《長野県》NPO「ナルク・信州まつもとだいら」   代表:守安威象氏
−心・通じる交流・アウトドアーの活動−

中国帰国者支援・交流センターが主催する平成18年度「高齢帰国者向け日本語教室運営事業」の研修会で活動報告をされた長野の守安さんのお話をご紹介します。この研修会については、本紙7頁《研修会報告》をご覧下さい。

資(最高二口まで)を願い、投資者には収穫時一口5キロのお米で返済するという形をとりましたが、大変おいしいと好評でした。
 スポーツとしては、「マレットゴルフ」を一緒にやり、交流を深めています。マレットゴルフはゲートボールに似た道具を使い、コースをいかに少ない打数で回れるかを競うスポーツです。帰国者の方々にも大好評で、要望にこたえてルールの説明会なども行い、今では月1回コンペを開くようになりました。
 2007年8月には「松本ぼんぼん」という市の祭りに参加予定で、今、踊りの練習をしています。この祭りでは最低25名以上の“連”を組んでの参加が条件なので、「中国帰国者」としての“連”を組んでの参加を目指しています。

 私たちは会話は極力日本語で話し、帰国者の方々とは対等の立場で交わることを心がけています。交流活動に参加している日本人メンバーは約40名です。
 アウトドアー活動では必然的に一対一の会話となることが多いので、帰国者の方々の会話に対する意欲が一段と深まり、会話力も上達しています。

 中国帰国者の方々との交流の始まりは、2005年1月、連続4回の中国料理教室の講師の助手として帰国者3名が参加されたことからでした。その慰労会を兼ねて花見とバーベキューの会に招待したのがきっかけで、交流が広がっていきました。
 同年8月には帰国者から日本料理の講習要請があり、「おにぎり」「味噌汁」「漬物」の講習を行いました。おにぎりは三角に握るのが難しかったようです。また石のように固く握ってしまった人もいました。味噌汁はだしのとり方を教え、漬物は信州という地の利を活かして野沢菜の種まき、収穫、漬け込みまでを一緒に取り組んだところ、大変喜ばれました。
 また、2006年には、じゃがいもの作付けを行い、収穫、またそのじゃがいもを使っての料理教室を開催するとともに、無農薬の米作りにも取り組み、田植え、草取り、稲刈りまで行ないました。ただし、米作りは費用もかかるため、一口1500円の投

 このようなアウトドアー活動ができるのは、自然豊かな信州の土地と、支援者の方々のお心遣いと協力があってこそだと思います。帰国者と支援者が共に戸外でのびのびと健康的に、楽しく交流されている姿が目に浮かびます。地域によっては、このようなアウトドアー活動は条件的に難しいところもあるでしょうが、交流活動例のひとつとして、大いに参考にできると思います。
 また、小さなきっかけから、つながりが生まれ、それがまた新たな交流活動につながっているのが、とても自然な交流の形に感じられました。「対等の立場で」とおっしゃっていたように、双方が「共に」友好を深め、喜びや楽しみ、目標を共有している様子が伝わってくる、とても心温まるお話だと思います。
 「ナルク・信州まつもとだいら」の帰国者との交流活動については、2007年4月13日(金)付朝日新聞13版にも掲載されていますので、併せてご参照ください。

(所沢:島崎)

たぶんかフリースクール

 常磐線の三河島駅のホームから見える旧真土小学校、その3階にある「多文化共生センター東京」を訪ねた。見学したのはセンターが行っている「たぶんかフリースクール」の英語の授業。一つの教室では中国から来た生徒3人が“This is a 〜”と英語の基礎から学び直していた。先生は、英語を日本語に訳す間に「中国語では何て言うの?」と問いかけ、生徒たちは日本語・英語・中国語の間を行き来しながら学習する。もう一つの教室は複式で、中国から来た生徒2人が中学3年の英語教科書を使って授業を受け、フィリピンから来た生徒1人が傍らに座った支援者とともに英検の問題を解いていた。生徒の年齢は15歳から18歳。いずれも学齢超過あるいは母国で中学を卒業しているため、日本の昼の中学に入れなかった子どもたちである。高校受験を目指してこのスクールに通っているが、日本語はもちろん英語の力もかなり個人差がある。
 フリースクールを設立したNPO法人「多文化共生センター東京」は(NL35号・38号でも活動を紹介)、2001年より海外にルーツをもつ子どもたちへの学習支援や進路ガイダンスを行なってきたが、その中で行き場の無い子どもの存在を知りこのフリースクールを立ち上げたという。今年はスクールを立ち上げて3年目であるが、少しずつ知られるようになり、それまでこういった子どもの受け皿となっていた一般の日本語学校や地域の国際交流協会などから問い合わせが増えているとのことである。授業は火曜日から金曜日の午後1時から4時までで、前半2時間は日本語、後半1時間は英語や数学を学んでいる。また、夜には昼間の中学校に在籍している生徒を対象とした日本語クラスも開設しており、学校では十分な支援が受けられない生徒たちが通っている。授業料は月3万円(夜は月2万円)で決して安くはないが、高校受験まで視野に入れた勉強を毎日続けられる場所は他にはなく、また受験に関する詳しい情報を得られる場所もないため、遠く埼玉や千葉から通ってくる生徒もいるとのことで、ニーズの

