─3000
FAX 048─825─5000

パソコン ネット  ’95.9.21から12.10までの新聞記事の見出しから

 9.21 中国の養父母11人が来日へ 残留孤児の養育に感謝
10.26 中国残留孤児の早期帰国、計画遅れ1年延長へ
10.26 帰国手続きの簡素化など要望 帰国促進に支援団体
10.31 第26次中国残留孤児訪日調査団 一行67人来日
11. 1 マルチメディアで転入情報 埼玉県教委が開始※
11. 7 <中国残留孤児>戦後50年機に『私の祖国』刊行
11.18 <戦後50年>引き揚げ中に絶命の子らを慰霊する「まんしゅう地蔵」建立