 

 

高さがうかがえる。
 代表の王慧槿さんの話では、外国籍生徒の高校進学は依然として厳しい状況にあるとのこと。東京都では唯一の都立国際高校在京外国人枠(2007年度最終倍率3.72倍)の特別入試選抜は、日本語が十分でない子どもたちの受け皿にはなっていないと言う。ほとんどが日本の子どもたちとまったく同じ条件で入試に臨まなくてはならず、日本語のハンディを抱えた彼らにとっては非常に過酷な条件となる。フリースクール設立1年目には都立高校を受験した7人全員が合格し、2年目は私立・都立・埼玉県立合計で18人が合格したそうだが、さまざまなケアがなければ「本人が希望する学校に行かせたい」という思いはなかなか叶えられないという。最初に紹介したように日本語の面でも学力の面でもかなり個人差のある子どもたちを相手に、彼らが意欲をもって受験勉強に臨めるような高校を探し、精神的に不安定になりがちなときは励まし、地道な支援を続ける王さんたちだが、高校受験の壁はまだまだ高い。さらに高校に入れても、どのような支援が受けられるかわからず、高校生活を無事に過ごせる保証はない。高校に入るとき、そして入ってからの状況を改善するためにも支援者同士の連携がますます重要になってくると王さんは言う。「たぶんかフリースクール」のような“居場所”は、これからますます必要になってくると思われるが、このような形のフリースクールはまだ全国的にも珍しい。子どもたちが本当に必要な支援を受けられるこのような場所が少しでも増えることが望まれる。

(所沢:小川)

特定非営利活動法人多文化共生センター東京
東京都荒川区西日暮里1-5-8
TEL/FAX:03-3801-7127
Mail:tokyo@tabunka.jp
URL:http://www.tabunka.jp/tokyo/

★文部科学省から

「学校教育におけるJSL※カリキュラム(中学校編)について」

文部科学省初等中等教育局国際教育課

 全国の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は、平成17年9月現在で2万人を超えており、ここ数年増加傾向にあります。また、これらの外国人児童生徒の中には、日常会話程度の日本語を習得しながらも教科学習に必要な日本語の習得が難しく、学習活動に参加することが難しい状況が少なからずみられます。
 このため、文部科学省では、外国人児童生徒が学校での学習や生活に円滑に適応できるよう、日本語指導の初期学習から教科学習につながる段階までをカバーする「JSLカリキュラム」の開発を平成13年度から進めており、平成15年度に小学校編を刊行しました。
 そしてこの度、中学校編として、国語科、社会科、数学科、理科、英語科の5教科についてとりまとめ、都道府県・市町村教育委員会等に配付しました。

 本中学校編のとりまとめにあたっては、多様な背景を持つ外国人生徒が「日本語で学ぶ力」を確実に身に付けることができるよう、学校における授業づくりを支援するための様々な配慮を盛り込み、作成しました。具体的には、
@各教科において生徒が確実に学習すべき基本
 的な事項を抽出した学習項目、学習単元の一覧 を明記。
Aすぐ、授業実践ができるよう、多様な指導案や
 ワークシートを提示。
B授業でよく使う日本語表現とポルトガル語、中
 国語などの主だった言語との対訳表を添付。
 などの工夫を行いました。
 また、本カリキュラムの普及を図るため、本年度 より新たに「JSLカリキュラム実践支援事業」を実 施し、実践事例の集積・紹介やワークショップの
 開催を行うこととしております。

※JSL:「第二言語(第二の母語)としての日本語教育(Japanese as Second Language)」


☆研修会報告

「高齢帰国者向け日本語教室」研修会

 平成19年3月7日、9日の2日に分けて中国帰国者支援・交流センター主催の「高齢帰国者向け日本語教室運営事業研修会」が開催されました。「高齢帰国者向け日本語教室」は、中国帰国者支援・交流センターが各地のボランティア団体に委託して行っている事業で、平成16年度に4ヶ所からスタートしました。その後徐々に実施団体が増え現在は全国15都道府県(北海道、青森、秋田、岩手、山形、福島、埼玉、東京、山梨、長野、愛知、京都、香川、熊本、長崎)の18ヶ所で実施されています。
この事業の対象は高齢の1世世代で、事業の最も重要な目標は高齢帰国者の孤立化を防ぐことです。帰国者1世(残留孤児等)とその配偶者はいまや年齢が60歳を越えています。一般的に高齢者は社会とのつながり感が薄れ孤立する傾向があると言われていますが、とりわけ高齢帰国者の場合は多くの人が今も言葉や文化・生活習慣の違いから、行動が制限されたり、地域社会の中で人付き合いが思うようにできなかったりしています。帰国者同士のつながりも薄いままで、孤立化は一般日本人の高齢者の比ではないと言えます。また、帰国者の中には、識字が困難であったり、学習という行為に不慣れだったりして「日本語教室」と聞いた

だけで敬遠してしまう人もたくさんいます。「高齢帰国者向け日本語教室」は日本語教室という名前はついていますが、何をどのレベルまで学ぶかということよりも、むしろどれだけ共に楽しく学べるか、共に楽しく時を過ごせるかということに重きを置いていますから、純然とした「教室」というより「集いの場」のイメージに近いかもしれません。日本語学習は二の次で、高齢帰国者が集い交流しながらいきいきと活動できるサロンを目指しています。
 実施内容は、運営するボランティア団体が参加者のニーズや地域の実情にあわせ決めています。どの団体も簡単な日本語学習の他に文化活動、地域の人々との交流活動、健康づくり活動、施設見学など幅広い活動を行っています。
今年度はこの二日間の研修会に、この事業を受託している17のボランティア団体などから延べ34名が参加し、事例報告や意見交換が活発に行われました。(このうち長野からの報告は本紙2頁《地域情報アラカルト》のコーナーで詳しく紹介しています。)
 中国帰国者支援・交流センターでは、今後も「高齢帰国者向け日本語教室」を増やしていくとのことです。                   (所沢:田中)

☆研修会報告

第12回《 母語・継承語・バイリンガル(MHB)教育研究会※》
―― 一時的セミリンガル現象を考える・続の続 ―― ※(http://www.mhb.jp/)

 3月3日、東京で開かれた同研究会に参加してきました。この研究会は、バイリンガル教育が必要な児童生徒を対象とする言語教育の研究や実践の質を向上させることを目指して創設されました。過去12回の研究会のうち、「一時的セミリンガル現象を考える」というテーマの会がすでに2回開かれ、3回目の今回は、事例を持ち寄ってどのような教育的介入が可能かが検討されました。
 「一時的セミリンガル現象」ないし「ダブルリミテッド」とは、「一つ以上の言語に触れて育つ言語形成期の年少者がどの言語も年齢相応のレベルに達していない状況」を指します。「一時的」とあるのは、「障害」とは異なるということを強調するため、また、「現象」としているのは、その状態が多様で要因の解明がまだ十分ではなく実体がつかみにくいためと、同研究会は説明しています。具体的には、日本生まれなのに日本語も、子どもにとっては「継承語」である母語も十分育つ環境が与えられず、小学校1年生の段階からすでに授業に十分参加ができない、という子どもなどが例として挙げられます。中国帰国者の支援者間でも、三・四世の子どもたちのこうした「ダブルリミテッド」問題の深刻さが取り上げられるようになって久しく、非常に関心の高い分野です。
 会では、まず問題提起者の中島和子(名古屋外国語大学)さんから、@子どものつまずきのタイプと言語・行動・学習・情緒の各面についてのチェッ

クリスト案、及びA躓きの領域と推測される要因のリスト案、そして、B異文化間移動を余儀なくされる子どもたちの低学力の要因についての4モデル(社会的環境、機能上の障害、教育環境、生育環境・家庭環境)の紹介がありました。次いで、それぞれ ポルトガル/スペイン/中/日/インドシナ諸語を母語とする子どもの事例8つの検討が行われた後、不就学の子どもたちの類型化とその対応について浜松のカナリーニョ教室の山野上麻衣さんからの発表がありました。
 事例は、7歳児から現在大学生の年齢の人まであり、どの事例も深刻で、この問題が一括りにはできないことを物語っていました。また、問題の紹介だけでなく、支援者(発表者)と所属クラスの担任の先生との連携が成って状況が改善された事例や同様の経験を持つフロアからの助言も飛び交い、実際に子どもたちと関わっている支援者にとっては大変有用な、得難い機会だったと思います。
 事例の中に、中国帰国者四世についての発表があり、かなり深刻な例と感じられましたが、「読み書き」という活動へのなじみという点で、非漢字圏である日系の子どもたちの方がずっと大きな困難を抱えているとの指摘がなされていたのが印象的でした。

(所沢:安)

『日本語おしゃべりのたね』 監修:西口光一 著者:沢田幸子他

スリーエーネットワーク 定価1680円(税込)B5判130頁、別冊29頁

発行:2006年7月

 日本に在住する外国人の数は増加しており、ボランティア等で外国人に日本語を教える人たちも増えてきました。この本は、そうした支援者が学習者の日本語に寄り添いながら気楽な“おしゃべり”を共に楽しむ、そして実際のコミュニケーションを通して互いに知り合い学んでいく、そのためのアイデアと材料を提供する教材です。学習対象者は、日本語で簡単なことを質問したり、日常生活上の身近な話題について話したりできる程度の人(およそ初級後半のレベルから)。
 本文は20のユニットからなっており、食べ物や旅行の話からゴミ問題まで、身近で興味の持てる話題を集めてあります。1ユニットは、いくつかの「おしゃべりのたね」で構成されており、おしゃべりを進めていくための質問、表やグラフ、クイズなどが楽しいイラスト付きで載っています。また、各ユニットの最後にはその日の活動内容を短い文にまとめて書くことができる「活動ノート」、ユニットのテーマに関連した短い会話練習ができる「使える会話」がついています。

ユニットの例
「6.ペットと暮らす」《おしゃべりのたね》1…好きな動物(どんな動物が好きか等) 2…ペットの思い出(ペットを飼ったことがあるか等) 3…ペットがいる暮らし(ペットがいるとどんないいことがあるか/他の人が飼っているペットについて迷惑だと思うことがあるか等)
「15.結婚いろいろ」《おしゃべりのたね》1…出会いから結婚へ(結婚相手をどうやって探すか等) 2…結婚か独身か(それぞれどんないい点があるか等) 3…結婚−いろいろな考え方(未婚の母についてどう思うか等)

各ユニットに出てくる初級レベルの文型40は、後ろの方にわかりやすくまとめてあります。付属の別冊には、ユニットごとに活動のねらい、用意するもの、活動のヒントやポイント、文型表現が載っています。

『日本企業への就職―ビジネスマナーと基本のことば―』

海老原恭子他著

(アスク B5判 228頁、1,470円、2006年)

 「日本企業に就職したけど、会社でのマナーがよくわからない。」、「日本企業へ就職したいけれど、何から始めたらいいのか…。」
 本書は、そうした中国語母語話者のために、日本企業で働く際に要求されるビジネスマナー及び会話表現を、会社内におけるさまざまな場面毎に詳しく説明しています。全て中国語の対訳がついており、自学自習できるテキストになっています。日常生活のマナー以上に複雑な「ビジネスマナー」なので、企業側にとっても、働く側にとっても便利な一冊ではないでしょうか。
 第T部「日本社会でのビジネスマナー」は、「ビジネスマンの心構え」「社内のマナー」「会話のマナー」「電話のマナー」「接客のマナー」「訪問のマナー」「ビジネス基本ルール」「覚えておきたいビジネス・ルール」の8章立てで、身だしなみから始まり、

対人マナー、文書の書き方、敬語を使った会話表現等を細かく説明しています。U部「就職活動ガイド」は、履歴書の書き方、就職面接の受け方といった、就職活動の基本的な内容が説明されています。また、外国人向け就職関連情報も紹介されており、就職活動の第一歩から役立つテキストです。巻末付録には、いざという時に役立つ「婚・葬の作法」「手紙の書き方」がつけられています。
 また、第2弾として、『日本企業への就職―ビジネス会話トレーニング―』(B5判144頁+別冊32頁+CD1枚付、1,890円、2006年)が出版されています。こちらは、「アポイント」「依頼」など8課で構成された中国母語話者向け会話練習用テキストです。